農家と畜産家、堆肥の生産や活用で連携 農作物の品質向上、効率的な畜産運営で双方にメリット!

 

新潟経済社会リサーチセンターの佐藤です。

農家と畜産家が堆肥作りを通して連携すると双方にメリットが生じるそうです。その様子をご報告します。

 

化学肥料や農薬の使用を抑える環境保全型農業が普及

安心安全な食に関する消費者の期待が大きくなりつつあり、化学肥料や化学合成農薬(以下「化学肥料や農薬」)の使用を抑えた農業への関心が高まっています。

土づくり等を通じて化学肥料や農薬の使用を抑え、環境負荷の軽減にも配慮する農業の取り組みは、平成4年に「環境保全型農業」と位置付けられ、化学肥料や農薬の適正な使用、家畜排せつ物等の有効利用による地力の増進などの取り組みが進められることとなりました。平成23年には化学肥料や農薬の使用を慣行農法に比べて5割以上低減させる地域ぐるみの取り組みへの支援が始まり、さらに近年では、地球温暖化防止や生物多様性保全などの国際的な動きに合わせ、農地での炭素貯留量の増加や水田生態系の質的向上なども見据えた営農活動の支援へと発展しています。

環境保全型農業の主な取り組み項目と支援内容は次のとおりです。

全国共通取組とともに新潟県の特性を考慮した地域特認取組も認められており、農家グループや営農組合などによる積極的な取り組みが期待されています。なお、下記の項目はいずれも「化学肥料や化学合成農薬を慣行農法から5割以上削減」したうえで取り組むこととされています。

 

(1)全国共通取組の例

堆肥の施用

堆肥の施用

 

(2)新潟県の地域特認取組の例

①水稲の本田内に湛水できる江(溝)を設置する取組

 

 

・支援単価 10a当たり3,000〜4,000円

・水生生物の生息域や中干し期の避難場所を確保するほか、鳥類の餌場を確保し、生物多様性の保全に貢献

 

②冬期間の水田に2カ月以上水を張る取組

 

 

・支援単価 10a当たり4,000〜8,000円

・水田地帯の多様な生き物の保全に貢献

・水田の窒素除去機能を利用して水質浄化に貢献

 

堆肥を施用する田畑の面積は順調に拡大

それぞれの取り組みが、どの程度地球温暖化防止や多様な生き物の保全などに貢献するかについては、土壌に含まれる炭素量の測定や水田に生息する昆虫の種類や数の点検などにより評価が試みられているところです。それらの評価にかかわらず、堆肥の施用に取り組んでいる農家は、圃場の地力が改善した、農作物の品質が向上したなどの効果を既に実感しているようです。補助金が支給されることも追い風となり、堆肥を施用する県内の圃場面積は順調に拡大しています。

堆肥施用の取り組みが順調に拡大している背景には、市町村が有機センターなどの施設を建て、地域の畜産業者から家畜のふん尿を回収して堆肥を作る体制を整えたことも挙げられます。堆肥作りには副資材として大量のモミガラなどを投入する必要がありますが、モミガラ処分の手間が省ける近隣農家も喜んで持ち込みを行ないます。完成した堆肥は近隣農家が活用するので、畜産家と農家を結ぶたいへん効果的な施設です。

いくつかの有機センターに聞いたところ、農家の堆肥需要は旺盛で、作った堆肥はほぼ全量が農地に供給されているようです。一方で畜産側には利活用できる家畜ふんはまだあるとみられ、有機センターなどの施設や堆肥作り・散布などの体制が整えば、これらの取組は拡大できる可能性があります。

品質の良い農作物作りに寄与し、畜産家の円滑な運営にもつながる堆肥施用の取り組みを拡大するため、どのように堆肥供給の仕組みを整えるのかについて県の農林水産部にお聞きしたところ、地域の農家と畜産家がまとまり、堆肥作りや堆肥散布作業に協同で取り組む「耕畜連携」の取り組みが有効ではないかとのことです。

実際の取り組み事例として、新潟市南区で畜産家と連携して堆肥作りや水田への堆肥施用を行なっている農家グループを見学させていただきました。

この農家グループは、地域の農家10名により任意団体AKANE(以下「アカネ」)を結成し、協力して堆肥施用などに取り組んでいます。20年ほど前から取り組みを始め、現在堆肥を施用している水田の面積は300haにも及んでいます。

毎年、収穫作業が終わった頃から翌春にかけて10a(1000平米)あたり0.5~1トンの堆肥を散布します。堆肥を散布することで水持ちがよく土がフカフカする感じになり、土づくりの効果を実感しているとのことです。栽培する米の品質が改善したほか、天候に恵まれなかった年でも収量の低下が小さいなどの効果も現れています。近隣に乳牛100頭を飼育する畜産家があり、そこから出る牛ふんにモミガラを混ぜて堆肥を作っています。

 

畜産家と農家の間に堆肥作りを行なう中間組織を設ける

特徴的な点は、畜産家とアカネの中間に任意団体アオバを設け、堆肥作り、販売、散布など堆肥取り扱い全般を管理している点です(イメージ図参照)。専属の担当者が配置されているわけではなく、畜産家やアカネ農家など、アオバの構成員が作業や事務の労力を提供しています。

アオバと畜産家やアカネの間には管理上の仕切りが設けられています。アオバの会計は、堆肥の売り上げや散布作業賃が収入となり、堆肥作りや堆肥散布作業の労力提供者への報酬支払いや機械保守費などが経費になります。受益者から料金を徴収して労力提供者へ報酬を払う流れは、構成員の間で公平感も保てる良い仕組みだと思います。

 

(イメージ図)堆肥を扱う組織が畜産家と農家を結ぶ

 

アオバは堆肥作りの作業小屋や堆肥散布用の作業機械などの資産の保有・管理も行なっています。この作業機械を活用することで、広大な圃場に大量の堆肥を効率よく散布することが可能となっています。

中間組織を設けて堆肥の取り扱い全般を管理することで、堆肥の供給可能時期、供給可能量、散布用機械の使用予定などが明確となり、農家の作業も効率的に進むわけです。現在、作った堆肥はすべて活用されていますが、アカネ農家などは堆肥供給がさらに増えれば大豆畑にも散布したいとしています。畜産家と農家が連携することで、堆肥作りから散布までのスケジュールや需給の調整、労働力の融通が行なわれ、さらに地域でまとまり規模を確保することで、大型の作業用機械を保有して効率的な作業を行なうことが可能となるなど、様々な効果が現れています。

 

連携により様々なメリットが生じる

しかし県の担当者の話では、地域の畜産家と農家の間で効果的な連携ができていないところもあるそうです。連携がうまくいかないと、畜産家は作った堆肥をさばき切れなかったり、周辺の農家も、堆肥散布には興味はあるが取り組み方法がわからない、人手がなくて散布できないなどの問題が生じて、結果的に堆肥の活用が広がりません。

機械の有無は散布作業を行なう際の大事なポイントです。補助金を受けるには、圃場10a(1000平米、約300坪)ごとにトラック一杯の堆肥を散布する必要がありますが、広大な圃場に人力で散布するのはかなり大変です。連携に参加していない農家などが二の足を踏んでしまうのも理解できるところです。

県の担当者は、新たな連携を考える際は、まず地域の畜産家と農家で耕畜連携の勉強会を開いてみてはどうかとしています。堆肥の生産や散布を計画的に行なうことができる、作物の品質改善が期待できるなど連携によるメリットや各自の労力負担などを確認したうえで、賛同する方が、まず小規模に始めるのが良いのではないかと思われます。各市町村の担当部署が農協などと協力して耕畜連携ほか様々な勉強会を適宜開催しているので、まずは県の農林水産部や各市町村の担当部署へ相談してみてはどうでしょうか。

地域の畜産家と農家の連携が進み、堆肥作り、堆肥散布など協同の取り組みがある程度の規模になれば、散布用など高価な大型機械の保有も可能となります。国の農業施策が、地域でまとまり、規模を拡大して取り組む農業を支援する方向にあることから補助金なども期待できます。各地に新たな連携が生まれ、農産物の品質アップ、効率的な畜産運営などにより県内の農業、畜産業の競争力が一段とアップすることを期待したいものです。

 

堆肥散布機 広大な圃場に大量の堆肥を効率よく散布する

 

トラック一杯の堆肥 人力で散布するのはたいへんです

 

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『センター月報』2018年3月号の「潮流 県内最新トピック第18回」を加除修正しました。