市場跡が魅力的な商店街に生まれ変わった! 沼垂テラス商店街 誕生の道のり・1

 

新潟経済社会リサーチセンターの佐藤です。

JR新潟駅から車で5分ほどの所に沼垂(ぬったり)市場跡があります。ここ数年、市場で使われていた長屋式の建物に若者が次々に入居し、寂れた一帯が魅力的な商店街に生まれ変わりつつあります。

街なかの商店街が衰退する話はよく聞きますが、商店街が育つ話はなかなか聞けません。中心となって商店街(以下沼垂テラス商店街)の復活・発展に取り組んでこられた株式会社テラスオフィスの高岡はつえ専務に、取り組みのきっかけや復活までの道のりをお聞きしましたので、2回にわたってご紹介します。

▲工場の煙突を背景にした特徴的な眺め (写真提供 テラスオフィス社 以下同じ)

▲工場の煙突を背景にした特徴的な眺め (写真提供テラスオフィス社 以下同じ)

 

沼垂地区の変遷と商店街の復活

信濃川の河口にほど近い沼垂地区は、江戸時代には北前船が寄港するなど、古くから栄えた湊町でした。1897年(明治30年)には北越鉄道(現信越本線)の沼垂駅が開業したことからも、当時の湊の賑わいが想像できます。さらに昭和初期に新潟港の本格的な築港工事が行われると、臨海地域に製紙、紡績、精油、化学、鉄工などの工業が発展しました。人口も増えて沼垂及び近隣地区は大いに栄えました。(出典 新潟シティガイドHP )

▲昭和34年(1959年)頃 沼垂市場の賑わいの賑わい

▲昭和34年(1959年)頃 沼垂市場

沼垂市場は、一帯の堀を埋め立てて建設されました。近隣に大きな工場がいくつもあったため人通りも多く、市場はたいへんな賑わいでした。しかしその後は工場の移転が続き、住宅地も郊外に移って街なかの人口が減り、市場は徐々に寂れていきました。

商店街の復活は、沼垂市場通りに店を構える老舗割烹の二代目田村寛さん(注)の行動がきっかけとなりました。当地で生まれ育った田村社長は、寂れた地元に活気を取り戻したいと考えていました。2010年、シャッター通りと化していた市場跡の長屋式建物の一角に、佐渡生乳ソフトクリームと手作り惣菜を扱うデリショップを開くとともに、出店を希望する仲間探しを始めました。口コミ情報のおかげもあり、田村社長がデリショップを始めた翌年の11年、手作り家具やオリジナルの染織布で作った小物を扱う店が出店し、さらに12年には陶芸工房が出店するなど、市場跡のレトロな雰囲気に魅力を感じる若者たちによる出店が続きました。

(注) 田村寛さん 株式会社テラスオフィス社長(以下田村社長)。高岡専務とは姉弟。

市場跡の長屋式建物を利用した若者の動きをメディアが取り上げ、出店に関する問い合わせも徐々に増えていきましたが、ここで問題が生じました。土地建物を所有する市場協同組合の規定で、市場関係者以外の入居割合に制限が設けられており、これ以上は外部者の入居ができない状況となったのです。田村社長と組合が交渉を重ねていくなかで、組合側から土地建物を買わないかと打診がありました。建物は老朽化しているとはいえ、市場跡の土地建物を丸抱えするには多額の資金が必要となります。さらに買い取った後はデリショップ1店だけでなく、テナントを探して市場跡全体の運営を行うことになるわけです。

なんとかこの地に賑わいを取り戻したいという思いもあり、田村社長と高岡専務は連日の検討を行いました。事業プランとともに収支や資金繰りなどの計画を作成して地元の銀行と交渉を行い、ついに融資了解を取り付けるに至りました。14年3月、商店街の企画運営や店舗管理を行う会社として株式会社テラスオフィス(以下テラスオフィス)を設立し、市場跡の土地建物を丸ごと買い取ったのです。

テラスオフィスが単独で市場跡の土地建物を所有したことは、商店街復活の大きなポイントであったと思われます。どのような商店街を目指すか、どのようなテナントを誘致するかなどを検討する際、商店街を構成する者の意見がまとまるのに時間を要するのが常です。しかし沼垂テラス商店街においてはテラスオフィス単独で決めることができるわけです。高岡専務は「すべての判断が正しかったわけではないが、意思決定にスピード感があったのは間違いない」としています。

本件のように運営会社が単独で商店街全体の土地建物を所有することは珍しいのですが、他県においては、商店街の運営をスムーズに行う仕組みとして、店舗の所有権と使用権を分けた事例があります。空き店舗の所有者には家賃のみを支払い、テナント誘致などの企画運営は商店街の運営組織に任せる考え方です。最近では空き店舗の所有者が遠方に居住し、商店街で企画運営などを話し合うさいに支障が生じることもあると聞きます。沼垂テラス商店街の事例からも、商店街の円滑な運営には企画案などを迅速に決定する何らかの仕組みが必要だと感じます。(次回に続く)

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『センター月報』2016年10月号の「潮流 県内最新トピックス 第7回」を加除修正いたしました。