「町家」再生による地域活性化 その1

 

新潟経済社会リサーチセンターの尾島です。

人口減少と郊外への人口流出により旧市街地における商店街が衰退し、空き家の増加が全国で進むなか、「古民家」や「町家」の再生が地域活性化の方法として期待されています。

「町家」の明確な定義はありませんが、「民家の一種で、町割に合わせて建てられた店舗が併設した職住一体型の都市型住宅」といわれます。町家の特徴は間口が狭く、奥行きが長いことから「鰻の寝床」とも呼ばれます。

 

町家

 

新潟県内には今も町家が軒を連ねた地域が残っています。しかし、住宅建築・設備の近代化、核家族化の進展やライフスタイルの変化、都市計画による防火・準防火地域の指定などにより低い木造家屋の建て替えが進んだほか、町家の修理・修繕など維持管理を頼める大工の減少もあって、町家の維持が困難となっています。さらに、居住者が不在となり相続人が空き屋のままに放置するなど、利活用は進んでいないのが実態となっています。

こうしたなか、歴史・文化が豊かな特性をもつ旧街道沿いに今も残る町家などでは、自治体の支援を受けて民間が家屋を買い取り、店舗やゲストハウスなどの目的にリノベーションを行なう活動がみられます。売却や賃貸により移住者を受け入れるなか、地域情報の発信や交流拠点として活用するなど、「町家」再生による地域活性化の取り組みが見直されています。

 

新潟県にある町家

 

歴史的建築物を活かしたまちづくり

町家の活用についてハード・ソフトの両面で市民団体と自治体が連携して取り組んでいる事例を紹介いたします。

 

上越市高田の町家の再生によるまちづくり(上越市)
約19万4千人(2018年9/1現在)

~町家再生の取り組み経緯~

平成の大合併により上越市は2005年に全国で最も多い14市町村が同時合併して現在の人口約20万人となりました。その後同市の総合計画では、高田と直江津の旧市街地への居住促進を進めておりコンパクトシティについての取り組みを行なっています。

高田地区は14年に徳川家康の六男・松平忠輝公による高田開府から400年を迎えたほか、15年には北陸新幹線の開業などもあり、市民団体による城下町高田の歴史を生かしたまちづくりの気運が高まっています。同市では16年に策定した地域再生計画においても同様に「街の再生」を位置づけるとともに、地方創生関係交付金の事業によって雁木のある町家の再生支援に取り組んでいます。

高田地区は江戸時代には北国街道の起点として、北陸、越後、信州を越えて中仙道に通じ江戸に至る重要な交通の要所でした。旧街道沿いには間口が狭く奥行きの長い敷地に作られた町家が軒を連ねています。さらに江戸時代には雪が降っても歩行者が往来できるように、道に面した家屋の家主が自家のひさし等を伸ばして敷地内に雁木を建築し雁木通りが生まれました。こうした雁木通りは約13キロにも及び県内随一の長さとなっています。

しかし近年は人口の減少から空き屋の取り壊しも増えて雁木が途切れがちになっています。雁木のある町家を保存しようという民間団体の動きに応じて、上越市では雁木を残す補助制度を設け、さらに町家と雁木が軒を連ねる歴史的な町並みの保存について総合計画にも位置づけてまちづくりに取り組んでいます。

 

雁木通り

 

~リノベーションによる町家の保存と活用~

上越市は、町家再生事業として地方創生加速化交付金を利用してシェアハウスを建設し、市内大学の女子大学生を入居者に迎え地域内での交流拠点として活動をお願いするなど社会実験的な取り組みを行なっています。また、町家建築がそのまま残る旧今井染物屋を取得して、町家の生活の様子が分かるように公開しています。

 

シェアハウスの土間

 

~リノベーションによる町家再生のために~

雁木のある町家を活かしたまちづくりを進めるうえでは「歴史資産の保全」と「都市開発」のバランスをどのように取るかが大きな課題となっています。高齢化が進み居住者が不在となった町家を子どもの世代では既に手放したいという気持ちの方が強まっています。所有者に修繕と居住を説得するよりも次に使いたいと望む人に引き継いでいく、あるいは建て替え時にはできるだけ雁木を残す配慮をお願いするなど、積極的に市民に理解していただく活動の大切さを感じています

雁木通りの町家再生に対する民間と自治体の連携により、今年はリノベーションによる民泊が2件、店舗等町家の活用は5件の実績がありました。上越市では、さらに日本最古級の映画館である高田世界館周辺を交流拠点に位置づけ、市内外・多世代から愛されるエリアを構築したいとしています。

このような取り組みや、雁木のある町家で起業を望む若い世代を受け入れることで、新たな事業者と町家雁木通りの住民との交流、さらに来街者の増加による地域活性化に期待を寄せています。

 

シェアハウスの土間

 

その他、新たな町家活用の事例については、次回、ご紹介したいと思います。

 

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『センター月報』2018年10月号の「地方叢生に向けた、地域の取り組み」を加除修正いたしました。