DMOの具体的な取組内容とは?

 

新潟経済社会リサーチセンターの江口です。

全国の観光地では現在、プロモーションだけではなく、地域観光の全体をマネジメントする、いわゆるDMO(Destination Marketing/Management Organization)の設立が相次いでいます。

ただし、「概念としては分かるものの、具体的に、どのような活動をしたら良いのか?」と悩まれている観光関係者も多いのではないでしょうか。

こうした中、私どもの機関誌「センター月報6月号」では、他県の事例を参考にしながら、DMOの具体的な取組内容のヒントをご紹介しています。執筆は毎月、連載をお願いしている井門観光研究所の井門隆夫先生です。

 

DMO

 

地域から宿の灯りを消さないために

井門先生は、10年間で500人ものIターン者が移住したことで知られている島根県の海士町の事例を参考にしながら、DMOを機能させるためのヒントについて、次のように解説されています。

 

海士町では、観光協会が主体となり、宿の営業支援のみならず、清掃要員の人材派遣や、リネン類のランドリー業務の一括受注をしている。宿の灯を消さないために宿の直接的支援をする。そのうえ、Iターン者によるゲストハウスの開業や町営ホテルの増改築などの新規参入も促進する。海士町観光協会は、宿泊業の総合コンサルタントとなっているのだ。

(中略)

海士町観光協会は、その多くのメンバーがIターン者で構成されている。

(中略)

彼らの目に映ったのは、地域の民宿の魅力と同時に、清潔感や整理整頓面での課題だ。経営者家族が客と同じ風呂を使うために浴室にはシャンプーが雑然と置かれ、トイレは男女共用、館内には余計な私物があちこちに置かれている。寝具類も小さな洗濯機で洗っているためにボロボロ…。そうした点を改善し、気持ちよく観光客に過ごしていただこうと課題を指摘し改善を説いた。

しかし、返ってきたのは、家族経営ゆえの人手不足や、島にクリーニング店がないという課題。どうすればそれが解決できるかと検討した結果、彼らが出した答えは「自分たちが手伝えばよい」だった。

「島宿」プロジェクトと称し、民宿の品質向上をめざしてコンサルティングを開始。一定基準を満たした宿には「島宿」の冠をつけ、推奨販売をすることとした。

そのために観光協会の職員が、口でいうだけではなく、日々民宿を巡回し、清掃や整理整頓、ときには改装を手伝った。そして、クリーニングに関しては、自前の倉庫にランドリー設備を整え、民宿向けに島のクリーニング店を開業した。

こうした支援を恒常化するために、観光協会は職員を有償で派遣する「特定人材派遣業」を取得。今では、宿の実務支援だけではなく、「島のマルチワーカー」としてバスガイド、岩がきの出荷、食品加工場のヘルプなど、季節ごとの需要に応じて町の様々な業務支援を行っている。

 

井門隆夫(2016)「地域観光事業のススメ方第75回」『センター月報』2016年6月号

 

感想

今回、ご紹介した事例は、これまでの観光協会の取り組みとは大きく異なっています。海士町だからこそできる取り組みなのかもしれませんし、場合によっては各地域でも応用できる取り組みなのかもしれません。それは地域によって異なるのでしょう。

ただいずれしても、DMOの設立に関わっている観光関係者にとっては、参考の一つとなる事例であると思います。

なお、井門先生は「ぜひ発想の転換のためにも一度、隠岐を訪ねることもお勧めしたい」と語られているため、より詳しく知りたいと思った人は自分の目で体感すべく、海士町に訪れてみても良いのではないでしょうか。