大火から1年余 市民とともに復興まちづくりを力強く推進する糸魚川市の現状(その1)

 

新潟経済社会リサーチセンターの佐藤です。

一昨年の暮れに大火災が発生した糸魚川市を訪問する機会がありました。現在、当市はまちを挙げて復興活動に取り組んでいるところです。ご担当者に復興計画が策定されるまでの様子や、策定された復興計画の取り組み状況などをお聞きしましたので、2回にわたってご紹介します。

 

大火発生後、ただちに復興活動が始動

2016年12月、中心市街地の約4ヘクタールを延焼し147棟が焼損する大規模な被害をもたらした糸魚川市の大火から1年4カ月が経過しました。現在糸魚川市(以下「市」)は、国や県からの支援も受け、被災された方々とともに復興まちづくりの取り組みを力強く進めています。

 

火災直後のまちの様子 糸魚川市提供(以下同じ)

 

復興計画(注)は17年8月に公表されました。市のHPなどにも掲載されているので詳細は省きますが、防災機能を取り入れたまちづくり、幅広い世代が安心して生活できる住環境整備、にぎわい創出、まちなみ景観形成などの施策が盛り込まれています。多岐にわたる重要施策を含む復興計画が、被災された方々を含む大勢の関係者の合意形成を図りながら8カ月の短期間でまとめられたことには驚かされます。
市によると、被災者支援のためにとにかくスピード重視で取り組んだ。計画策定時には骨格だけを固めて細部はその後に検討という項目もあったとのことです。

(注)正式名称は「糸魚川市駅北復興まちづくり計画」

 

復興への取り組みは、糸魚川市を始め、新潟県、国土交通省、経済産業省などの担当者で構成する「復興まちづくり推進協議会」において、被災状況を確認し、復興計画の骨子を検討するところから始まりました。
被害を拡大させた要因として、乾燥した南からの強風にあおられて広範囲に延焼が拡大したことに加え、被災エリアが比較的古い木造住宅が密集していた地域であったこと、公園や広場などのオープンスペースがほとんどなかったことなどが挙げられました。さらに市においては、昭和3年、7年、29年と昭和以後に限っても度重なる大火を経験しています。今回の大火の被災地は過去の大火の被災地と一致する部分も多いことから、被災経験の風化も被害を拡大させた要因の一つとされました。

これらのハード面、ソフト面の課題を勘案して総合的に火災に強いまちづくりに取り組むことが確認されました。

被災地域は、加賀街道の宿場町として栄え、雁木のあるまちなみや酒蔵、割烹など歴史的資源が残っていた地域でした。復興まちづくりを進めるにあたっては、旧街道を中心とした糸魚川らしいまちの歴史を生かすことが重要とされました。さらに、被災状況が比較的軽微であった既存インフラを活用すること、被災された方々が早期に生活や事業を再建できるよう考慮することなどから、大規模な区画整理事業など長期間を要する抜本的な基盤整備は行なわず、「修復型のまちづくり」を進めるとの方向性が出されました。

 

被災者の意向を十分に聴取し、復興計画に織り込む

復興計画を策定する過程では、被災者に対する個別意向調査を実施するとともに、被災者や関係者向けの説明会が概ね月1回のペースで継続して開催されました。復興計画の考え方や計画の骨子、検討の進み具合などの最新状況が都度説明され、それに関する被災者や市民の声を十分に聴取して計画に反映させるように努められました。

17年2月末に実施された被災者向け個別意向調査によると、土地建物を所有している方(回答102件)のうち66%が再建したい(再建済を含む)との意向を示しています。まちの防災機能強化のために行なう敷地再編や道路拡幅については、通常は合意を得るのに長時間を要する項目なのですが、必要性を理解した(83%)、協力する(74%)など、肯定的な回答が多数を占めました。

市の担当者によると、このように被災者の方々から防災機能強化の必要性について理解をいただけたので、関連施策が速いスピードで進んでいるとのことです。さらに、にぎわいづくりに向けた意見では、スーパーや日用品店、医療施設、高齢者や子どもが気軽に集える場所など、店舗や施設の再建について多くの要望が挙げられており、復興への期待をうかがわせる内容となっています。

このようにして被災者や市民、事業者との対話が重ねられ、復興まちづくりが目指すべき姿が徐々に形づくられていきました(イラスト参照)。

 

▲ 復興まちづくりが目指す姿

 

これらの目指すべき姿を実現するために77の具体的施策が定められ、さらに今後の復興まちづくりをけん引する重要な施策や波及効果が高い施策を以下の6つのプロジェクトにまとめ、これを優先的に取り組むことでスピード感のある復興を目指しました。次回は6つのプロジェクトのうち、「にぎわいのあるまちづくりプロジェクト」と「暮らしを支えるまちづくりプロジェクト」について、特徴的な取り組みをご紹介します。

 

 

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「センター月報」2018年5月号 「地方創生に向けた地域の取り組み」 を加除修正いたしました。