インバウンドは間もなく減少する?

 

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

私どもの機関誌「センター月報」では、毎月、井門観光研究所の井門隆夫先生より、地域活性化や観光振興などに役立つヒントやアイデアなどをご紹介いただいております。

今月の「センター月報7月号」では、訪日外国人旅行の先行きについて、辛めのデータを用いてご説明いただきました。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。

 

インバウンドの今後

 

一枚の預言書

 

毎月1 回、本州中部の温泉地で次世代を担う若い経営者たちで勉強会を開催している。この町は星が美しく、現在は多くの来訪者があり、旅館もそこそこの稼働率を維持している。しかし、いつまでもこの賑わいは続かない。そう思ったまちづくり会社のリーダーが勉強会を主宰した。

勉強会は一風変わっていて、「インバウンドは間もなく減少する」「マイカー客は徐々に消滅する」「人口は都市に一層集中していく」といった予言に基づき行われている。現在を起点に将来を見通す「フォーキャスティング」に対して、このようなやり方を、未来を起点に現在何をすべきか考える「バックキャスティング」と呼ぶ。このような発想ができると、相当の危機感が芽生えると同時に、腑に落ちたように今何をすべきかを共有できるのだ。

(中略)

そのため、この勉強会ではインバウンドの話題は(外国人のための環境整備は粛々と進めながらも)脇に置いておく。それよりも優先して行うべきことがあるためだ。今、地方観光地が取り組むべき最も大切なことは「(これまでにない)内需の創造」だ。

(中略)

ここに一枚のグラフがある。このグラフが未来の予言書にあたる。国連の人口データに基づき、世界主要国の「生産年齢人口」の比率を1950年から2050年までの100年にわたり表したものだ。

 

世界の生産年齢人口

 

 

日本は、赤い折れ線で示してある。Aと示した年から急激に落ち込んでいるが、Aとは実際に日本の生産年齢人口が減少をし始めた1997(平成9 )年にあたる。

AとBの間をみて欲しい。Bはほぼ現在にあたり、この間はちょうど20年。この間が「失われた20年」と呼ばれた期間だ。この間、日本だけが生産年齢人口を減らしている。日本は1960(昭和35)年から10年間、世界のトップを走った時期があった。ここが「高度経済成長期」である。その後、トップのバトンは(バブル期に日本に戻る時もあったが)ロシア、韓国を経て中国に渡った。2010(平成22)年以後急伸した日本のインバウンド需要は、AとBとの間に生産年齢人口が伸びた中国や東南アジアといった国々の経済成長の恩恵である。

問題はB以後、すなわちこれからである。Bは、棒グラフで示した「地球上全ての国の生産年齢人口」のピークにもあたる。これから、欧州、米国、中国、ロシア、韓国等の主要なすべての国の生産年齢人口が減少していく。すなわち、これからは多くの国々が過去に日本が味わった「失われた20年」を同じように味わうことになる。

失われた20年の間に日本に起きたことは「実質賃金の低下」、「海外旅行者(出国者)の頭打ち」、「国内宿泊旅行実施率の低下」などである。もしこうしたことが他国でも起きると仮定すれば、インバウンドが今後も急伸し続けることを合理的に証明することは難しい。

GDPとは、生産年齢人口と労働生産性の積と考えれば、今後世界中が労働生産性を高めていかない限り、経済成長は止まる。

(中略)

21世紀は人類にとって労働生産性向上の世紀であり、全ての人々が生産に関わり、一人当りの生み出す付加価値を最大にしていくことが求められ続ける。幸いにして、生産年齢人口の減少とは関係なく伸び続けている企業の内部留保は充分にある。企業の知恵と勇気こそが未来に向けたエンジンだ。そう考えた時、経済や社会がどのように変化するかを予測し、地方にとって何を行うべきかを考えていくことが今後の地方創生につながってくる。

 

井門隆夫(2017)「観光イノベーションで地域を元気に 第4回」『センター月報』2017年7月号

 

感想

今後、どのような時代が訪れるのかは不透明ですが、流行や雰囲気に惑わされることなく、常に危機意識を持ちながら準備・行動していくことが大切なのだと実感いたしました。