インターンシップの課題と可能性


新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

私どもの機関誌「センター月報」では、毎月、井門観光研究所の井門隆夫先生より、地域活性化や観光振興などに役立つヒントやアイデアをご紹介いただいております。

今月の「センター月報9月号」では、インターンシップの取組方法についてご紹介していただきました。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。

 

インターンシップの現状と課題

将来の雇用プールを作るために


20歳といえば、大学生でいえば2年か3年生にあたる年齢。ちょうど8〜9月は、(中略)学生たちがインターンシップ(就労体験)に出かける季節だ。(中略)貴社でも(中略)学生をインターンシップで受け入れてみるのはいかがだろう。昨年の夏もこのコラムでこの話題をしたのだが、いよいよ人手不足が風雲急を告げつつあり、心からお伝えしたいので、改めてこのテーマとした。

しかし、そういうと「インターンシップとは何か」「どうすれば来てくれるのか」「受けると採用につながるのか」「一度受け入れたけどたいへんなのでもう結構」「そもそも何が課題なのか」といった質問が多々寄せられると思うので、ここで解説をしたい。ただし、あくまで私的な説明なので、詳しくは文部科学省や経済産業省、内閣府、その他のインターンシップの説明文も合わせて読んでいただきたい。立場によって多様な解釈があるのをおわかりいただけると思う。
 
(中略)
 
2.地域主導型インターンシップ

しかし、インターンシップこそ、地域の人材不足を補完し、将来に向けて解決していくための方法だと思っている。そのために、地域や事業者主導でプログラムや指導方法を考えていく必要がある。

なぜ、インターンシップが重要なのか。それは、人口減少時代の今後、採用コストがますます増加していくためだ。つまり、転職があたり前になっていく時代、1人あたりの就業年数はますます減っていく。外国人材に頼るようになればなおさらだ。地域でアルバイトをしてくれる人材も減っていくだろう。

そうなったときに頼るべきなのが、本来は学校だと思うのだが、(中略)就労を検討してくれる可能性のある人材コミュニティを地域や産業界で構築した方が早い。いわゆる地域のファンクラブだ。それもインターンシップ経験者のコミュニティを作る。こうしたコミュニティが、今後の重要な雇用プールになると思っている。

まず、インターンシップを定義し直そう。その目的は、学生の「社会人基礎力アップ」のための就労体験である。戦後の核家族化の進展やコミュニケーションのデジタル化もあり、現代の子供たちは素直な反面、社会人基礎力が低い。特に、叱られたり、厳しい試練を乗り越えていく経験が少ないので、社会を怖がって、叱られるおそれのあることをしようとしない。そのため、おとなしく、無難に、他人と同じようにふるまおうとする。就職活動で全員真っ黒スーツを着るのはその典型だ。(中略)つまり、自分に甘く、他人のせいにしようとする傾向がある。世界が狭く、海外旅行も危険だからと行こうとしない。

よく大学時代に体育会に所属していた学生は就職に強いといわれることがあるが、それは理不尽な社会経験を通じてこうした基礎力を高めているためだろう。

しかし、学生たちもこうした自分の弱点をうすうすわかっている。何とか社会に出るまでに強くなりたい。20歳に近くなるころ、そう願い始める学生も増えてくる。そのせいか、アジアやアフリカでのインターンシップ参加者が年々目立ち始めている。

しかし、海外でのインターンシップは費用がかかる。まずは日本の現場だ。

そこで、観光の「現場」で1〜3カ月は働いてもらおう。少なくとも3週間。このくらい働かないと情のつながりができにくい。仕事の内容は、普段と同じ。何も変わらない繁忙期の観光地の業務である。間違えたら叱って欲しいし、社員同様に接して欲しい。そして何より、観光地では、繁忙期の人手として活用して欲しい。

ただし、重要かつ忘れてはならないのは、第三者が日々フォローすることである。残念ながら、これまでのインターンシップがうまくいかないとすれば、これをせずに、企業に丸投げしたまま、学生や生徒は、誰にも相談できず、解説も受けず、過ごさねばならないからだ。

私は、これをDMOの役割だと思っている。私自身は、自分の学生に対しては自分でフォローしているが、それは観光を学ぶ学生がいかに観光地の社会に馴染んでいくかを研究する立場だからだ。特にインターンシップを専門領域としない先生方にそこまで求めるのは酷だ。また、企業サイドも業務指導はするが、フォローするまでの手数がかけられないと思うし、当事者なので、学生もホンネをいいにくい。そこで第三者が、スマホでやり取りする日報アプリを使い、学生のモチベーションを維持していく。

山あり谷ありのモチベーションでも、最後にピークにもっていくことを目標にする。そのために、イベントを企画したり、食事に連れ出したりする。厳しい社会環境で山あり谷ありを過ごすことで、スポーツで鍛えられたと同じような若者ができる。(中略)そして、最後に「乗り越えた」という経験を共有し、モチベーションの高い状態で終わってもらう。そうすると、その地域に気持ちが残る。これが大切だ。次に、経験者のコミュニティを作り、同窓会なども定期的に企画する。

こうして人材不足に悩む地域と産業界が主導すれば、若者が育つと思う。長い目で、将来の人材プールを作っておくことが今大切なのだ。

ただし、課題はある。特に、地方の旅館業で1カ月以上働いた経験のある学生たちは、いったん就職すると、根性がついているのでなかなか入社した企業を辞めてくれないのだ。嫌になって、統計どおり3年で30%が退職して、地域に戻ってきて欲しいのだが、もう少し先の期待に取っておくことにしたい。
 


井門隆夫(2019)「観光イノベーションで地域を元気に 第29回」『センター月報』2019年9月号

感想

インターンシップを通じて、いわゆる「関係人口」を増やしていくことが観光地には必要ということだと捉えました。

なお、観光地におけるインターンシップのより具体的な受入方法については、以前の井門先生の投稿「インターンシップを地域活性化に活かす方法とは?」が参考になると思われます。