地域振興の参考に!吉本佳生著『マーケティングに使える「家計調査」』感想

 

こんにちは。新潟経済社会リサーチセンターの江口です。

近年、総務省『家計調査』を使った「地域おこし」が全国各地でみられるようになっています。

有名な事例では、宇都宮市と浜松市による「餃子消費量日本一」を巡る話題作りがあります。「宇都宮餃子会」のウェブサイトによると、1990年12月に宇都宮市職員研修グループが

宇都宮の名を「餃子」を通してPRする方法として、宇都宮市が「餃子日本一であること」等を

研究発表したことがきっかけとなっているようです。

 

餃子 家計調査

 

現在では、餃子以外にも、水戸市の納豆、鳥取のカレーなど、様々な地域で家計調査のデータを使った地域振興がおこなわれています。

こうした中、家計調査を使ったデータの見方・活用方法を紹介する書籍『マーケティングに使える「家計調査」』(吉本佳生著)を読みました。とてもわかりやすい内容でしたので、今日はこの書籍のポイントをご紹介いたします。

 

家計調査とは?

そもそも家計調査とは、どのような調査なのでしょうか。

総務省のウェブサイトによると、以下のような沿革・内容・目的となっています。

  • 総務省が毎月、実施・公表している調査(年平均は毎年6月頃に公表)
  • 1946年に始められた「消費者価格調査」から発展したもので、歴史が古い
  • 全国約9,000世帯を対象に、毎日の収入と支出、購入数量を家計簿に記入してもらう形式で実施
  • 景気動向の把握や、国・地方公共団体・企業などで賃金水準を決める際の資料、消費者が購入する商品やサービスの需要予測などに利用。

なお、家計調査は世界中の多くの国で実施されていますが、長期にわたり継続して、毎月、集計している調査は日本だけのようです。

 

おすすめのポイント

本書籍では、様々な事例を通して、家計調査の見方・データの取り扱い方法が説明されています。数字が苦手の人でも、身近な事例をもとに話が進んでいくので、無理なく理解できるはずです。

事例としては、

  • 同じようで実は違う!眼鏡とコンタクトレンズの消費行動とは?
  • カフェの経営者が高所得世帯向けにうまく販売しようする際には、コーヒーと紅茶のどちらに力を入れるべきか?
  • 冬服のバーゲンセール効果を測定する方法とは?
  • 電気冷蔵庫、電気掃除機、電気洗濯機、電子レンジ、炊飯器のうち、高所得世帯にうまく販売できているのは、どれか?
  • 特別な時に飲む高級酒は今や…

など、「ほー」「なるほど」と納得できるデータと解説ばかりです。

 

石油ストーブと「ストーブ温風・ヒーター」の動向

書籍の中で特に私が興味深かったデータが「ストーブ温風・ヒーター」です。なぜなら、新潟県は、石油ストーブ出荷額日本1だからです。

ちなみに、家計調査(2013年)をもとに、「ストーブ温風・ヒーター」の市場動向を自分自身で調べてみると、以下のような状況が把握できました。

  • 1世帯あたりの「ストープ温風・ヒーター」への支出額は、ここ数年は横ばいで推移
  • 10月頃から購入され、ピークは12月
  • 勤労者世帯を年収入5分位階級でみると、高収入世帯では支出額が多くなく、購入単価も低い
  • 世帯主の年齢階級別にみると、29歳以下と60歳以上で支出額が多い
  • 都道府県庁所在市別にみると、北海道・東北地方での支出額が多く、新潟市は全国で6番目

 

ストーブ・温風ヒーター支出額(推移)

ストーブ・温風ヒーター支出額(月ごと)

ストーブ・温風ヒーター支出金額(収入)

ストーブ・温風ヒーター支出金額(年齢)

ストーブ・温風ヒーター支出金額(都市)

 

こうした状況の中で、著者である吉本佳生氏は、特に1世帯あたり年間の「ストーブ温風・ヒーター」の支出金額、購入数量、購入単価などをもとに、独自の分析をされています。

「ストーブ・温風ヒーター」は、高所得世帯であるⅤがいちばん安い価格で買っていて、数量も平均に近いので、支出額は平均を下回っています。この価格データは、筆者にとって意外でした。

(中略)

あくまでひとつの仮説ですが、高所得世帯は、相対的にみて、こうした機器の買い替えをひんぱんにおこないやすいので、最高機能の商品には手を出さず、技術進歩の恩恵は、買い替えサイクルを他の世帯より短くすることで受け取る方針かもしれません。そう考えれば、価格と数量の特徴がうまく説明できます。

吉本佳生(2015)『マーケティングに使える「家計調査」』講談社

つまり、高所得世帯は「いまの最高機種を買うより、平均的な機種をかうほうがいい」と考えているようにみえるとおっしゃっています。

 

読み終えて

様々な商品にわたり、その消費動向が解説されているので、地域振興を考えている人や、市場動向を把握したい人、統計データに興味のある人には、特にピッタリな書籍だと思います。

ただし、家計調査のデータを活用する際には、以下のような点に注意が必要だと感じました。

 

1.他の統計データも同時に活用

家計調査は、あくまでも調査対象となった限られた数の消費者による買い物データです。したがって、生産者側のデータも揃えて、両者を見比べながら分析した方がより正確に市場動向を把握できます。

 

2.複数年で確認する

調査対象年によって支出額や購入頻度、購入単価が上下する時があります。

例えば、上記の「ストーブ・温風ヒーター」のデータも、年によって変動しています。2013年の高収入世帯では支出額が多くなく、購入単価も低かったのですが、2014年になると、支出金額は変わらないものの、購入単価は他の収入世帯に比べて最も高くなっています。

したがって、複数年のデータを組み合わせて、分析した方がより実態に迫れます。

 

3.話題作りに活用する際には…

家計調査のデータは、地域振興の話題作りや理由付けの大きなヒントとなります。

ただし、話題となった後のプロモーションの展開方法、収益を得る仕組みなどは当然、自分たちで練るしかありません。

したがって、家計調査のデータはあくまでも、地域振興のきっかけに過ぎないという認識で使いましょう。