ポスト平成時代の観光とは?

 

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

私どもの機関誌「センター月報」では、毎月、井門観光研究所の井門隆夫先生より、地域活性化や観光振興などに役立つヒントやアイデアをご紹介いただいております。

今月の「センター月報3月号」では、ポスト平成時代の観光についてご紹介していただきました。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。

 

ポスト平成時代

 

ポスト平成時代へ~日常と融合する観光

 

毎年、総務省では地域おこし協力隊の起業・事業化研修を実施しているが、今年度も観光で起業したいという200人が研修に集まった。なかには、もう少し社会人基礎力を高めたほうがよいと思われる隊員がいるのも事実だが、周りを巻き込み、リードしていく力をいかんなく発揮している隊員も少なくなく、とりわけ女性が目立つ。彼女たちの多くは地域のソーシャルビジネス(泊まれる絵本の図書館、地域の再生をめざすシェアハウス等)の起業を目指している。

一方、老舗温泉地での研修会で、長年旅館を支えてきた女将から質問を受けた。「一泊二食や中抜け勤務は旅館の伝統。なぜ、大規模旅館でも泊食分離をする必要があるのか」と。

食事を外でも食べられるようにする泊食分離は地域あっての取り組み。自館ですべて完結できる旅館なら、する必要はない。大規模旅館でも調理師不足から食事提供が十分にできずに素泊まり客を取る旅館もある。調理師も、仲居も十分にいて、何不自由なく働け、収益も上がっているのであれば、何も変える必要はない。もし、そうでないとしたら、もう一度時代を俯瞰してみることも勧めたい。時代ごとのやり方を取ってこそ老舗として事業を継続していくことができる。

うまくマッチングさえできれば、ソーシャルビジネスを目指す女性たちが、資金を貯め、そのビジネスを軌道に乗せるまでインキュベーションセンターとして旅館で雇用し、3年間程度、夢を共有して老舗旅館が若者を育てていくというアイデアは不可能なものだろうか。

ただし、例外もある。これからの日本は家族の形が変わり「孤族」も増えていく。様々な事情で社会的弱者となった女性が安心して雇用される場として、地域に一軒くらいは社会のセーフティネットとしての旅館業があってもいい。

 

4.非日常から日常へ

ポスト平成時代には、働き方が大きく変わるだろう。同時に、住宅と教育のあり方も変わる。若いうちは多拠点居住や企業の転職があたりまえになっていく。その際に住むのは賃貸住宅で、一時的に居住するシェアハウスも各地に増えていく。

旅館などの宿泊業では、大学等の学校と連携して、社会人基礎力を高めるための場としてインターンシップ生が働くようになる。中には大学生が経営する宿も各地で誕生する。

結婚して家族が増え、子供が小中学生のうちは地方での勤務や創業経営が続くが、子供が巣立つようになる頃、転職したり経営を後進に任せたりするようになり、中核都市や都会へと移り住む。そして時々、若い頃に住んだ地域へと戻り、二地域居住するようになる。住宅ローンの呪縛から解放されると、そんな全国をまたにかける人生を歩むことができ、そうした日常の移動も「観光」の一部として認識されるようになる。観光先進国の欧州や豪州では今でもそうした観光が主流で、VFR(Visiting Friends and Relatives:友人訪問旅行)と呼ばれている。

また子供の学校も重要な家族問題としてクローズアップされる。残念ながら平成の終わりに広がった格差は子供の教育に影響を来すようになり、通常の公立学校ではなく、通信制の学校や地方の山村留学が注目され、教育レベルも上がっていく時代になる。子供について親もその地に住み、働くようになる。つまり、学校のあり方が地方創生の大きなカギを握るようになるだろう。

ポスト平成時代の観光は、非日常から日常の活動へと変わり、生活と融合していくだろう。今、そのときが近づいている。

 

 

井門隆夫(2019)「観光イノベーションで地域を元気に 第24回」『センター月報』2019年3月号

 

 

感想

働き方が変われば、住宅や教育に対する考え方・行動が変わっていき、当然ながら、観光のスタイルも変わっていくということなのでしょう。

私などは「同じ会社に勤務し、住宅ローンを借りて家を購入する」という典型的な生き方をしているからこそ、井門先生がおっしゃるような変化には疎くなりがちなので、注意したいと思いました。