旅館業の労働生産性を高める方法とは?

 

こんにちは。新潟経済社会リサーチセンターの江口です。

サービス産業は日本のGDPの約7割を占めていることから、今後、日本経済が成長を続けるには、サービス産業の生産性向上が不可欠と言われています。

今回、私どもの機関誌「センター月報12月号」では、サービス業の1つである「旅館業」の生産性向上策について、提案しています。執筆は毎月、連載をお願いしている井門観光研究所の井門隆夫先生です。

井門隆夫先生 労働生産性

 

できる理由を考える

井門先生は、労働生産性を上げるためには、平日の客室稼働率を高めて、効率良く収入を増やす仕組みが必要であると指摘しています。

 

とりわけ宿泊業全体の60%を占める「資本金1千万円未満の小規模事業者」の生産性が低く、産業全体の足を引っ張っている。

これは以前からこのコラムで書いているとおり、「客室稼働率」がその大きな原因ではないかと思う。家族経営の多い日本の旅館業の平均客室稼働率は35%(新潟県は24%)と低く、これでは生産性は低くなって当然のような気がするのだ。

(中略)

では、何をすればよいのだろう。マルチタスクで従業員をシゴく前に、そのことを考える機会を与え、皆で思い切った策を考えることが必要だ。

例えば、ICTを活用し、経営者が留守の場合でも、あらかじめ登録された顔と指紋認証で玄関と客室のロックが解除され、素泊まりで宿泊できるような仕組みはできないものか。極論だが、働かずとも収入が得られる「装置産業」として脱皮していかねば、生産性向上はできないと思う。

ICTの発展を待つ時間がなければ、「結」の精神と仕組みを復活させ、日によって
は1軒の宿に客を集中させる(いわゆる「振り替え」をする)等の仕組みならできないか。すなわち、少ない人数で、多くの客室を動かす仕組みが今必要なのだ。

その際、食事は不要である。外の店で食べればよい。「外の店は近くにはないし、遅くはやっていない」という声もあるだろう。それなら、遠くで食べてくればよい。「足がない」かもしれない。それなら、タクシーで来ればよい。「それは高い」という。

(中略)

できない理由を考えるのではなく、できる理由を考える。それができないと、日本旅館は皆、大手に買収され、チェーン化が進むだろう。

井門隆夫(2015)「地域観光事業のススメ方第69回」『センター月報』2015年12月号

 

読み終えて

上記の点に加えて、井門先生は「平日の客室稼働率を高めるには、インバウンド需要を取り組もう!」との提案もされています。

そのためには、東京~富士山~京都・大阪といった、いわゆるゴールデンルートに偏りがちなインバウンド需要を地方に分散させることが課題になります。

一方、11月27日に、ゴールデンルートと異なる外国人観光客の新たな受け皿となるべく、全国12の地域が「Undiscovered Japan」(まだ知られていない日本)をテーマに、自ら造成した特色のある滞在プログラムなどを発表いたしました。

こうした取り組みが徐々に波及し、インバウンド需要が地方に分散することで、旅館の客室稼働率と生産性が高まることに期待したいと思います。