会社のコンセプトの作り方

 

新潟経済社会リサーチセンターの江口です。

先日、ある旅館の後継者から相談が寄せられました。内容としては「代替わりを機に施設を増改築したので、今後、会社の営業方法を一から見直していきたい………」といったものです。工事終了後の木の香りがする中で、希望に満ち溢れ、様々な新しいアイデアを語っていただきました。

  • 「◯◯をしていきたいと思っています」
  • 「◯◯はどうでしょう」
  • 「◯◯にも興味があります」

前向きな姿勢にひじょうに好感がもてました。

これに対して、私も幾つかの考えを述べさせていただきました。特に熱心にお伝えしたのは「会社のコンセプト」についてです。

具体的には「どうせ様々な取り組みに挑戦していくならば、ちょうど良い機会と考えて会社の軸、土台を決めましょう」「全ての活動に一貫性があり、それが皆、土台につながっていくのが理想的です」「その方が従業員にもお客様にも分かりやすいです」といった内容をお話させていただきました。

その際、「会社のコンセプトを明確にしようとする時に参考になりますよ」とご紹介した書籍――松野恵介『売り方の神髄』(すばる舎)――の概要を本日はお伝えしたいと思います。

 

会社 コンセプト

 

松野恵介著『売り方の神髄』

著者によると、会社独自の土台を明確にするには、自分たちがたどってきた経験を踏まえて、一番喜ばせたいお客様を想像しながら「①誰に、どんなコトができるのか?」「②それが、どうしてできるのか?」の2つを追求することが大切だということです。

このうち、「①誰に、どんなコトができるのか?」とは職業ではなく、本業を考えることだと言い換えられるのかもしれません。例えば……

 

職業は洋服屋だけど、若返りのお手伝いが本業

職業は歯医者だけど、子供の表情を元気にさせるお手伝いが本業

職業は税理士だけど、中小企業の黒字決算のお手伝いが本業

職業は温泉旅館だけど、家族の思い出作りのお手伝いが本業

職業はメーカーの営業だけど、小売店の繁盛のお手伝いが本業

職業は印刷屋だけど、お店の集客アップのお手伝いが本業

 

松野恵介(2015)『売り方の神髄』すばる舎 p.234

といった具合に、表面的な職業ではなく、「誰の、何のお手伝いをしているのか」を表したものが本業だと指摘されています。

言わば、お客様のどんな不満・不安・悩みを解消できるのか?何のサポートができるのか?どんなアドバイザーになれるのか?を示したものなのかもしれません。恐らく自分の会社を、例えば「洋服屋」という一般的な用語を使わずに、自分の言葉で説明したものが本業であり、それが「①誰に、どんなコトができるのか?」の答えなのだと私なりに解釈しました。

一方、「②それが、どうしてできるのか?」については、書籍を読むと「自分の本業はこれだ!」と確信に至った理由を、エピソードを交えて説明することと理解できます。本業を言いっ放しにするのではなく、その理由とエピソードを添えることで、自社の価値を分かりやすくお客様に伝えられるようになり、お客様からの信頼度も高まるのだと思われます。

それでは、実際の事例をご紹介しましょう。なお、著者は「①誰に、どんなコトができるのか?」を『独自化コピー』、「②それが、どうしてできるのか?」を『独自エピソード』と呼び変えて、次のような事例で説明されています。

 

野球専門店の事例(ヤマモトスポーツ)

独自化コピー:(今より)名手製造所

独自エピソード:こんにちは。ヤマモトスポーツ二代目の山本泰弘です。2014年2月にお店をリニューアルし地域密着の野球専門店になりました。専門店となり日々お客様から一番多い質問が「グローブ」について、
「どのグローブを選べばいいのか?」
「グローブの手入れ方法は?」
というもの。これらに答えていると、お客様に合ったグローブが見つかり、
「エラーが減った」「自信を持ってプレーができた」という声を聞くようになりました。
今より野球がうまくなるには?さらに野球が好きになってもらえるには………。
ヤマスポでグローブを選び、型付けをして、もっともっとプレーに自信を持って今より「名手」になってもらえるよう、これからも努力していきます。

(松野,2015,p.182)

事例紹介されたヤマモトスポーツさんでは、独自化コピーを付けた後、様々な活動内容がうまく整理できるようになり、さらに中高校生向けのグローブ・手入れ教室の開催などにも挑戦されているそうです。

なお、書籍には他の企業の事例が掲載されているほか、著者が運営するblogにも様々な事例が紹介されていますので、興味のある方は参考にしてみて下さい。

 

まとめ

事業を引き継ぐ後継者、大掛かりな設備投資をした直後の経営者、さらには新規創業者の皆様の中で、自社のコンセプト作りに迷っている方がいらっしゃれば、一度、「①誰に、どんなコトができるのか?」「②それが、どうしてできるのか?」を考えてみてはいかがでしょうか。

自分のやってきたこと、そして今後、やっていきたいことがクッキリと見えてくる、そんなヒントになると思います。