秋葉区、産学官連携でまちなか活性化にチャレンジ(後編)

 

新潟経済社会リサーチセンターの佐藤です。

新潟市秋葉区役所、新潟薬科大学、新津商工会議所(以下「区役所」、「大学」、「商工会議所」)を中心に取り組まれている、産学官連携によるまちなか活性化活動についてご紹介するシリーズの後編をお伝えいたします。前編はこちらをご覧下さい。

本日は、15年度の連携活動の実績をご紹介いたします。

 

学生ランチマップの作成(まちなか部会)

まちなかで活動し、地域とコミュニケーションをとるには、学生も積極的にまちに出ていく必要があるとの大学方針により、新キャンパスには学生食堂が設置されないことが決まりました。

そこで、学生たちが新キャンパス周辺の飲食店マップを作成することになるのですが、このマップ、単に飲食店を紹介するだけのものではありません。学生の活動に賛同する飲食店20店と意見交換や検討を行いながら、学生ランチマップの作成は6カ月をかけて次のように進められました。

15年7月

飲食店7店と学生による、学生ランチについての検討会を開催。ランチメニューについての学生の要望など、率直な意見が出されました。

 

15年7月 飲食店と学生による検討会の様子 (写真提供 秋葉区)

▲15年7月 飲食店と学生による検討会の様子 (写真提供 新潟市秋葉区)

15年10月

モデル店において、学生と店主が繰り返し意見交換を重ね、学生向けメニューの開発に取り組みました。学生の要望と店主のプロ意識がぶつかる真剣な協議となることもありました。

15年10~11月

モデル店での経験を生かし、学生グループが他の飲食店を訪問。各店で意見交換を行いながら学生向けメニューの開発が行われました。

15年12月

各店におけるメニュー開発の成果などをもとに、学生ランチマップの編集を始めました。まちなか活性化実行委員会が依頼したデザイナーの指導もあり、作業は順調に進みました。

16年3月

学生ランチマップ完成!学生の意見を反映して開発された各店自慢のランチ情報のほか、学生へのメッセージを添えた店主の写真なども掲載されました。

16年4月からマップに掲載された20店で新メニューの提供が始まりました。店主と意見交換を重ね、自分たちも開発に加わったランチは格別の味がすると思われます。大学も100円補助券を発行して、学生がまちなかへ出かけてマップ掲載店を利用するのを後押ししています。マップに掲載された飲食店が大いに賑わうことを期待したいものです。

 

学生ランチマップに掲載されている店主さん (資料:写真提供 新潟市秋葉区)

▲学生ランチマップに掲載されている店主さん (資料:写真提供 新潟市秋葉区)

 

薬学部の学生による健康セミナー開催(健康部会)

区民の健康の維持・向上を目指し、薬学部の学生も、学外での活動に積極的に取り組んでいます。学生が秋葉区内のコミュニティ協議会や自治会・町内会などを訪問し、糖尿病、高血圧、熱中症などのテーマでセミナーを開催するものです。

 

手作りパネルを交えた発表風景 (写真提供 新潟市秋葉区)

▲手作りパネルを交えた発表風景 (写真提供 新潟市秋葉区)

 

学外の聴講者の前であやふやなことは言えないと、資料作成やプレゼンの練習は何週間もかけて熱心に行われます。プレゼンがスムーズにいかないこともあり、引率の先生はハラハラするものの、ご高齢者が多い聴講者の方々はあたたかく見守ってくれるそうです。健康をテーマとした関心あるセミナーであることに加え、孫と同じ年代の学生が一生懸命に発表する様子を楽しんでいるのでしょう。

質疑応答では、学生が即答できない質問も飛び出します。持ち帰って調べ、後日回答となるのですが、持ち帰った課題の勉強は学生の気合の入り方が違います。セミナーを担当した学生は、生き生きとして医療人としての自覚を持つようになるとのことであり、地域の聴講者の方々は意識せずに学生の成長に一役買っているようです。

このように活動2年目にして続々と実績が生まれている背景には、学生の意欲的な活動はもちろんですが、区役所、大学、商工会議所による周到な準備もあるようです。

大学から学生の活動についての相談を受けると、商工会議所は関連する業種の会員に趣旨説明を行い、学生の調査活動に賛同してくれる会員を募ります。同様に、健康セミナー開催の場合は、区役所職員が自治会・町内会などを訪問して趣旨説明を行い、大学・学生によるセミナー開催への理解・協力をお願いします。

これらの事前活動のおかげで、学生たちは商店や自治会・町内会などに歓迎ムードで迎えられ、スムーズに活動を進めることができます。このような大学と区役所、商工会議所の抜群の連携も秋葉区の産学官連携活動が順調に進んでいるポイントでしょう。

さて、商工会議所の担当者によると、まちなか活性化実行委員会では、今後、以下の取り組みを考えているとのことです。

  • 大学内にまちのイベント情報などを伝える掲示板を設け、学生のまちなかへの回遊を促す。
  • 学生ランチマップ活動において、各食堂に関する学生の意見を集約のうえ、入り込み数が低迷している店に学生の意見などを伝える。
  •  商店街のアーケード内放送を学生にも担当させたい。

将来の考えとして、「新津地区には全国の鉄道ファンが集う鉄道資料館があります。『鉄道のまち新津』のPR活動に学生にも参画してもらいたい」などの夢も聞かせてもらいました。

 

まとめ

各地で取り組まれている産学官の連携活動は、企業が研究費を負担して行う共同研究は別として、永続きしないもの、あるいは休眠状態のものも多いです。

これに対し秋葉区の連携活動においては、活動実績を着実に積み上げながら、区役所、大学、商工会議所の連携ノウハウがどんどん磨かれているようです。大学では「学生はまちなかへ。住民はキャンパスへ」を合い言葉にし、大学・学生と商店街・住民との関係づくりを大切にしています。

この活動が継続し、新津駅、新キャンパス、周辺商店街を中心とする新津のまちなかが大いに賑わうことを期待したいと思います。

 

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『センター月報』2016年8月号の「潮流 県内最新トピックス 第5回」を加除修正いたしました。