旅館業法の改正による地域への影響

 

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

私どもの機関誌「センター月報」では、毎月、井門観光研究所の井門隆夫先生より、地域活性化や観光振興などに役立つヒントやアイデアなどをご紹介いただいております。

今月の「センター月報8月号」では、旅館業法の改正による地域への影響についてご説明いただきました。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。

 

旅館業法の改正と地域活性化

 

旅館革命を導く業法改正─分散型ホテルで地域は滞在型に─

 

1.アルベルゴ・ディフーゾ

2018年6月15日、住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行され、民泊が正式に合法化されたニュースばかりが注目を浴びているが、同日に施行された改正旅館業法にこそ、地域にとって今後重要になってくる要素が秘められている。今回の旅館業法改正は、とりわけ、通過型観光地と揶揄されたり、観光資源は何もないと思われていたりするような地域にとって、滞在型観光地へと転換できるほど影響のある改正になった。

今回の改正で重要な点は2つある。1つ目は「最低室数の撤廃」である。これまでは旅館は5室、ホテルは10室と客室数の規定があったがそれがなくなり、1室の建物でも旅館・ホテルとして許可を受けられるようになった。2つ目は「フロント(帳場)」がなくてもよくなったことだ。また、3月には建築基準法も改正となり、こちらでは、建物の用途変更に関して建築確認申請を省略できる基準が100㎡以下から200㎡以下へと多少緩和された。

これらの要素で何が可能となるのかといえば、複数の古民家や空き家を活用した「分散型ホテル(まちぐるみ旅館)」が1軒の旅館・ホテルとして認められるようになる。

分散型ホテルとして世界的に知られているのが、イタリアで1980年代に始まり、欧州全体へと広がりを見せている「アルベルゴ・ディフーゾ」(イタリア語で分散型ホテルの意)だ。1976年に北イタリアで発生して大きな被害をもたらした地震復興の一環として、空き家となった複数の伝統的家屋を客室とし、周辺のレストランや商店など集落全体をホテルと見立てたのがその始まりである。もともとは、宿泊施設もなかったような村ばかりだが、地元の人には当たり前でも観光客にとっては美しい景観のなかで暮らすように滞在できることから一躍観光客に脚光を浴びるようになり、今ではイタリア国内だけでも100を超えるエリアで誕生している。

日本でも、2000年代後半に同様の動きが生まれてくるようになる。

(中略)

これらの一連の動きの背景には、これまで1~4室しかない古民家は「旅館・ホテル」営業として許可されず、多人数が相部屋で宿泊する「簡易宿所」としてしか登録されなかったという事情がある。その場合、例えば3棟あれば、1棟ずつ登録をしなくてはならなかった。こうなると、自社で販売するのであれば問題はないのだが、宿泊予約サイトや旅行会社で販売するためには契約が煩雑となり簡単ではなかったのである。そのため、販路が限られていた。

それが、町に客室が分散していても、事務所から10分程度で駆けつけることができれば、今後は1軒の旅館・ホテルとして認められるようになる。これは、もう「旅館革命」と言っても過言ではない。

(中略)

いずれのホテルも所有と運営を分離しているのが特徴だ。不動産を持つオーナーとプロの運営会社が組むのは分散型ホテルにおいては必然だろう。

(中略)

今年開業する分散型ホテルは、概ね旅館業法の改正の内容を事前に熟知していた方々が開業に結びつけたと思われるが、来年度以後は、こうした動きにならい、異業種や自治体もからんで多くの分散型ホテルができるであろう。

外国人旅行者を今後日本の地方へと分散させることが政策課題となっているが、分散型ホテルへの宿泊と滞在がその目的となり、地方活性化に向けた大きなきっかけを作るような気がしている。

 

井門隆夫(2018)「観光イノベーションで地域を元気に 第17回」『センター月報』2018年8月号

 

 

感想

以前にもご紹介した「アルベルゴ・ディフーゾ」ですが、旅館業法の改正により日本でも取り組みやすくなったようです。

こうした法改正を他人事と聞き流すのではなく、チャンスと捉えた上で、地域で新たに何ができるのか?の議論を進めてみるのも良いと思われます。