ロスジェネが新時代をけん引

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

私どもの機関誌「センター月報」では、毎月、井門観光研究所の井門隆夫先生より、地域活性化や観光振興などに役立つヒントやアイデアをご紹介いただいております。

今月の「センター月報7月号」では、観光の今後を考える際のヒントについてご紹介していただきました。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。

 

ロスジェネ 観光の世代交代

 

観光の世代交代


「2.注目されるロスジェネ」

バブル崩壊後の不景気が続いた頃、若者がなかなか就職できず「就職氷河期」と呼ばれた時代があった。この頃に社会に出た若者たちは「団塊ジュニア」と呼ばれる人口の多い世代でもあった。

(中略)

いつの頃からか、失われた時代を生きた彼らは「ロストジェネレーション(失われた世代)」と呼ばれるようにもなった。

(中略)

なぜ、この世代が改めて今話題になっているかというと、5年後の2024年以後、日本で最多人口世代になるためだ。

現時点での最多人口年齢は、団塊の世代と呼ばれる1949年生まれの70歳である。最多人口年齢は、高齢化が進んだ欧州でも50代前半、米中は20代前半、世界全体では0〜4歳という構成にあって、日本の高齢化は突出している。しかし、団塊の世代が最多人口を誇るのもあと4年。2023年の74歳を境に減少に転じる予想だ。そのため、その翌年、最多人口年齢は1973年生まれの51歳まで一気に下がり、人口ピラミッド上の世代交代が図られる。その最多年齢人口になるのが、ロスジェネなのだ。

 

「3.需要が逆転」

広告宣伝を行なう際、最多人口世代は常に意識される。そのため、その世代の行動様式は全世代をけん引するといっても過言ではない。団塊の世代は、社会に出た1970年代から50年もの間、日本の観光市場を引っ張ってきた。大阪万博が開催された年に22歳となり社会に出て、パッケージツアーで国内外に旅をして、温泉旅館での職場旅行で盃を交わし、るるぶを読んで旅先を探し、10年前に60歳でリタイアして年金受給者となってからもアクティブシニアとして旅をし続けている。旅館の1泊2食文化の申し子のような世代である。

そうした世代の旅が間もなくフェードアウトする。そして、メイン市場はロスジェネへと移っていく。それから、旅の姿はどう変わっていくだろうか。

毎年5%ずつ需要が入れ替わるとしたら、14年目に需要は逆転する。気の長い話に聞こえるかもしれないが、すでに10年前から需要の逆転は始まっていると思う。2008年、それまで旅行実施率でトップを走り続けた50〜79歳女性が、20〜34歳女性へとその座を明け渡した。それから10年、2017年には35〜49歳女性の実施率にも追いつかれた。シニアは確実に旅行をしなくなってきている。

その逆転年は2022年だ。その年、75歳以上が急激に増える一方で、減っている20〜64歳の現役年齢層の減少幅が最少になる。おそらく、この年から1泊2食旅館の減少が顕著となり、新しい素泊まりゲストハウス型へと変わっていくだろう。その根拠が、この市場の世代交代だ。

 

「4.素泊まり型ケズトハウスへ」

なぜ、素泊まりゲストハウスなのか。市場をけん引するロスジェネのペルソナ(典型的人物像)を考えてみる。

(中略)

彼らをひと言でいうと「つながってるけど、案外孤独」。仲間は多いが、デジタルでつながっている。リアルな旅に出るのはなかなか日程が合わない。社会に出てからずっとデフレ時代を生き、節約志向が染みついているし、目的のない旅はそうそうしない。ただし、目的があるなら一人でも旅に出る。スマホがあるので寂しさは全くない。

そんな彼ら、彼女たちが、あまり馴染みのないパッケージツアーで旅に出るとは思えない。職場旅行はもとより、集まる時は目的を持った仲間で集まる。会社の経費で旅に出るわけでもないし、1泊2食の旅館で会席料理に2万円払うとも思えない。それは世代を超えて家族で集まる何かの記念日の時だ。

仲間で旅に出る時でも、寝る時は一人で寝たい。食事はコストパフォーマンスのよいものを食べたいので、宿ではなく、外で食べる。そうすると、シングルタイプの素泊まり型ゲストハウスが浮かんでくる。

(中略)

では、そうした素泊まり型ゲストハウスがどう増えていくのか。

それは、外部資本が入ってくるわけではない。おそらく、後継者がなく廃業した旅館を地域の旅館が買い、2〜3軒目をそうした業態にしていくだろうし、おそらくそうしていかないと地域が持たないだろう。

2019年の今年、情報収集の手段として、デジタルメディア(インターネット)の割合がアナログメディア(新聞・テレビ・雑誌等)の割合を追い抜く。そして益々、ネットメディアを通じたPRが増えていく。そのため、まもなくやってくる75年ぶりの最多人口年齢の交代は、観光の世代交代を加速させるだろう。

 

井門隆夫(2019)「観光イノベーションで地域を元気に 第27回」『センター月報』2019年7月号

 

感想

最多人口世代が50歳代前半の人たちとなる2024年頃から、観光だけではなく、日本の様々な消費スタイルが大きく変わっていくのかもしれません。

観光産業は特に団塊の世代を中心にサービスを提供してきました。そのため、今から2024年以降の対策を考え、実行に移していく必要がありそうです。