「産業観光」で地域のブランド化をめざせ

 

新潟経済社会リサーチセンターの尾島です。

近年、「産業観光」に注目が集まっています。そこで、「産業観光」の種類と県内の動向についてまとめてみました。

 

産業観光とは

産業観光とは、「歴史的・文化的価値のある産業文化財(産業遺産)」を訪問する場合と「生産現場(工場・工房・農漁場)の見学や作業体験などを観光資源とする新しい観光形態があります。

前者には佐渡の金銀山や、2014年に登録された「富岡製糸場と絹産業遺産群」などが代表的な事例となります。そして後者には、職人が製品を作る匠の技を来場者に公開し、酒蔵の見学や実際に体験する焼きものづくり、小物製品の色づけ、企業設備や所蔵資料の見学・体験などがあります。来訪者は企業・産業の由来や地域文化について、実際に触れて体感したうえで、製品を購入できます。新しい「産業観光」は県内でも取り組まれています(図表1 )。

 

産業観光

 

ものづくりのゆかりの土地に来て、その土地で培われてきたものづくりの技を実際に目にし、その企業への理解を深めたうえで製品購入にいたる。そのようにして手に入れたものは貴重な思い出の品となると思われます。産業観光の最大の特徴は、地域にある産業そのものを観光資源とすることで地域の人々のくらしに密着している点にあります。

このため、情報の発信源はこれまでのように東京などの大都市にある出版社や旅行代理店ではなく、観光の着地側からの提案・情報発信となります。昔から地域の生業(なりわい)として成立してきた仕事の場がそのまま観光資源となる地域密着型の「観光」として、産業観光で地域のブランド化をめざす動きには地方で叢生する新たな事業のいぶきが感じられます。

 

燕三条工場(こうば)の祭典

次に、利器工匠具やハウスウェアなど金属加工製品の企業が集積し、金属加工の街として知名度の高い燕市・三条市の両市で2013年から取り組まれている産業観光の事例を紹介します。

 


第4回(2016年)燕三条工場(こうば)の祭典

参加企業数:96団体(農家含む)

来街者数:35,143人


 

4回の開催を重ね事業運営に確かな手応え

「燕三条工場(こうば)の祭典」は、両市内の製造業を中心とした事業者が自社工場の現場を来訪者に自由に見学してもらうオープンファクトリーの試みとして実施されており、今年で5 回目を迎えます。昨年は、参加事業所数が初回の54団体から96団体(農家含む)にまで増えました。また来場者数も初回の10,708人から35,143人にまで増加し、昨年の祭典実行委員長だった山田立氏は参加企業の盛り上がりをみて確かな手応えを感じたといいます。以下は山田氏にお聞かせいただいた内容の一部をお伝えいたします。

 

開催効果について

土日は一般のお客様が多く、4割が県外客、6割が県内客で、全体の3割が燕三条地域からの来訪となっています。昨年は、来場者数が増えたばかりでなく、会場での製品売上額が2,700万円と過去最高額を記録しました。

また、首都圏からのバイヤーの来場によって新たな販路開拓に繋がりました。雇用面では、工場の祭典への来場をきっかけに学生や他地域からの転職者による2桁もの採用実績がありました。

さらに、工場にきた大勢の見学者を前に実演し解説する職人をみた地元の子どもは工場の暗いイメージが払拭されて職業観の醸成にも役立ったという報告も受けています。

一方、受け入れ側としては、外部の人達に作業現場をみられることで散らかしておけない、手際の良さが磨かれるなど、目にみえない水面下での潜在力が培われてきたと感じています。当地でつくる金物製品の手間をかけた高付加価値の部分を実際に製作現場でみてもらうことによって体感していただく。そして製品を通して燕三条にこられたお客様一人ひとりが生きたメディアとなって燕三条のものづくりと製品の話を伝えてくれることが期待できます。

燕三条地域といえば、包丁・鍋・釜・カトラリー、茶器、お箸、鍬・鋤などの農機具など食に関わる製品も多いです。このため工場に限らずその延長線上にある「食」を生み出す農作業場や製品を販売するショップを含む異業種をも取り込んだより地域全体のブランド化を目指す方向にあります。

主なオープンファクトリーの取り組みは全国約20カ所で開催されており、燕三条で実施する工場の祭典は決して早い取り組みとはいえません。しかし、これほど多くの業種で広域にわたり開催されているところは他になく、当祭典の大きな特徴となっています。

 

産業観光で地域の活性化を目指して

工場の祭典では、事前予約の団体バスできて、大勢で特定の大工場を見学するというツアー形式はとっていません。当地域では、訪問予約は必要ない。家族や数人の仲間で開催期間中に、当地域の町なかに点在する工場の作業場やハウス・畑などのフィールドを自由に見学し、製品にも接してもらいます。現在は、祭典終了後も通年事業として、17事業所でオープンファクトリーの取り組みが実施されています。

今後は世界中から観光客が燕三条にきて、製品作りから完成までの工程を見学し、納得して製品を購入してくれるようなものづくりの街を目指していきたいと思っています。

今年も第5回目の工場の祭典(10月5日(木)〜8日(日)開催予定)には100あまりの事業所が参加予定です。

 

=

 

『センター月報』2017年4月号の「地方叢生の視点」を加除修正いたしました。