和食を求める外国人旅行者

 

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

私どもの機関誌「センター月報」では、毎月、井門観光研究所の井門隆夫先生より、観光振興や地域活性化などに役立つヒントやアイデアなどをご紹介いただいております。

今月の「センター月報2月号」では、増加している外国人旅行者に提供する「食」について、ご説明いただきました。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。

 

井門隆夫氏 和食を求める外国人旅行者

 

和食で地方創生

 

全国を巡っていて感じること。それは都市や有名観光地において、外国人観光客が目立って増えたと実感することだ。今や、東京や京都はもとより、箱根・富士、高野山、広島あたりでは日本語より英語を話す機会のほうが多いのではないかと思うくらいだ。

一方、それ以外の地方の温泉地や農漁村では、今まで通りの日本人のシニア観光客が目立つ。しかし、徐々にそうしたシニア客のリピーターの足が遠のき、集客に苦慮するようになり、1軒、2軒と宿を畳もうかどうしようかと悩む経営者が後を絶たなくなってきているのが現状ではないだろうか。

有名観光地で外国人も増えつつあるエリアは国や自治体からの支援も増え、生産性も向上する一方で、ブランドのない農漁村エリアや山間部の温泉などは苦戦し、国内観光地での二極分化が進んでいるように感じる。

こうした市場環境のなかで、妙な「矛盾」を感じることがある。外国人観光客は本当なら、こうした有名観光地の宿ではなく、農漁村エリアや山間部の温泉宿に泊まりたいのではないのではないかということ。その理由としては、宿で食べたいのが日本人観光客が食べている「豪華な会席料理」ではなく、日本の郷土性のある料理ではないかと思うからだ。

そのせいか、外国人は「旅館に泊まりたい」という希望は多いものの、実際に泊まっている数はそれほどでもなく、ホテルの利用が多い。さらに、1泊2食で予約したものの、豪勢な夕食を放棄して町に食べに出かけるという方も散見される。

とはいうものの、町に出てお目当ての店があるかというとそうでもない。なぜなら、望んでいる「和食」を出す店がなかなかないためだ。「和食」とは、天ぷらとかしゃぶしゃぶではなく、根菜や魚介を中心とした昔ながらの「和食」だと思う。結果として、わかりやすい寿司店ばかりに外国人客は流れていないだろうか。

残念ながら、日本人の泊まる宿はパンフレット映えのするエビ・カニ・牛肉といった「赤もの」づくしの料理になって久しい。有名観光地だけならまだしも、山の中の温泉でさえだ。とりわけ、昨今の高齢者は牛肉が大好きで、多くの旅館ではシニア客向けに牛肉を定番としている。

しかし、こうした料理は外国人が求める料理ではないのだと思う。

(中略)

外国人旅行者は、天然の魚介と地元野菜が食べられる宿や店を探している。しかし、出会うのが、牛肉をウリにした豪華会席料理の旅館

(中略)

もちろん、「日本人が相手なのでしかたないだろう」という意見が多いと思うし、その通りだと思う。あえて変える必要もない。

それならば、せめて「天然の魚介と地元の野菜」を食卓に出すような宿や店の情報を発信して欲しいし、そうした宿や店は畳むことを考える前に、世界的な需要があることを知って欲しいと思う。

(中略)

そうした宿や店は有名観光地ではなく、誰も知らないような土地にたたずんでいる。気づいた時、外国人が地方の海辺や里山の民宿に押し寄せているかもしれない。

最後に一点紹介したい。日本海に浮かぶ隠岐の海士町(島根県)では、農業や漁業から「和食」を学び、将来、宿を運営できる若者を育てようと「島食の寺子屋」を4月から開講する。シェアハウスに住み、海士町の観光協会で働きながら、廃校舎をリノベーションした調理実習室付きの寺子屋で2年間学ぶ(うち1年は全国の旅館で実習する)。調理師専門学校のように調理師を目指すのではなく、あくまで、和食を理解した経営者を育てることを趣旨としている。

こうした取り組みにより、島に根づき、島の民宿を承継してくれる若者が1人でも出てくることを期待しているという。ぜひ、海士町に続く自治体が出てくることを待ち望んでいたい。

 

井門隆夫(2017)「地域観光事業のススメ方第83回」『センター月報』2017年2月号

 

感想

「食」のミスマッチについては、外国人旅行者だけではなく、日本人の県外旅行者でも同じようなことが起こっていると以前から指摘されています。つまり、旅行者は地元のお客様が求める「ハレ」の日の料理ではなく、地元の方々が昔から日常で食べている、その土地ならではの料理を求めているという議論です。

今回の原稿を読み、日本人旅行者も外国人旅行者も、その土地に古くから伝わる「和食」を求めているのだと改めて感じました。