観光地のKPIの参考に!~観光予報プラットフォームの活用方法~

 

こんにちは。新潟経済社会リサーチセンターの江口です。

近年、観光振興の分野において、KPI(Key Performance Indicator:主要業績評価指標)の設定とその進捗管理が求められるようになっています。

しかしながら、観光業界には把握できる定量データがそもそも少ないほか、即時性に欠けるデータが中心であるため、KPIを設定する際、使用するデータの選択と活用に苦慮する場合が多いと思われます。

こうした中、私どもの機関誌「センター月報5月号」では、経済産業省の「観光予報プラットフォーム(β版)」の活用を提案しています。執筆は毎月、連載をお願いしている井門観光研究所の井門隆夫先生です。

 

観光予報プラットフォーム

 

エリアマーケティングを始めよう!

井門先生は、「観光予報プラットフォーム(β版)」内にある「観光実績」の「ランキング」を活用しながら、新潟県内の温泉地の特徴について、次のように解説されています。

 

図表1は、一例として、新潟市西蒲区(岩室温泉等)と十日町市(松之山温泉等)の比較をみたものだ(いずれも2015年度の秋・冬の実績)。

宿泊居住地ランキング

この表をみると、岩室温泉等は県内需要が44%(首都圏4都県からは35%)と地元商圏からの利用が多い「地元商圏型」であるのに対し、松之山温泉等は首都圏の4都県が73%(県内17%)と「広域商圏型」であることがわかる。

新潟県内のこの他の「地元商圏型」温泉地としては、瀬波温泉(県内37%、首都圏34%)、月岡温泉(県内48%、首都圏32%)等があり、「広域商圏型」としては、湯沢温泉(首都圏86%、県内5%)妙高市(首都圏51%、県内16%)、佐渡市(首都圏44%、県内8%)等がある。

逆に、「新潟県民がどこに出かけていったか」というランキングの表示もできる。こちらは、1位は「千葉県浦安市」(東京ディズニーリゾート)、2位は「新潟市中央区」、3位は「新発田市(月岡温泉等)」と、秋・冬は「ディズニー強し」であったことがわかる。

マーケティングの第一歩は、「どのエリアから来ているのか」を知り、他エリアと比較することから始まるので、まずは興味あるエリアを観光予報プラットフォームで調べてみるとよい。

(中略)

次に、「単純集計」機能で表示できる、「年齢層別の宿泊状況」グラフをみてみよう。一例として、湯沢町にどの年齢層が泊まっていたかを示すグラフが図表2である。

年齢層別宿泊実績▲クリックすると、鮮明に見えます。

これをみると、左側半分(10~12月)の入込みは弱く、右側半分(1~3月)で稼いでいることがわかる。真ん中の赤線のピークは12月30日だ。

赤線は「中年層」。すなわち、働いている生産年齢層。緑線が「若年層」。薄紫色が「老年層」である。冬の需要で中年層が目立つのは、スキー需要と思われる。秋は老年層が小さな山を築いている。10月下旬がピークとなっているので、紅葉需要だろう。

しかし、このグラフで一目瞭然なのが、「週末」と「平日」の大きな格差だ。特に赤線の中年層では、ジグザグの振れ幅が特に大きい。ピークとなっているのは土曜日。落ち込みの底は火曜と水曜日だ。

地方旅館の労働生産性が低いと指摘されているが、シーズンによる差もさることながら、この曜日別格差を是正しない限り、なかなか解決に結びつかないのではないだろうか。大型連休の分散や年休の取得促進が叫ばれているが、その必要性はこのグラフからも理解できるだろう。

また、参加形態別にグラフ化してみたものが図表3である。

参加形態別宿泊実績▲クリックすると、鮮明に見えます。

こちらをみると、ジグザグの振れ幅が大きく、週末・平日格差を誘発しているものは青線の「家族参加」、すなわち、子連れ客だと想定できる。となると、親世代の年休促進もよいのだが、学校が平日に休みにならない限り、週末・平日格差は解消できないのではないだろうかとの推測もできる。

このほか、宿泊需要をもとにオリジナルな分析をしていくための素材とすることも可能だ。例えば、アルビレックス新潟のホームゲームのある日の新潟市内の宿泊は、他の日と違うのかなど、イベント効果の検証も可能だ。ちなみに、この例を調べると、浦和レッズ(埼玉)や横浜Fマリノス・川崎フロンターレ(神奈川)、松本山雅(長野)とのゲーム時に明確なアップ傾向がみて取ることができる。

 

井門隆夫(2016)「地域観光事業のススメ方第74回」『センター月報』2016年5月号

 

感想

県内の地域ごとに宿泊データが確認できるのは画期的なことです。しかも、直近のデータを日別・顧客層別などに、詳しく分析できます。「観光予報プラットフォーム(β版)」がどの程度、宿泊者数の実態をカバーしているのかは不明(注)ですが、傾向を確認するには十分だと思われます。

興味のある人は、経済産業省の「観光予報プラットフォーム(β版)」にアクセスし、実際に動かしてみることをおすすめましす。思っている以上の分析がきっとできると思います。なお、具体的な分析方法については、「観光予報プラットフォームの使い方」をご覧下さい。

 


 

資料:

経済産業省「観光予報プラットフォーム(β版)」(https://kankouyohou.com/)

 

注:

「観光予報プラットフォーム(β版)」の「よくあるご質問」には、

 

観光予報プラットフォームでは、宿泊実績・予約データ6,575万泊から予報をしております。これは日本全体の総宿泊数の約6%程度となります。データは2週間に1回、約100万~300万泊を追加しております。
実績による集計・ランキングは、宿泊実績・予約データに公開されている総宿泊数を掛け合わせております。2015年度は約5億泊から集計いただけます。
地域のポテンシャルにある観光に有効な情報や約47万件となっております。

経済産業省「観光予報プラットフォーム(β版)
(https://kankouyohou.com/)

と記載されています。