新潟県におけるクラウドファンディングの利用状況

 

新潟経済社会リサーチセンターの銀山です。

近年、クラウドファンディングの市場は拡大を続けており、企業が活用する事例も増えています。そこで、今回は新潟県におけるクラウドファンディングの利用状況についてまとめましたので、ご紹介したいと思います。

 

 

クラウドファンディングとは

クラウドファンディングとは「クラウド=群衆」と「ファンディング=資金調達」をあわせた造語です。

「このような商品やサービスを作りたい」「地域の課題をこういうふうに解決したい」といったアイデアや計画、プロジェクトを持つ資金調達者(プロジェクト実行者)が、クラウドファンディングの専用サイト(以下、専用サイト)を通じて世の中に呼びかけ、共感した支援(投資)者から小額の支援金を広く集めることができる手段です(図表参照)。

 

図表 クラウドファンディングの仕組み

 

また、支援金に対する見返り(以下、リターン)の設定に応じて、クラウドファンディングは様々な種類に分けられます。ただし、主要な専用サイトで新潟県内の事業者の利用状況をみると、リターンが商品・サービスである「購入型」と、分配金である「投資型(ファンド形態)」(以下、「投資型」)の利用が多くなっています。そのため、以降では「購入型」と「投資型」について紹介します。

 

「購入型」と「投資型」の概要

「購入型」は資金調達者が提供する商品・サービスをリターンとし、広く支援(購入)を募る仕組みです。店舗等ではまだ販売されていない新商品や限定品などが主に提供されており、支援者は専用サイトを通じて、他にはない商品・サービスを購入することができます。

一方、「投資型」は資金調達者自からが実施する事業を対象に支援(投資)を募り、対象事業の売上高に応じて支援者に分配金を支払う仕組みです。支援者は分配金を期待して支援する場合もありますが、事業の社会的意義などに共感して支援する人も多いようです。

 

新潟県内の「購入型」の利用状況

「購入型」では全国で数十以上の専用サイトがあり、統一的な統計がありません。そのため、累計支援金の多い上位3つの専用サイト(「CAMPFIRE」「Makuake」「Readyfor」)上で、「新潟」と検索して抽出されたプロジェクトをみると、2018年4月末時点で198件が投稿されています(注1)。このうち、半数の99件が目標とした支援金額を調達できています。ただし、目標を達成できたプロジェクトのうち支援金額が100万円未満のものが62件と6割を占め、比較的小額のものが多くなっています。一方、100万円以上集めているプロジェクトでは、地域活性化に関連したテーマのものや、地元の農産品を活用したものが多くみられています。

新潟県内の事業者が関係しているプロジェクトの内容をみてみると、日本酒の限定品を対象にしたものが支援金を特に集めています。また、地域の活性化を目指したゲストハウスの開業などで支援金を集めているプロジェクトなどがみられます。

(注1)2018年4月末時点で募集期間が終了しているもの。Readyforでは『「新潟県」に関するプロジェクト』に掲載されているものを集計

 

新潟県内の「投資型」の利用状況

「投資型」の大手専用サイト「セキュリテ」によると、新潟県内に本社のある資金調達者によるプロジェクト数は累計で24件となっています(注2)。資金調達者のうち、米や日本酒などの食品関連の事業者が22件と、全体の9割超を占めています。また、新潟県内の案件では、全ての資金調達者が支援金をほぼ目標どおり調達することができています。

新潟県内の資金調達者のプロジェクト内容をみると、300~500万円を目標募集金額として設定している案件が多く、1,000万円を越える案件は少ないです。また、米の生産者が4件、日本酒の生産者が3件あるほか、ワインや地ビール、地域の農産品を活かしたジェラートなど、新潟県内各地の特産品を活用して事業を行なっている資金調達者の案件が多くみられることも特徴的です。

(注2) 2018年4月末時点で募集期間が終了しているもの

 

自治体の支援状況

政府は2014年に内閣府地方創生推進室内に「ふるさと投資連絡会議」を設置し、新たな資金循環を促す仕組みとして、クラウドファンディングの利用を促進しています。このような流れもあり、新潟県内の4市(阿賀野市、長岡市、南魚沼市、糸魚川市)が、市内の事業者を対象に「投資型」の手数料を助成する制度を設けています(17年度)。そのため、これらの自治体に本社を置く資金調達者のプロジェクトが多くみられています。なお、18年度から新潟県も助成制度を設けています。

特に取り組みが早かった阿賀野市では、現在までに累計で8つのプロジェクトを支援しており、うち食品関連で6、旅館で1、瓦製造で1となっています。利用した資金調達者のなかには、クラウドファンディングを通じて県外支援者の獲得に成功している事例がみられます。

 

まとめ

クラウドファンディングには単に資金集めやPRの手段としてだけではなく、販路開拓や顧客獲得、創業や事業におけるリスクの軽減などに効果があることから注目されています。そのため、新商品・サービスの開発・販売や店舗の出店、事業の拡大などにおいて、クラウドファンディングを活用する事業者が増えてきています。

新潟県内の事業者でもクラウドファンディングを活用する事例は徐々に増えてきています。しかし、「購入型」と「投資型」の新潟県内の事例をみると、クラウドファンディングの利用が1回だけで終わっているケースが多く、複数回にわたりクラウドファンディングを実施している事例はほとんどみられない状況です。

他県の事業者では県外ではクラウドファンディングを資金調達やPRの手段として活用するだけにとどまらず、販路開拓や顧客獲得につなげている事例がみられます。新潟県内でもクラウドファンディングの特徴をさらに活用して、事業を拡大させる事例が多く出てくることに期待したいです。

なお、弊社の機関紙「センター月報」(6月号)に掲載した「クラウドファンディングの現状と活用のポイント」では、複数回、クラウドファンディングを実施しながら、短期間に事業を拡大させている「購入型」と「投資型」の事例を紹介しています。ご興味ある方はぜひ読んでみてください。

また、クラウドファンディングが日本よりも普及している米国では、支援したものの想定どおりのリターンが得られないといったトラブルが少なくないようです。日本ではまだあまりみられないものの、資金調達者、支援者の双方がそうした事態もあることに注意を払いながら、活用していく姿勢が必要だと思われます。