リピーターの重要性

 

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

私どもの機関誌「センター月報」では、毎月、井門観光研究所の井門隆夫先生より、地域活性化や観光振興などに役立つヒントやアイデアなどをご紹介いただいております。

今月の「センター月報3月号」では、観光地におけるリピーターの重要性とリピーターを増やすためのヒントについて、ご説明いただきました。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。

 

リピーターの重要性

 

OODAループを試してみよう

 

1.「松之山温泉ふぇすてぃBAR」最終回?

2014年冬から4年続けて十日町市の松之山温泉で実施してきた「松之山温泉ふぇすてぃBAR(バル)」も今年区切りの回を迎えた。このイベントは、地域の方々がイベントの少ない冬に町を盛り上げようと、神奈川県にある文教大学井門ゼミナールと連携して企画・実施してきたイベントである。

全国各地でも展開されている、店舗一軒につき一品一杯が提供され、ハシゴ酒をしながら飲み食べ歩く「バル街」を参考に、温泉街の旅館と飲食店が参加して、毎年2月に二夜連続で飲み歩くイベントだ。来店客の多くは地元の関係者(スキー学校、市役所、学校の先生、農家の方々等)だったが、近年はどこで噂を聞いたのか、当日温泉街にお泊まりの宿泊客の皆様も参加するようになってきた。学生も、かまくらバーや古民家で酒肴をふるまい、今冬は100名のお客様がチケットを買い求め、ハシゴ酒を楽しんだ。

「来年もまたやってね」。毎年お客様からそういわれるようなイベントになぜ区切りをつけるのか。筆者が同校を来年度で退任しゼミナールがなくなるという事情もあるが、最大の理由は、地元の方々の負担と思いに比べて「リピーター」が生まれなくなってきたためだ。この点は、イベントを持ち掛けた筆者にしても、やや責任を感じていた。

「リピーター」といっても、ハシゴ酒を楽しみにこられる地元のお客様ではない。毎年、イベントの主役として活躍する大学生の温泉地への「リピーター」がいなくなってきたのだ。初年度に実施した際に参加した学生は、社会人になっても何人もが4年連続して来湯してくれている。今年も、次回はカレシを連れてくると温泉街の皆様にも約束してくれた。しかし、2・3年目の学生はその後一人も松之山温泉を訪れていない。「訪れる理由がない」から再訪しないのだろう。

再訪する1期生にあったのが「達成感」だ。リーダーがうまくまとめることにより、仲間のなかでつながりが強まり、地域の方々とも仲良くなる。その結果、生まれる達成感と「また会いたい」という動機が再訪を促す。2・3期生は続けてリーダーが現地でインフルエンザに罹るという不幸もあったせいか、まとまらず、うまくリピーターにつながらなかった。

スキーにしても、イベントにしても、旅全般にしても、「旅の達成感」があるとリピーターに結びつく。それは、偶然の出来事を含めて「人とのつながり」が生まれることが重要だと感じている。

(中略)

3.有効なOODAループ

リピート率向上のためには、旅の達成感が大切と述べた。満足度だけでは物足りない。「旅をやりきった」というくらいの思いが必要だ。そのためには「事前の目的」が明確であればあるほどよい。例えば、同窓会や女子会等がわかりやすい。個人客の場合は、地域の方々とのふれ合いが重要となってくる。

来年、「日本海『美食旅(ガストロノミー)』」をテーマに、新潟県でデスティネーションキャンペーンが実施されるが、この際もただ料理を提供するだけではリピーターは生まれないだろう。漁師や農家、あるいは猟師やキノコ名人等とのふれ合いや、サービスの際の料理知識や解説、さりげない配慮やおすすめ、人間味あふれる接客が同時に提供され、「ああ、美食旅はすばらしい。そのきっかけをくれたあの人に会いに(あるいは仲良くなった仲間で)また来年も新潟に行きたい」といかに思ってもらえるかにかかっている。

しかし、それはいうは易し行なうは難しである。そこで、ひとつそうしたサービスができるようになるヒントを提供しよう。それは「OODA(ウーダ)ループ」だ。

(中略)

実際に、組織をまわす際には、Observe(観察)、Orient(方向付け)、Decide(決心)、Act(実行)のループを循環させるほうがより機能するといわれ始めている。

このループは、今冬「松之山温泉ふぇすてぃBAR」でも実践してみた。ある程度の計画とゴールイメージは共有しておくものの、基本はお客様の行動を観察し、その際に臨機応変に決断して、計画にないことも実行した。例えば、あるテーブルで、もうお腹は満たされているがお酒が足りない状況のとき、一品一杯の一品を一杯に替え「二杯」にした等である。そのうえ、会話を続けていくことでお客様は満足し、飲み食べきったというバルに対する達成感を感じてくれるようになる。同時に、それを感じ取った学生も自分たちの行動に自信を持ち、やり切ったという達成感を感じるようになる。

この状況を作り上げるために、学生の管理者である私は、あえてその場を離れ、お客様と一緒にバルを楽しんだ(現場の状況はLINEグループで刻々とわかる)。すると、学生は自分たちで工夫をし始めるようになったのだ(同時に私も2日連続して7軒ものハシゴ酒を楽しめた)。

日本の生産性が低いといわれる要因のひとつは、管理者がマニュアルで管理しすぎることかもしれない。ぜひ、リピーターを作ることを目標にOODAループを試してみるのはいかがだろう。

そして、一つ困ったことが起きた。今冬参加した学生が、「来年もまた行きたい」といい始めているのだ。いったん今年で終わりを予定したイベント。来年は、DCを見据えて地元主導でガストロノミーをテーマにしたバルを実施してもよい。もし行きたい学生がいれば、お手伝いに参加することだろう。そのあたりは1年かけ、よく「観察」していることにしたい。

 

井門隆夫(2018)「観光イノベーションで地域を元気に 第12回」『センター月報』2018年3月号

 

感想

井門先生がおっしゃるとおり、

 

スキーにしても、イベントにしても、旅全般にしても、「旅の達成感」があるとリピーターに結びつく。それは、偶然の出来事を含めて「人とのつながり」が生まれることが重要だと感じている。

 

という点には、強く同意します。

それは、過去の旅行を振り返ると、どういった観光スポットを見たか?というよりも、その土地での会話や交流の方が強く思い出に残るケースが多いからです。

どんなモノを提供するのか?ではなく、どんな達成感、充実感を提供するか?という姿勢で取り組んでいくことが観光地にリピーターにお出でいただく際のポイントの一つとなりそうです。