秋葉区、産学官連携でまちなか活性化にチャレンジ(前編)

 

新潟経済社会リサーチセンターの佐藤です。

新潟市秋葉区において、秋葉区役所、新潟薬科大学、新津商工会議所(以下「区役所」、「大学」、「商工会議所」)を中心に、産学官連携によるまちなか活性化活動が積極的に進められています。

この活動を今日から2回にわたってご紹介いたします。

 

活動のきっかけ

活動のきっかけは、大学の新キャンパスが2016年4月にJR新津駅東口に開設されることが決まったことによるものです。将来的には400人もの学生・教職員が通う大組織が、駅前のまちなかにオープンする、大勢の学生が往来することでまちなかに活気が生まれる、近隣の商店街に賑わいを取り戻したいなど、地元の期待が高まったのも当然といえます。

 

▲大学の新キャンパス(16年6月 筆者撮影)

▲大学の新キャンパス (筆者撮影)

 

16年3月の新キャンパスのオープンを前に、産学官連携の動きは14年秋頃に始まりました。新津地区のまちなかに賑わいが足りないことを懸念していた秋葉区熊倉区長が、大学・学生を起点とするまちなか活性化の取り組みを強く提唱したことによります。

区役所の呼びかけに応じ、大学、商工会議所、商店街連合会などが一堂に会し、連携に向けた協議がゆっくりと始まりました。手探りのなかでまず話し合われたのは、新津駅周辺のアパートや食堂などが十分とはいえない状況で、大勢の学生や教職員をどのように受け入れるかという現実的な問題でした。連携活動の具体案が出てくるのはもう少し会議を重ねた後になるのですが、商工会議所の担当者は、関係機関が集まって継続して協議を行う場ができた意義は大きかったとしています。

この協議会は14年11月に「新潟薬科大学との連携によるまちなか活性化検討会議」に発展します(注)。区役所、大学、商工会議所に加えて、自治会やコミュニティ協議会、青年会議所、商店街などが参加する本格的な会議です。

(注:2015年4月より「新潟薬科大学との連携によるまちなか活性化実行委員会」<以下「まちなか活性化実行委員会」>となりました。)

「まちなかの賑わいと交流」「食から始まる健康づくり」「里山の魅力発信と利活用」を目指す3つの部会が設けられ、全体会では、区長、学長、会頭ならびに関係機関の主要メンバーが、各部会の活動状況や方向性を確認する仕組みが整えられました。区役所は、地域課が事務局を担当するほか、産業振興課、健康福祉課、いきいき里山室が各部会に参加するなど、全庁を挙げて臨む体制です。

14年度末までに数回の会議が開催され、金沢市や東大阪市などのまちづくり先進地の視察なども行いながら、新津地区の連携活動のアイデア出しが行われました。ここで出されたアイデアが、学生ランチマップの作成や学生による商店のホームページ作成支援など、翌15年度の活動実績につながっていきます。

 

新潟薬科大学応用生命科学部・生命産業創造学科のカリキュラム

15年度に次々と生まれた連携活動の実績を紹介する前に、新キャンパスに入る応用生命科学部・生命産業創造学科について触れておきます。同科のたいへん特徴的なカリキュラムが新津地区における産学官連携活動の勢いに一役買っていることは間違いありません。

同科は15年4月、全国初の、理科系大学内に設置される文科系学科として誕生しました。同科が目指すものは、「農、食、環境の技術面を理解したうえで、マーケティングや情報処理を駆使して課題の発見や解決ができる専門人材を育成すること」です。

新しく開発した技術や素材を社会のニーズにマッチさせながら新製品開発を行うことなどを想定して、企画力、実践力、総括力のほか、コミュニケーション力を育てることにも重きが置かれています。

社会のニーズを把握するには企業や商店の意見を聞く必要があり、そのためには現場へ出向かなければなりません。同科の「地域活性化フィールドワーク」は、地域全体を学びの場と捉え、大学の外に出て社会と接し、大学で学んだ知識を使って体験しながら学ぶことを目指しています。

 

JR新津駅前 (筆者撮影)

▲JR新津駅前 (筆者撮影)

 

たとえば「商店街を活性化する」というテーマでは、学生が商店のホームページを作成し、店の情報発信力を高めることで集客アップを目指したり、学生グループが地域活性化を計画したりするなどの活動が行われています。大学で学ぶITや経営・ビジネスの知識が活きるうえ、課題に取り組むなかで更に勉強を重ねることになります。また、活動を通してチームワークやコミュニケーションの大切さも理解できるようになります。

「地域活性化フィールドワーク」は1年次、3年次の必修科目に指定されています。必修科目だから単位を取得しないと卒業できません。大学・学生は、テーマを探し、商工会議所や商店街を訪ねて調査内容や工程を相談し、実地活動に取り組むことを、毎年継続して行うわけです。

一般的に、産学官連携における大学のイメージは、訪問すれば頼もしい知の拠点ですが、同科は課題探しや実地調査のために積極的にまちなかに出てきます。

この点が秋葉区の産学官連携活動が順調に進んでいるポイントのひとつだと感じます。

 

15年度に入ると、連携活動の実績が次々と生まれるのですが、その具体的内容については、日を改めてお伝えしたいと思います。

 

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『センター月報』2016年8月号の「潮流 県内最新トピックス 第5回」を加除修正いたしました。