アルベルゴ・ディフーゾとは?空き家・空き店舗・観光活性化の取組方法

 

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

年末にある温泉地に訪問した際、「いよいよ当温泉地周辺でも、人口減少や空き家増加が目立ってきました」との話がありました。また、その対策の一つとして、イタリアの「アルベルゴ・ディフーゾ」の事例が話題にのぼり、日本での可能性について議論を交わしました。

そこで、本日は、空き家・空き店舗・観光活性化の参考になればと思い、「アルベルゴ・ディフーゾ」についてご紹介いたします。

 

空き家対策

 

アルベルゴ ・ ディフーゾとは

アルベルゴ ・ ディフーゾとは、イタリアで生まれた地域活性化の取組方法です。いわば、地域の空き家や空き店舗などをリノベーションし、それらがまとまって、一つのホテルを擬似的に運営するやり方――宿泊システム――のことを指します。

一般財団法人 北海道東北地域経済総合研究所『ほくとう総研情報誌 NETT』に掲載されている山崎雅生氏の「海外調査研究」によると、以下のとおり具体的に説明されています。

 

空き家 ・ 空き店舗を活用し、観光客を呼び込み、地域を活性化させようして始まった宿泊形態が「アルベルゴ ・ ディフーゾ」である。イタリア語で、アルベルゴとはホテル、ディフーゾとは分散 ・ 拡散を意味する。直訳すれば「分散したホテル」となる。

一般的なホテルが、1カ所の施設でサービスを提供するのに対し、アルベルゴ・ディフーゾは、集落内の複数の建物を利用する。集落の中心部に受付を設け、そこから一定の範囲内の空き家 ・ 空き部屋、空き店舗等を宿泊部屋やホテルの施設として活用する。

 

山崎雅生「イタリア発の新たな形態のホテル「アルベルゴ・ディフーゾ」~その概要と北海道での導入について~」『ほくとう総研情報誌 NETT』No.88,2015 Spring,p.35,一般財団法人 北海道東北地域経済総合研究所  http://www.nett.or.jp/nett/pdf/nett88.pdf

上記のように、アルベルゴ ・ ディフーゾとして地域の人たちが協力し合い、上手く運営できれば、地域全体の再生につながるようです。実際、アルベルゴ ・ ディフーゾに取り組む地域は増えているようです。

 

アルベルゴ ・ ディフーゾ協会公認のものだけでもイタリア国内で84カ所にもなる。さらに、この新たな形態のホテルはイタリア国内にとどまらず、スイス、クロアチアなど欧州各地にも広がりを見せている。

 

山崎雅生「イタリア発の新たな形態のホテル「アルベルゴ・ディフーゾ」~その概要と北海道での導入について~」『ほくとう総研情報誌 NETT』No.88,2015 Spring,p.35,一般財団法人 北海道東北地域経済総合研究所  http://www.nett.or.jp/nett/pdf/nett88.pdf

なお、山崎雅生氏の上記レポートは、アルベルゴ・ディフーゾについてコンパクトにまとまっており、とても読みやすい内容となっています。

 

アルベルゴ ・ ディフーゾの特徴

それでは、従来のホテルに滞在する旅行とは、どう違うのでしょうか。

アルベルゴ ・ ディフーゾで過ごす魅力については、島村菜津氏著(2013年)『スローシティ 世界の均質化と闘うイタリアの小さな町』(光文社新書)で、以下のように詳しく説明されています。

 

アルベルゴ・ディフーゾでは、その土地だけの文化が味わえる。(中略)広場や商店やレストランがあり、旅人は、そのコミュニティの一員として迎えられるわけです。

 

島村菜津(2013年)『スローシティ 世界の均質化と闘うイタリアの小さな町』(光文社新書)

 

アルベルゴ・ディフーゾの魅力が、その地域全体を味わうことにある以上、おいしい店があったり、そこでしか変えないものがあったり、独特の祭りや劇場が機能していたり、自然や歴史に通じたローカルガイドがいたり、若者に新しい雇用を生み出したりする

 

島村菜津(2013年)『スローシテ 世界の均質化と闘うイタリアの小さな町』(光文社新書)

つまり、観光施設を見学するような通常の旅行とは異なり、その土地の人たちとの交流や会話を通して、街全体の営みを体感できる点が旅行者には魅力となっているようです。

一方、アルベルゴ・ディフーゾに取り組んでいる人たちは、どのような方々なのでしょうか。

 

経営は、あくまでも個人です。一番多いのは、自分の住む古い伝統家屋を修復したいが、その資金繰りに困っている人たちです。そこで、これを旅人に貸すことで、その費用を捻出しようというわけです。次に多いのは、祖父や叔母が暮らしていた空き家を所有することになり、足を運んでみたら村をたいそう気に入った。いずれはそこで暮らしたいという人たちです。経営は、個人のこともあれば、若者のグループの場合もあります。村に惚れ込んだ外国人もいます。

 

島村菜津氏著(2013年)『スローシティ 世界の均質化と闘うイタリアの小さな町』(光文社新書)

地元の方々だけかと思えば、そうでもないようです。その地域と何からのつながりがある人々――いわゆる、関係人口¹――も関わっているみたいです。

このような取り組みをみると、旅行先については、豪華さや派手さ、華やかさよりも、心地良さや、落ち着きやすさを求めている人が多くなっている気がします。これはイタリアだけではなく、日本を含めた全世界的なトレンドの一つとみることもできるでしょう。

なお、今回、ご紹介した書籍「スローシティ 世界の均質化と闘うイタリアの小さな町」は従来までの観光地とは異なるアプローチをしているイタリアの様々な地域が事例として取り上げられています。徐々に元気を失っていく地域に住んでいると漠然とした不安に襲われる時があるので、そうした閉塞感を打ち破りたいと感じた際には、発想の転換、考え方のヒントになる良書だと思います。

 

まとめ

アルベルゴ ・ ディフーゾを日本で展開するには法的な問題が絡むほか、地域住民の方々の理解や、空き家を所有する人の協力なども必要であり、すぐに実現できるとは思いません。例えば、空き家所有者の協力に限っても、リニューアルする空き家(宿泊施設)のデザインの統一性や、運営上のルール構築など、詰めなければならない項目は数多いです。

しかし、日本でも民泊の規制緩和がおこなわれるなど、その実現性は以前よりも高まっていると思われます。

したがって、将来の空き家増加を見据える中で、取り得る対策の一つとしてアルベルゴ ・ ディフーゾの勉強や議論を始めても良いのではないでしょうか。私自身も、もう少し、アルベルゴ ・ ディフーゾについて調べてみたいと思っています。

 

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¹ 「新しい東北」官民連携推進協議会のプレスリリース(2017年11月1日)「関係人口を考えよう!~関係人口が生み出す新たな地域のかたち~」<http://www.newtohoku.org/servlet/servlet.FileDownload?file=00P5F00000pMpX7> (2018年1月10日アクセス)によると、関係人口とは「観光以上、定住未満の関わり方で、特定の地域に関わり続ける層」とされています。