新潟県内で日本版DMOを設立する際に注意する点とは?

 

こんにちは。新潟経済社会リサーチセンターの江口です。

先日、新潟県旅館ホテル組合様などが主催する「平成28年 新春 新潟県観光のつどい」の第1部「パネルディスカッション」に、パネリストの1人としてお話させていただきました。

テーマは「磨き上げよう地域の宝、これからの観光地域人材づくり」。新潟県観光の現状や、今後の観光振興組織の在り方、そして地域の人材づくりなどについて、意見交換がおこなわれました。

バネリストは、新潟県知事の泉田裕彦氏、日本交通公社主席研究員の山田雄一氏、新潟県観光協会常務理事の吉川孝之氏、新潟県旅館ホテル組合専務理事の金子春子氏と私の5名です。他のパネリストのお話をお聞きしながら、気づいた点を今日はご紹介したいと思います。

 

観光のつどい

 

理想的な観光振興組織とは?

まずは当日、私からお話させていただいた主な要点は次の通りです。

日本版DMOをはじめ、今後、地域の観光振興組織については、①セールス・プロモーション活動に加えて、マーケティングやブランディング活動にも力を入れる、②ブランディングや地域づくりを担っていく専門的な人材を育成・確保する、③安定的な財源を視野に入れた成果評価の仕組みを持つ、といった活動に取り組んでいくことが理想とされています。(日本版DMOについては、「日本版DMOとは?」の投稿をご参照下さい)。

これに対して観光協会など、現状の観光振興組織をみると、①各種イベントの企画・運営業務に多忙を極め、地域づくりにまで手が回りにくい、②専門的な人材を育成・確保するための制度と資金的・時間的な余裕がない、③目標設定と活動の成果評価に曖昧な点が発生しやすい、といった課題を抱えていると思われます。

こうした理想と現状のギャップを認識した上で、中長期的に少しずつ改善を図っていく際の参考事例として、7市町村で広域連携を進める雪国観光圏の取組内容を幾つかご紹介させていただきました。

 

DMOとのギャップ

 

「新春 新潟県観光のつどい」にパネリストとして参加して気づいた点

パネルディスカッションでは、日本版DMOの必要性や、そのための財源などにも話が及びました。他のパネリストの話を聞きながら、改めて感じたのは「日本版DMOを単なるプロモーション組織と捉えてはダメ」ということです。

セールスやプロモーション活動は直近の売上を獲得する、極めて重要な活動です。ただし、それ以外の活動も視野に入れたDMOにしていかないと、従来の観光協会と変わらない、看板のすり替えにとどまってしまう可能性があります。

そのため、ブランディングや地域づくりはもちろんのこと、DMOや観光産業に勤務する、いわば地域内の人材育成にも力を入れなければなりません。また、行政からの委託事業だけではなく、自主財源を獲得する方法についても検討しなければなりません。

さらに、ボストン コンサルティング グループ日本代表の御立尚資氏が仰っている通り、他産業に比べて低い、現状の観光産業の生産性や従業員の賃金を引き上げるための支援もしていかないと、地域活性化にはつながらないかもしれません。(資料:御立尚資「インバウンドの数だけで観光立国は望めない」『日経ビジネスオンライン』)

自治体・観光事業者中心の「観光振興」から住民や農業生産者なども巻き込んだ「観光地域づくり」へと観光の捉え方が大きく変化する中、観光振興組織が果たす役割も大きくなっています。したがって、その活動内容を今後、さらに広げていく必要があると感じたパネルディスカッションとなりました。

 


 

資料:

御立尚資「インバウンドの数だけで観光立国は望めない」『日経ビジネスオンライン』2016年1月25日,日経BP社
http://business.nikkeibp.co.jp/
article/person/20130411/246516/

国土交通委員会調査室 加藤 隼「観光地域づくりにおけるDMOの役割 ― 政府の取組方針と海外の事例を中心に ― 」『立法と調査』No. 371(2015. 12)p.52,参議院事務局企画調整室
http://www.sangiin.go.jp/japanese/
annai/chousa/rippou_chousa/
backnumber/2015pdf/
20151201052.pdf