新潟県の「健康ビジネス連峰構想」、 健康・福祉・医療関連分野で高付加価値ビジネスの創出を目指す

 

新潟経済社会リサーチセンターの佐藤です。本日は、新潟県が取り組んでいる「健康ビジネス連邦構想」についてご紹介します。

大学を卒業した若者が地元に戻らずに首都圏などで就職してしまうことは全国の地方都市に共通の悩みです。若者を呼び戻すには魅力ある雇用の受皿が必要であり、そのためにも地域における産業育成の取り組みは重要です。

産業育成には時間がかかるところですが、新潟県は当県の強みを活かせる分野として健康関連ビジネスに早くから着目し、関連ビジネス振興の取り組みを続けてきました。これまでの10年以上にわたる活動の経緯や今後の方針などを新潟県産業振興課にお聞きしました。

 

健康ビジネス連峰構想とは?

2006(平成18)年2月、新潟県は、県内における産業振興を目指すなかで健康・福祉・医療関連分野に着目し、「健康ビジネス連峰構想」を掲げました。

健康関連ビジネスを目標に定めた理由は、まず第一にその活動内容が幅広い範囲に及ぶことです。一口に「健康」といっても消費者の関心は食品、医療、福祉、健康教室、スポーツなど多岐に及ぶため、県内の様々な産業が関与できます。また、社会が成熟するに従い消費者のニーズはどんどん多様化することから、少子化、高齢化が進むなかでも健康関連ビジネスの市場は拡大していくと予測しました。さらに、消費者の多様なニーズに対応するには、健康・福祉・医療サービス、食品製造、農業、金属加工などの様々な業種が業態を越え、連携した取り組みを行わなければなりません。これらの連携により付加価値が高い新サービス、新製品を生み出すことで地域産業が成長することを期待したとのことです。

「健康ビジネス連峰」という名称には次のような想いが込められています。

  • 健康・福祉・医療に係わる多様なニーズに対し、
  •  県内の産業が業態を越えて連携しあうことで、満足度の高い商品やサービスを創出し、
  •  各企業の多様なビジネスのイノベーションが連峰のように連なって県内産業の育成につながっていく(イメージ図参照)

 

健康ビジネス連邦のイメージ

 

06年度からの2年間は健康産業を目指す多くの事業者の模範となる先導的事例を輩出するための活動を行ない、それを受けて08年に下記写真の事例を始めとする27件を「健康ビジネス連峰三つ星モデル」として選定しました。選定にあたって重視したのは、地域資源を活用している、医学的・科学的根拠がある、楽しい、美味しい、美しい、簡単などの創意工夫がなされている等の点でした。

この2年間の取り組みを通じ、企業、大学、医療機関、公設研究所など、業態を越えた様々な連携により、多くの新しいビジネスが生まれました。ここで培われた「業態を越えた連携」ノウハウは現在も引き継がれ、健康関連の様々な事業を行う際の大きな推進力となっています。

 

健康ビジネス連邦の三つ星ビジネスモデル

 

「健康ビジネスサミットうおぬま会議」の開催

続く08年には、健康・福祉・医療関連の産業に従事する企業や大学、行政等の関係者が一堂に集い、様々な課題の解決に向けた議論や情報発信、異業種間交流を行う場として、全国初の「健康ビジネスサミットうおぬま会議」(以下「うおぬま会議」)を、魚沼市と南魚沼市を会場として開催しました。この会議は08年以後毎年開催されており、開催地に関わらず「うおぬま会議」の名称が引き継がれています。

「うおぬま会議」では、健康・福祉・医療分野における様々なテーマを選定し、その分野で先進的な研究や活動を行う大学や企業を講師に招いて基調講演を行うほか、数多くのビジネス会議やセミナーが開催され、2日間にわたり活発な議論や意見交換が行われます。参加者は興味があるテーマを選んでセミナーなどに参加する形式です。

昨年の「うおぬま会議」は2016年11月に北里大学保健衛生専門学院(南魚沼市)において開催されました。「医療機器業界とイノベーション開発について」と題した基調講演のほか、ビジネス会議では「要配慮者向け災害食の認証制度」、「高圧技術の活用促進」、「南魚沼版CCRCと健康ビジネスの創造」などのテーマが取り上げられました。このほか、一般参加者も対象としたセミナーは、銀座ラ・トゥールのシェフによる「魚沼地域の食材を活用した商品開発と販路開拓のアイデア」、国立健康・栄養研究所の研究者による「健康寿命延伸のための身体活動・運動」などが開催されました。筆者も参加してみました。目新しいテーマや先進的な取り組みのセミナーですが丁寧な解説が行われ、素人でもたいへん興味深く聴講できました。講師の解説に続いて活発な質疑応答が行われ、セミナー終了後は今後の情報交換のためか参加者間で熱心な名刺交換が行われていた点などが印象的でした。

最新トピックが取りあげられることに加え、先行した取り組みを行なっている組織の講演を聞けるのはたいへん貴重な機会です。本年の「うおぬま会議」は10月26~27日に新潟市において開催されました。情報収集や自社ビジネスの展開を考える良い機会になると思われることから、来年度はご参加を検討してみてはいかがでしょうか。

 

うおぬま会議の様子

 

さて近年、新潟県は、健康・福祉・医療関連の産業振興の取り組みを、一般社団法人健康ビジネス協議会(以下「健康ビジネス協議会」)と連携して推進しています。この協議会は、前述の「健康ビジネス連峰三つ星モデル」事業に積極的に取り組んだ企業などが中心となって設立されました。様々な産業において付加価値を創出するには、実際にビジネスに取り組んでいる企業が中心となって活動を行なった方が効果的だと考えられたことによるものです。

健康ビジネス協議会は本年8月末現在、203社の企業が会員となって活動を行なっています。食、サービス・交流、ものづくりの3つの部会に分かれ、各部会においてテーマを決めて研究会や情報交換を行ない、会員企業の本業にも役立つような活動とビジネス創出を目指しています(詳細は同協議会のホームページを参照)。健康・福祉・医療関連の産業振興策においては新潟県からの事業受託も多く、新たな事業取り組みや関連情報の入手の早さには定評があるところです。

多様化し、しかもどんどん変化する消費者のニーズに企業単独で応えるのはなかなか難しいところですが、健康・医療・福祉関連分野においては、新潟県ならびに健康ビジネス協議会によるプラットフォームが整備され、運営されています。このような素材、技術、情報、そして人的ネットワークの基盤を活用し、業態を越えた連携などにより、健康関連の付加価値が高い新ビジネスが新潟県内で数多く生まれることを期待したいところです。

 

=

 

『センター月報』2017年10月号の「潮流 県内最新トピックス 第15回」を加除修正いたしました。