労働生産性が向上する企業と向上しない企業の差とは

 

新潟経済社会リサーチセンターの銀山です。

私は現在、労働生産性の向上をテーマに調査を進めており、各種データや文献などを確認しています。そのなかで、中小企業庁「2018年版 中小企業白書」で興味深いデータを見つけましたので、本日、ご紹介したいと思います。

 

 

同じ生産性向上策を実施しても効果に差がでることも

まずは、図表1のデータをご覧ください。こちらのデータは全国の中小企業を対象に実施したアンケート結果であり「省力化投資を実施」や「新規投資・増産投資を実施」などの各生産性向上策を行なったところ、労働生産性が向上したと回答した企業の割合です。この結果をみると、各生産性向上策は概ね3割から3割半ばの企業で効果があるという結果となっています。

 

図表1 各生産性向上策で効果があったと回答した企業の割合①

(資料)中小企業庁「2018年版 中小企業白書」をもとに筆者が作成

 

一方、図表2のデータをご覧ください。こちらも同じく「省力化投資を実施」や「新規投資・増産投資を実施」などの各生産性向上策を実施して、労働生産性が向上したと回答した企業の割合ですが、効果があったと回答した企業の割合は概ね5割となっており、図表1よりも大幅に上昇しています。

 

図表2 各生産性向上策の効果があったと回答した企業の割合②

(資料)中小企業庁「2018年版 中小企業白書」をもとに筆者が作成

 

全く同じ質問をしているのに回答割合に違いが出てくるのはなぜでしょうか?

実は「図表1 各生産性向上策で効果があったと回答した企業の割合①」は「業務見直し」を実施していない企業が回答した結果であり、「図表2 各生産性向上策で効果があったと回答した企業の割合②」は「業務見直し」を実施した企業が回答した結果です。一緒に表示すると図表3になります。

これらのデータから推察できることは「業務見直し」を実施したかどうかで、各生産性向上策の効果が大きく異なってくるということです。

 

図表3 各生産性向上策で効果があったと回答した企業の割合③

(資料)中小企業庁「2018年版 中小企業白書」をもとに筆者が作成

 

業務見直しの具体的な取り組み

なお、「業務見直し」を実施した企業が具体的に行なっている取り組みを尋ねたところ、「業務の標準化・マニュアル化」が40.2%、「不要業務・重複業務の見直し・業務の簡素化」が40.0%とそれぞれ4割の企業が実施したと回答しています。以下、「業務の見える化」(30.6%)、「業務の細分化・業務分担の見直し」(20.1%)などとなっています(図表4)。

上記のような「業務見直し」を実施した企業は、各生産性向上策の効果がより一層出やすいという結果となっています。

 

図表4 業務見直しを実施した企業が具体的に行なっている取り組み

(資料)中小企業庁「2018年版 中小企業白書」をもとに筆者が作成

 

まとめ

今回、ご紹介したデータをみると、「業務見直し」をして業務の整理を行なうことが、他の各生産性向上策を実施する上で非常に重要だということが分かります。先日、数多くの企業の経営改善を行なってきた経営コンサルタントの方にお話を伺いましたが、同様のことをお話になられていました。

労働生産性を向上させたいとお考えの方は、最初に「見える化」によって正確に現状把握を行なうほか、「業務の標準化・マニュアル化」により業務のムラやムダを無くしたり、「不要業務・重複業務の見直し・業務の簡素化」で業務量を削減・整理したりすることなどの「業務見直し」を実施することをおすすめします。そのうえで、設備投資やIT投資などを行なうと、より効果的な投資になるのではないでしょうか。