新潟県内の商業高校生、研究発表大会で熱弁をふるう 斬新な発想で社会や経済の課題にチャレンジ!

 

新潟経済社会リサーチセンターの佐藤です。先日、県内商業高校生の活動を拝見する機会がありました。その意欲的な取り組みの様子をぜひご紹介したいと思います。

新潟県には商業高校6校ならびに商業科を有する普通高校2校が加盟する「新潟県高等学校商業クラブ」があります。それぞれの高校には「商業クラブ」が設けられており、所属する生徒たちが担当の先生の指導のもとで、「地元産品を使った商品の開発」、「高校生が考える街なか活性化策」など、社会・経済分野のテーマをみつけて調査・研究活動を行なっています。

毎年秋には各校が1年間の研究の成果を持ち寄り、研究発表大会が開催されます。この大会の目的は次のようにうたわれています。

・ 商業を学ぶ生徒が、商業に関する課題を設定し、その解決を図る一連の研究活動のなかで、問題解決能力や創造的学習態度を育てる
・ 成果を発表する機会を通じて表現力やコミュニケーション能力を育成する
・ 県内経済界、中学校の生徒や教師、県民一般に理解と協力を求め、商業教育を推進する

 

▲本年の研究発表大会の様子

 

本年9月、第24回の研究発表大会が新潟市で開催され、商業高校6校、約60名の生徒たちが、各校の研究成果について熱の入った発表を行ないました。筆者も聴講したのですが、タイムリーなテーマの選定、協力企業との商品開発の様子、生徒たちによる実際の販売活動や売り上げアップの工夫など、幅広い分野にわたる取り組みの様子に感心した次第です。

また、今時の高校生のプレゼン力にも驚かされました。発表担当者たちは、声のメリハリ、表情、ポーズまでよく工夫を凝らしています。発表者ばかりでなく機器を操作するグループも真剣です。PCに取り込んである画像や資料を発表者のペースにあわせて大型スクリーンに表示するのですが、絶妙の連携ぶりです。12分の発表時間をオーバーすると大きく減点されるため、「残り3分」、「残り30秒」などの警告板を掲げる時間計測係まで配置されており、チーム一丸となって臨む姿勢も見事でした。熱戦の結果は以下のとおりです。

 

 

最優秀賞を受賞した新発田商業高校を訪ねて、同校の商業クラブを指導する佐藤匠先生と3年生の生徒さんたちに今回の研究取り組みの様子などをお聞きしました。

 

新発田商業高校の活動の様子

新発田商業高校の商業クラブには3年生3名、2年生5名、計8名の生徒が所属しています。生徒たちが今回の研究テーマに選んだのは「フェアトレード」です。直訳すると「公平な取引」ですが、ここでは途上国支援の意味を含む言葉として使われています。途上国の農産物や製品を、先進国が買い叩くことなく適正な価格で継続的に購入することで、途上国の生産者の生活を改善して自立を促そうとの考え方です。

授業で学んだフェアトレードについて更に詳しく調べ、その意義や内容を市民にもPRする。あわせてフェアトレードの原材料を使ったお菓子などを自ら開発・販売することを通して高校生として途上国の支援に取り組みたいとの想いでテーマを選定したとのことです。

 

▲発表資料の表紙イラスト フェアトレードのイメージがよく表されています

 

生徒たちは次のように計画を立てて研究を進めました。

①フェアトレードについて関連情報を収集する
② アンケート調査により市民のフェアトレード認知度などを確認する
③ ターゲット顧客層やフェアトレード原材料を使って開発する商品を決定する
④地元洋菓子店との協働により商品を開発する
⑤ スーパーやイベントへの出店により自ら販売に取り組む

各過程では想定外の事態も発生するのですが、クラブ員で話し合ったり顧問の先生から指導を受けて、その都度何とか課題をクリアしました。佐藤先生は「想定外のことは必ず発生する。何が起きても余裕をもって対処できるよう、思い立ったら直ちに行動するように」と指導されているそうです。

 

市民へのアンケート調査~商品開発の様子

4~5月の週末、生徒8人が総出で約200名の市民にアンケートを行ない、フェアトレードの認知度や対象商品の購入経験を調査しました。現場でのアンケートはさぞ大変だったのでは、と聞いたところ、「過去の研究でもアンケート調査を経験しているので抵抗はありません」とあっさり。「まずアンケート調査で現状把握!」との手法は同校商業クラブの伝統となっているようです。

アンケートの結果をもとに、フェアトレードの認知度を上げるために最も効果がある顧客は誰か、どのようなフェアトレード原材料を使ってどんな商品を開発するかなどの検討を進めました。フェアトレード原材料はどこで購入するのかもわからないなど不明な点も多かったのですが、商品開発を協力してくれる企業に相談したりフェアトレード推進委員会(新潟市)を訪ねたりと、精力的な活動でひとつずつハードルを越えていきました。「わからないことは沢山!行動あるのみ!」と高校生ながらなかなかタフです。

生徒たちは協力してくれる地元洋菓子店とともに試作、検討を何回も繰り返して商品開発を進めました。フェアトレード原材料を使用したコーヒーと、やはりフェアトレード原材料を使い、そのコーヒーに合うように考案したお菓子2種類のラインナップが揃うまで3カ月もかかったそうです。

 

▲協力企業と念入りに打ち合わせを実施

 

自ら販売に取り組む

生徒たちはようやく完成した商品を手に、5月から7月にかけてイベントに出店したりスーパーの一角を借りるなど4回の販売活動に取り組んみました。お菓子などの価格は安く設定してたくさん売りたいのはやまやまですが、「商業高校生として損を出すわけにはいかない」と真剣に検討を重ねたそうです。

5月下旬、イベントに出店して臨んだ初回販売では、準備した商品は完売したものの、コーヒーとお菓子をいっしょに味わって欲しいが片方だけ買う客も多い、客がフェアトレードを理解したかどうか把握できないなど、課題も明らかになりました。持ち帰って検討し、以下の工夫を加えることにしました。

① コーヒーとお菓子2種類をセットにし、セット価格もお得感が出るよう500円とする。
② 「このお菓子はこのコーヒーとマッチするように作られた」ことを顧客に紹介しながらクロスセリングを行なう。
③ 顧客の理解促進のため、フェアトレードの仕組みを記載した看板と配布用リーフレットを作成する。
④ 購入した顧客のフェアトレード理解度を確認するため、葉書を返送する形のアンケートを実施する。

 

▲上 イベントに出店 いざ販売!
▲下 効果的なPRのために作成した看板

 

7月上旬に臨んだ2回目の販売では、クロスセリングの手法や看板によるPRが大いに効果を発揮し、イベント開始後2時間で用意した商品を完売しました。

生徒たちはこの後も返送されたアンケート葉書を分析するなどにより、POP広告を「一目で訴えかける」ように変更する、プロモーション強化のためイベント当日の朝刊に折り込み広告を入れる、イベント会場でメッセージを入れたティッシュを配布するなど、次々と工夫を重ねていきました。

▲上 スーパーにて2回目の販売 大盛況!
▲下 客の目を引くように工夫したPOP広告

 

さらに、フェアトレードを広く認知してもらうにはイベント当日ばかりでなく普段のPRも必要と考え、スーパーや商店などにリーフレットを置いてもらうことを考えました。リーフレットを置いてもらう先は生徒たちが商店街を1軒ずつ訪問し、結果的に約20店から協力を取り付けました。商店なども同校の活動をよく理解しているようで、生徒たちが訪問すると好意的な対応をしてくれるようです。

4回の販売活動が終わった後に行なったアンケートでは、フェアトレードに関する市民の認知度が大きく改善したことが確認できました。途上国支援のコンセプトを織り込んだ商品開発、様々な手法によるフェアトレードのPR、セット販売やクロスセールスなど販売手法の工夫などの一連の取り組みが大きな成果につながったものと思われます。今回の成果に満足することなく、魅力あるフェアトレード関連商品を今後も継続して提供したいとして研究報告を結んでいます。

商品が作られた背景などを大事にする消費者が増えていると言われています。今般の新発田商業高校商業クラブの研究のように、ストーリーを織り込んだ商品を開発し、対象とする層を絞ってプロモーションする手法はたいへん効果的です。その後、葉書アンケートなどを参考に販売方法に工夫を加えていく手法なども有効な取り組みと感じます。生徒さんたちが、研究活動で学んだこれらの一連の優れた手法を、いつか実社会でも実践してくれることと期待したいものです。

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『センター月報』2017年12月号の「潮流 県内最新トピック第16回」を加除修正いたしました。