自分が住む地域の名前やイメージを活用した販促手法

 

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

私どもの機関誌「センター月報」では、毎月、ビシネス心理学講師 酒井とし夫氏より、商売に役立つ心理学的なヒントやアイデアなどをご紹介いただいております。

今月の「センター月報5月号」では、その土地の名前やイメージを活用する方法について、ご説明いただきました。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。

 

酒井とし夫氏・商売繁盛心理学

 

新潟という名前時代に価値がある

 

先月、名古屋に行ったときのこと。ホテルの朝食会場の席につくとスタッフの女性が次のように言いました。

「おはようございます。朝食メニューには朝弁当と名古屋弁当の2 種類があります。どちらになさいますか?」

私は迷わず名古屋弁当を注文しました。そのお弁当にはみそカツ、ひつまぶし、天むすが入っていました。しかし、私はそのお弁当にみそカツ、ひつまぶし、天むすが含まれていることは知りませんでした。その朝食を食べながら、私はこう思ったのです。

「なぜ、私は迷わずに名古屋弁当を頼んだのだろうか?」

そのとき、思いついたのが下記の答え。

「だって、せっかく名古屋に来たのだから“名古屋弁当”が食べたいよね」

その日の夜、名古屋の友人と会ってその話をしたらこう言っていました。

「うーん、ホテルに行ってまでみそカツ食いたくないなあ。天むすもありきたりだし…」

人間というのは身近なもの、身近な人、身近な環境を軽視する傾向があります。

でも、そこにこそ「お宝」があると私は思うのです。

もし、私が京都に行ってホテルやレストランで「おはようございます。京御膳とクロワッサン・ブレックファーストとどちらになさいますか?」と聞かれたら京御膳を頼むはずです。

もし、私が札幌に行って昼飯を食べようとお店に入ってランチメニューに

「今日のランチメニュー(1)北海道ランチ(2)和定食(3)パスタランチ」

と書かれていたら北海道ランチをオーダーするはずです。

私って単純でしょうか?地元の人はもしかしたらクロワッサン・ブレックファーストやパスタランチをオーダーするかもしれません。でも、私のような新潟県人が旅行や出張で名古屋や京都や札幌に行ったら、朝弁当やクロワッサン・ブレックファーストやパスタランチはなく、名古屋弁当や京御膳や北海道ランチをオーダーする人が多いと思います。せっかくその土地に行ったのだから、その土地をイメージさせるご飯が食べたいですよね。ということは、他県のお客様も同じということ…。

(中略)

だから、もし、あなたのお店が県外客の立ち寄る飲食店であれば、絶対に「日本海新潟弁当」とか「新潟信濃川セット」とか「新潟万代橋ランチ」とか「越後新潟グルメディナーコース」等の地元の名前を含めたメニューを作った方が良いです。クロワッサン・ブレックファーストやパスタランチではなく「新潟ブレックファースト」や「新潟パスタランチ」とすべきです。

私のようにそのネーミングだけで買う人は存在します。

また、人にはその土地に対する特定のイメージが記憶されています。

北海道なら広大な自然、涼しい夏、厳しい冬、広い道路、京都なら神社・仏閣、歴史、舞妓さん、沖縄なら海、太陽、南国フルーツ等々、良かれ悪しかれ特定のイメージがあります。そのイメージはマイナスにもプラスにもなりますが、あえて利用することでメリットが生まれることが多いです。

たとえば、冬の時期、私は講演先でよく次のように訊かれます。

「新潟から来られたのですか。雪が多いでしょ?」

今冬のように私の住む地域が小雪だと

「いえ、今年はほとんど雪が積もっていないです」

と答えますが、すると相手の方が少し残念そうな顔をします。

(中略)

だから「新潟から来られたのですか。雪が多いでしょ」

「そうなんです。この時期は朝と晩に毎日雪かきが大変です。毎朝5時起きです」

と、多少誇張して伝えると

「それは大変ですね。新潟の方はそうやってコツコツと努力する姿勢が身につくのでしょうね。今日も遠いところをありがとうございます。ぜひ、よろしくお願いします」

とスムーズに話が進みます。

(中略)

人間というのは身近なもの、身近な人、身近な環境を軽視する傾向があります。新潟に住んでいると「新潟」という名前自体に価値があることを忘れがち、軽視しがちです。でも、そこにこそ「お宝」があると私は思うのです。

 

酒井とし夫(2017)「街でみつけた商売繁盛心理学 今すぐできる選りすぐりのアイデア 第14回」『センター月報』2017年5月号

 

感想

観光振興の仕事をしていると、酒井先生がご紹介した事例と似たような場面に遭遇する時があります。具体的には、旅行者の中には、訪れた地域に住む地元の人たちが普段、利用しているお店や、日常的に食べている料理を体験してみたいと思う人がおられます。しかしながら、今回、酒井先生がおっしゃられたとおり、地元の方々は「身近なもの、身近な人、身近な環境を軽視する傾向」があるため、旅行者のニーズと地元がアピールしたい観光資源がマッチングしない場合があります。

そのため、第三者的な目で地域の観光資源を見つめ直すことで、「お宝」に気づき、それを磨き上げることが大切なのだと改めて感じました。