「町家」再生による地域活性化 その2

 

新潟経済社会リサーチセンターの尾島です。

本日は「町家再生による地域活性化」の連載の第2回です。今回は新たな町家活用の取組事例をご紹介したいと思います。具体的には、一般社団法人雁木のまち再生様、雁木の宿 町の宿(noie)様、Re:Works(町家Cafe Re:イエ)様、仲六 青苧のいえ様の取組内容と今後の展望をお伝えいたします。なお、前回の投稿は「「町家」再生による地域活性化 その1」をご覧下さい。

 

町家

 

事例1 一般社団法人雁木のまち再生の取り組み

 

 

一般社団法人雁木のまち再生

 

~まちづくり会社を始めた経緯~

高田の町なかは、歴史と文化を伝える雪国の生活の知恵である歩行者のための「雁木」付の町家が延々と連なり、城下町の景観を残していることが大きな特徴となっています。しかし、近年は空き家の増加から次第に雁木は途切れがちになっていました。民間団体として町家を活用することで、雁木のまちを残すための活動に取り組んでいます。ちょうど、ニュージーランド出身のクリス・フィリップス氏が空き家となった雁木町家を購入して定住を目指したこともあり、町家の再生に向けてともに法人を設立しました。

現在は、建築士の関代表理事と司法書士の岩野理事、移住したフィリップス氏と、町家を手放したい所有者と入居希望者との橋渡しに取り組んでいます。

 

~町家再生の今後~

雁木のある町家の景観を求めて来訪する人達に町家界隈の話題を提供してつながりをもち、もう一度きてみたくなるような町づくりを目指しています。そのためにも、壊される前に町家の所有者から不動産購入や賃貸を検討し、改修すれば住宅民泊や店舗として入居者を受け入れることも可能と考えています。事業としては、別法人(合同会社)による入居者の家賃収入で維持費をまかない、上越市が取得した江戸末期の町家「旧今井染物屋」の公開と活用運営を委託されています。

町家の再生は家屋と設備の修繕だけでビジネスになるわけではありません。それぞれの関係者は本業を持ったうえで、高田の歴史的な建造物を活かしたまちづくりに少しでも関係していきたいと思う人とひとのつながりで成立しています。

高田の町家の魅力はその連続する空間と時間の景観であり、そこに住む人達の日常の暮らしにあります。県内外からもっと多くの人達に、町家に住む人々の暮らしを知ってもらい、きて、できれば住んでもらえるよう、これからも支援活動を続けていきたいと考えています。

 

雁木のまち再生

 

事例2 雁木の宿 町の家(noie)の取り組み

 

雁木の宿 町の家(noie)

 

~人とひとの出会いが大切~

大阪出身の町氏が大学院に在籍中、北陸新幹線の並行在来線の研究で当地のゲストハウスを利用したのが上越にくるきっかけとなりました。やがて、雁木の町再生の事業に関わるうちに、旧城下町高田の雁木のまちをなんとかしたいという思いから移住を決意し、今年3月上越に来られました。今年、年間180日まで受け入れが緩和された民泊法の改正により、民泊を開始しました。日中は、地元で他の仕事を持ち、夕方から翌朝までの間にゲストを受け入れています。

 

~人との触れ合いが継続のポイント~

民泊施設としては、リノベーションにより2部屋を客室として8人まで受け入れできます。民泊を県に申請する書類の作成が大変だと聞いていましたが、当地では家屋のリノベーションから移住者の受け入れまでを支援する雁木のまち再生の理事及び関係者の支援もあって、スムーズに開業につなげられました。さらに家屋の修繕費用は家賃に含むため、民泊事業を計画的に取り組むことができました。

民泊はまだ立ち上げたばかりですが、急な長岡の花火客の学生が利用するなど思いがけない利用もあります。またツイッター情報を手がかりに高田世界館での映画目的に九州から来た宿泊客を受け入れてSNSの効果を実感しています。外の人へ町家の魅力を情報発信するとともに、民泊への理解を高め、来訪者と町の人とのつながりをこれからも築いていきたいとしています。

 

雁木の宿 町の家

 

事例3 Re:Works(町家Cafe Re:イエ)の取り組み

 

 

Re:Works(町家Cafe Re:イエ)

 

~Iターンのインテリアデザイン&クリエイター~

打田氏は、北海道出身者で2年前まで東京の設計事務所で店舗内装設計の仕事をしていました。東京では、ほぼ毎日終電車で帰るような生活に疑問を持ち体調を崩したこともあって、奥さんの実家のある新潟県への移住を決めました。なかでも高田における雁木の町家建築に衝撃を受け、建築業者として移り住み、同時にカフェの改装を始め、翌年1月末にオープンしました。設計のほか、現場では大工工事から仕上げ工事まで一貫して行ないます。町家を再生するリノベーターとして、インテリアデザイナーとクリエイターとしての手腕を発揮しています。

 

~カフェ文化の少ない街でカフェを開業~

高田の雁木通りではカフェで喫茶を楽しむ習慣は元々少なかったようです。さらに最近では本業の建築業が忙しくなったことから、土日のみの営業にしていました。ところが、お店や雁木どおりの情報をインスタグラムなどのSNSで発信したところ、市外から若者の来客が増えてきています。

現在は建築業とカフェとの両立で、東京の生活では得られなかった充実感を実感しています。今後は、町の人達が自分たちを受け入れてくれたように自分も移住を希望する人達に支援をしながら、街の人達との交流にも関わり続けていきたいとしています。

 

ReWorks町家カフェReイエ

 

事例4 仲六 青苧のいえ

 

 

仲六 青苧のいえ

 

~関西から新潟へきた整体師~

関西出身の原氏は、上越市の整体の先生から整体師になるための指導を受けたことが契機となりました。当初は直江津で整体師の営業をしていましたが、高田での民泊の話を受け、上越市の民泊登録の第1号として当地に移りました。現在の宿泊施設は2部屋で4人から団体で10人まで受け入れ可能です。

 

~しなやかで強靭な青苧(あおそ)のように~

受け入れ対象は親戚の帰省やお盆の来客が増える時期などに地元の人達から自宅のように使って欲しいとおっしゃられます。民泊を始めるにあたっては当初は興味と不安の入り混じった反応もありました。しかし「不安に思っていることを具体的に聞いてくださる方がいて、きちんと説明することで、今度はその方がご近所の皆さんに説明してくださるようになり周囲の不安は取り除かれていった」と自分を受け入れてくれた地域の皆さんに感謝しています。

青苧は越後の武将上杉謙信の時代から「越後上布」の原料として栽培され、食用としても役に立つことから、当地に強く根を張りたいと事業名に取り入れました。今後は気負うことなく、町家通りで起業する仲間達とともに、「町家での起業は面白そうだ。そんな方法もあるのだね」と他の人の気付きになれたらとおっしゃっています。

 

青苧のいえ

 

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『センター月報』2018年10月号の「地方叢生に向けた、地域の取り組み」を加除修正いたしました。