大火から1年余 市民とともに復興まちづくりを力強く推進する糸魚川市の現状(その2)

 

新潟経済社会リサーチセンターの佐藤です。

前回は糸魚川市 (以下 「市」 ) が復興計画を策定するまでの様子などをお伝えしました。今回は、優先して取り組むべき施策をまとめた市の6つの重点プロジェクトのうち、「にぎわいのあるまちづくり」、「暮らしを支えるまちづくり」の2つのプロジェクトについて、特徴的な取り組みをご紹介します。

 

にぎわいのあるまちづくりプロジェクト

復興後の「まち」の姿を考えるとき、にぎわいの創出は外せないポイントです。しかし、全国と同様に市でも人口が減少していることを考えれば、行政が大型のハコモノを建設し、これにより人を呼び込もうとする施策は取りづらいです。持続的なまちづくりを行なうには、既存施設や空き店舗・空き家などの地域資源を活用するとともに、地域住民が自らのまちに関心を持ち、主体的にまちづくりに取り組むことが不可欠とされました。

このような考えに沿い、被災後間もない2017年3~4月、「復興まちづくりカフェ」が開催されました。幅広い市民や関係団体から復興まちづくりに関する提言やアイデアを募り、その後の活動にも主体的に参画してもらうことを期待したものです。
2回開催されたカフェには高校生からお年寄りまで、様々な年代の市民約35名が参加し、熱心な話し合いが行なわれました。1回目は「まちの将来像」や「まちづくりのアイデア」がワークショップ形式で話し合われ、2回目はそれらのアイデアを、重要度や民間・行政・官民共同といった実施主体別に整理しました。例えば「官民共同で取り組む事業アイデア」の分類では、コミュニティを育む施設、色々な人が集まる多機能の場(みんなの家)、まちなみ・景観・防災に機能する並木づくりなどが挙げられました。これらの項目は、その後策定された復興計画にしっかりと織り込まれています。

17年10月に再開されたカフェでは「にぎわいのあるまちづくり」の実現に向けた討議が行なわれました。復興後のにぎわいのイメージを話し合い、さらに4つのグループがまちあるきを実施して地域の魅力を再発見する試みも行なわれました。まちあるきでみつけた新たなまちの魅力や気づきは「にぎわいの回遊づくり」としてまとめられる予定です。カフェで出された多くのアイデアは、「食べて飲んでまちを体験 ランチバル」、「ママたちが交流して元気になる ママ活!」など5つまで絞り込まれ、どのアイデアを優先して取り組むか、どのように実現するかなど、最後の詰めを検討する段階まできています。
市の担当者は、商店街や地元経済団体などと連携してカフェ参加者のアイデアや意気込みを何としても実現させ、にぎわいづくりに勢いを付けたいとしています。

 

カフェと並行して、17年10月には若者たちを中心に「にぎわい創出広場」の活用を考える「にぎわいチャレンジミーティング」もスタートしました。この広場はまちの中心部約1200平米の土地を整備したもので、これを活用してにぎわい創出の様々な取り組みを行なおうとするものです。将来は若者や女性のチャレンジスペースとしての利活用も想定するなど、復興まちづくりの象徴ともなる事業です。

 

▲ 活用を待つにぎわい創出広場

 

17年10~12月にかけて開催されたミ-ティングでは「市民や観光客が楽しむ」、「活発な経済活動が行なわれる」、「親子連れなどが日常を楽しむ」などの観点から、にぎわいを実現させるイベントの内容や必要設備などが話し合われました。19年春頃の整備完了・本格的な活用開始に向け、チャレンジミーティングの参加者、広場の設計業者、地元などの協議が続けられる予定です。

広場の本格的な活用は少し先になりますが、がれき処理、整地、簡易給水・受電設備設置などの仮設整備などが終わったことから、一刻も早くまちなかに元気を取り戻そうと暫定的な活用が始まっています。17年11月、にぎわい創出広場の皮切りイベントとして「いといがわ復興マルシェ」が賑やかに開催されました。

 

▲17年11月 大勢の来場者で賑わうマルシェ

 

スイーツ、ハンドメイド品、農水産物などの販売やフリーマーケットに47店もの出店があり、訪れた大勢の市民がまちなかの復興ぶりを実感しながらイベントを楽しみました。実行委員会の発表によると、東京、長野、富山など県外からも話題の店が出店、人気店では早々に商品が売切れ、3,000人を超える方々が来場など大盛況だったとのことです。
この広場は、本格的な整備に着手するまでの間、市に申し込みのうえ、にぎわい創出、まちづくりの機運醸成のための催しに活用することができます。本格的な活用までにたくさんのにぎわいの取り組みが誕生することを期待したいものです。

 

暮らしを支えるまちづくりプロジェクト

前回ご紹介したように、被災者向けの個別意向調査では6〜7割の市民が再建の意向を示しました。一方で被災地域は人口・世帯数が減少して高齢者が約半数を占めているほか、小規模な宅地が入り組んでおり、現在の建築基準における建ぺい率制限などのため、被災前と同じ状態には再建できない建物もあるなどの課題も抱えていました。
このような課題を勘案し、敷地再編や道路拡幅により木造建築物が密集した状況を解消し、まちの防災機能を強化するとともに被災者の生活再建を支援しようと、市営共同住宅を建築することが計画されました(イラスト参照)。

建設される市営住宅には、訪問診療所を併設するほか、入居者と周辺の住民が交流できるスペースも設け、地域のコミュニティ機能を高めることも狙っています。幅広い世代が安心して生活できる住環境を提供し、被災地における人口の確保や新たな居住者の流入を促すものです。
被災者のなかには仮設住宅に居住している方もいるため、19年の竣工を目指すなど、スピード感を持った取り組みが進められています。意向調査において市営住宅を希望した18世帯が入居することになる2階建て2棟、3階建て2棟の建物が建築される計画です。

 


1階に設ける訪問診療所は、他県で診療所を運営する医療法人が入所することが決まりました。この医療法人は理事長が糸魚川にゆかりがあるそうです。訪問の範囲は、市の大部分をカバーするとのことで、周辺の住民だけでなく、多くの市民にも安心感を生むことが期待されています。
交流スペースの活用方法は今後検討するとしています。どのようにすれば人が集い、コミュニティ機能を育むことができるのか、市の担当者は、入居予定者や周辺自治会などと相談しながら、人が集まる仕組み、集まった人たちがお茶を飲みながら会話を楽しめるような仕組みを考えたいとしています。

被災後の応急対応や復旧工事など、早急に取り組むべき作業などは順調に進捗し、一部は既に完了しています。にぎわい創出広場や市営住宅の交流スペースなどの復興関連施設についても、整備や建築は計画通りに進み、今後は効果的な活用方法を考える段階に入ります。「誰が」、「何を」、「どのようにして」などを明確にし、継続的に効果を生み出す仕組みを作るのは簡単ではありませんが、まちなかの賑わい創出につなげてほしいです。
復興計画には、定住者をまちなかへ誘導する仕組み作りや、市民によるまちの地域資源を活用したにぎわい創りなど、まちなか活性化に向けた取り組みも盛り込まれています。市と市民が一体となった様々な取り組みが奏功し、糸魚川のまちなかに、被災前に勝る賑わいが生まれることを期待したいものです。

 

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「センター月報」2018年5月号 「地方創生に向けた地域の取組み」 を加除修正しました。