インバウンド(訪日外国人旅行)政策のアキレス腱

 

こんにちは。新潟経済社会リサーチセンターの江口です。

訪日外国人旅行者の増加などから、首都圏のホテルを中心に客室不足が深刻化している、といったニュースを見聞きする機会が増えました。

今回、私どもの機関誌「センター月報10月号」では、客室不足の解消を目指した今後の観光政策について提案しています。執筆は毎月、連載をお願いしている井門観光研究所の井門隆夫先生です。

井門隆夫先生201510

 

業態細分化の必要性

井門先生は、ホテル不足の解消には旅館業の協力が不可欠とした上で、旅館業特有の問題にも配慮する必要があると指摘しています。

 

インバウンドを今後増やしていくためには、宿泊先の確保と、空港の発着枠数の拡大が潜在的な問題とされている。

(中略)

政府目標の訪日外国人3千万人を達成するためには、ホテルの残室数だけでは足りないのだ。そのためには、旅館業の協力が不可欠となってくる。しかし、そのなかには、客室稼働率を高めるより生活ペースを守りたいという宿も入ってくる。そこをどうしていくかという課題が現在の観光政策の陰に隠れている。

(中略)

地域経済の発展か、生活ペースの維持か。いずれも重要には違いがない。しかし、そうした旅館を同じ土俵のうえで「旅館」とカテゴライズしていること自体に無理が生じているのではないか。むしろ、稼働率を高めたい旅館群とそうではない旅館群は別カテゴリーで扱ったほうが双方にとってメリットがあるように思う。

以前、訪日外国人誘致のために、積極的な旅館に対する「政府登録」制度があった。このときは、部屋にバス・トイレがあるとか、一定の客室数や広さがある等、施設面での条件で決められていたが、今後は「客室稼働率を高めることが可能である」「外国人を受入れるためのソフト充実を目指す」など、ソフト面での条件を表記してみてはどうか。以前は、固定資産税の一部減免措置があったが、今回は、雇用面での優遇措置(例えば、外国人就労者の入国手続きの軽減など)を施してはどうか。

井門隆夫(2015)「地域観光事業のススメ方第66回」『センター月報』2015年10月号

 

読み終えて

本文中に井門先生が触れられている通り、観光庁「宿泊旅行統計調査」(平成26年年間値)によると、新潟県の旅館客室稼働率は23.6%となり、全国47位となりました。

ただし、全ての旅館の客室稼働率が低いわけではありません。夏休み、大地の芸術祭、シルバーウィークなどが続いた8~9月の客室稼働率が好調に推移した旅館も数多くあります。

したがって業界内の格差が広がる中、従来の広く万遍なく支援するという観光政策から、カテゴリーを分けて政策を考えていく時期にきているのかもしれません。