県内の商業高校生、研究発表大会で熱弁をふるう 斬新な発想で社会・経済の課題にチャレンジ(その2)

 

新潟経済社会リサーチセンターの佐藤です。前回に続き、商業高校生の意欲的な活動状況をご紹介します。

県内の商業高校などが加盟する「新潟県高等学校商業クラブ」では、商業を学ぶ生徒の問題解決力、創造的な学習態度、表現力などの向上を目指し、毎年秋に研究発表大会を開催しています。前回は2017年9月の発表大会の様子や、熱戦を制して最優秀賞を受賞した新発田商業高校の発表内容などを紹介しました。惜しくも最優秀賞は逃したものの、優秀賞を受賞した三条商業高校、高田商業高校の2校も、安心安全な食、観光振興などの観点から地域活性化を目指そうとする力の入った研究発表を行なっています。両校を訪ね、今回の研究取り組みの様子などをお聞きしました。

 

■三条商業高校

研究テーマ  リング 〜食育の輪〜

三条商業高校の商業クラブには3年生6名、2年生8名の計14名が所属しており、地元の協力企業と商品開発を行なったり、市内のイベントに出店して商品販売手法を学んだりと、普段から積極的な活動を行なっています。取り扱い商品「いかぱん」は地域でも有名な同校商業クラブの看板商品です。

今回、生徒たちが研究テーマとしたのは「リング〜食育の輪〜」。安心安全な食を追及し、おやつを改善しようとする取り組みです。市役所の食育推進室の担当者から「糖質や脂質の取り過ぎの子どもが増えている」と聞きました。クラブ員でその背景などを調べたところ、核家族化、共稼ぎの増加により親が日中不在の世帯が増え、おやつは市販のスナックや菓子まかせとなっています。その結果、子どもが糖質や脂質を取り過ぎるなどの問題点がみえてきました。私たちで健康面にも配慮したおやつを開発したい、さらに地元産の原材料を活用して地域活性化にもつなげようと、今回のテーマを決定したとのことです。

クラブ員で、気軽、栄養価、糖質過多にならないなどのキーワードでおやつ候補を考えたところ「ハチミツ」が有力候補として挙がったのですが、ハチミツを使ってどんなおやつに仕立てるかについてはなかなか議論がまとまりませんでした。地元の養蜂家から、加工段階で加熱すると栄養価が損なわれる、そのまま活用するのが良いのでは、とアドバイスをもらったのがきっかけでようやく検討が進み、生のハチミツをベースとする、ハチミツに欠けるビタミンCを補うために自家製ドライフルーツを加えるなど、ついに商品の構想が固まりました!

さらに、今回の目標は健康にも配慮した安心安全なおやつの開発なので、「添加物一切なし」にこだわって自ら製造してみようと、目標が大きくなっていったそうです。藤田先生のネットワークにより、新潟市アグリパークにおいて滅菌室や食品加工機器を借りながら食品加工の指導を受けられる目処が立ち、同校商業クラブ初の製造過程への挑戦が決まりました!

 

▲熱が入る検討会。もっとアイデア出せ~!

◎製造に挑戦

生徒たちはドライフルーツ製造班とハチミツ充填班に別れて土日返上で活動を進めました。

★ドライフルーツ製造班

・試作により柔らかい食感を保つコツを発見。「薄すぎるカットはダメ!」
・観光農園を訪ね、大きさや成熟度を自ら確認しながらイチゴを収穫
・イチゴを食品加工支援センターに持ち込んでドライフルーツに加工

★ハチミツ充填班

・甘さや口あたりなどの特徴を調べ、使用するハチミツの銘柄を決定
・地元養蜂家から仕入れたハチミツを食品加工支援センターに持ち込み
・ドライフルーツを瓶に入れ、ハチミツを注入に適した温度に暖めながら充填。注入量にバラツキが出ないように重さを計りながら慎重に作業を進めました。

どちらの班も支援センターの担当者から付きっきりで指導を受けました。加工室に入る前のエアシャワー、キャップや手袋の装着、使用する瓶の殺菌作業など、生徒たちは衛生管理の徹底ぶりに驚きました。食品に関する衛生基準の厳しさを認識するよい機会となったとのことです。

 

▲各班の作業風景。真剣な様子が伝わってきます

瓶に貼るラベルの作成も簡単ではありませんでした。食品表示法では、ラベルに記載すべき事項から文字の大きさまで細かく定められています。加熱処理していない天然ハチミツなので「1歳未満の乳児には食べさせない」との注意書きも必要など、保健所から何回も指導を受けながら作業を進め、1週間かけてようやくラベルを完成させました。

この後、外部検査機関による細菌検査で合格をもらい、ついに商品が完成! 原材料調達から製造工程をすべて自前で行ない、衛生管理や食品表示まで勉強して完成させた限定150個のスーパープレミアム商品です。

◎商品名決定〜いざ販売

商品名はFruit(果物)とHoney(ハチミツ)をかけ合わせて「Fruiney(フルーニー)」と決定!さらに校章にハチミツをかけた大胆なマークまで考案しました。校章の使用については「校長先生も公認。多分…」とのことです。

さらに生徒たちは、ハチミツを使った「おやつ改善」の意義が購入者にきちんと伝わるよう、何冊もの文献を参照するなど1週間かけて説明用のチラシも作成し、販売準備を整えました。

 

▲ついに完成した「Fruiney」と「おやつ改善」などを説明するチラシ

 

7月中旬から下旬にかけ、生徒たちは市内で開催された三条マルシェなどに2回の出店を行ないました。かわいい瓶に入った新商品とともに、生徒たちの熱心な呼びかけやPRチラシが奏功して、販売状況は予想を上回るほど好調でした。購入者の方々は、健康にも配慮したおやつの意義やハチミツの効用などに興味をもって耳を傾けてくれたそうです。

 

▲買物客で賑わう商業クラブのテント

生徒たちは販売活動が終わった後も、近隣小学校の児童クラブ調理実習に参加したり、同校が発行するフリーペーパーやツイッターにより情報発信を継続して、ハチミツを使った「おやつ改善」や「Fruiney」のPRに努めています。健康にも配慮した安心安全なおやつへの理解が広まるとともに地元産のハチミツや果物を使った「Fruiney」の知名度が上がり、この新商品が「いかぱん」と並ぶ同校商業クラブの主力商品に育つことを期待したいものです。

 

■高田商業高校

研究テーマ Charming of Joetsu(上越の魅力)

高田商業高校の商業クラブは、複数のグループにより、商店街の空き店舗を活用したチャレンジショップ運営や地元の魅力を発信するフリーペーパー発刊、テーマを決めて取り組む調査研究活動など幅広い活動を行なっています。今般の発表大会に向けて研究に取り組んだのは3名の3年生グループです。

3名が取り組んだ研究の内容は、「上越地域の見どころを特に外国人旅行者向けに効果的にPRする」ことでした。全国的に人口が減少しているが上越市も例外ではありません。人が減ると地域経済が衰退し、雇用が縮小し、さらなる人口減少につながる負の連鎖が起きてしまいます。この負の連鎖を止める経済振興策として、観光客、特に消費額が大きい外国人観光客の誘致が全国各地で取り組まれています。同校の商業クラブでも外国人旅行者へのプロモーションを考えてみようということになりました。

3名で話し合い、外国人向けにプロモーションを行なうのであれば紙媒体ではなくネットを活用した方が効果的だ、動画や写真などで視覚に訴えるものがよい、などと取り組み内容を具体化させていきました。2カ月ほどディスカッションを重ねた結果、地域の観光スポットを訪ね、動画を作成してYouTubeに載せる、さらに外国人旅行者向けに英語の音声・字幕を付けるなど、取り組み内容が固まりました!

どこのスポットを取り上げるかについての話し合いは大いに盛り上がりました。地域の一大イベントである桜祭りに始まり、高田城址お堀のハス、がんぎ通り、さらにはマニアに人気がある3セク鉄道のスイッチ・バック方式の駅なども候補に挙がりました。最終的に、時期を問わず通年で楽しめる場所、私たちも見たことがない穴場、などの観点から、改札口から300段の階段を下って地下ホームにたどり着く3セク鉄道の筒石駅、絶好の夕陽眺望スポットである弁天岩(いずれも糸魚川市)の2カ所を選定しました。

 

▲現地で動画を撮影

 

▲左 弁天岩、 産駒右 筒石駅の地下ホーム

 

さて、場所が決まったのでまず現地を訪問して動画を撮影するのですが、この取材活動、バスや電車を乗り継いで行くのではありません。「先生にお願いして」乗用車でサッと訪問。このあたりが現代の高校生!指導の先生もなかなか大変です。

撮影した動画を編集しながら、関連HPによりYouTube(以下「YT」)への作品アップロードの方法なども調べました。HPには、最初の数秒でインパクトを与える、説明するのではなく「見せる」ことを心がけるなど、見栄えのよい作品を作成するコツが丁寧に記載されています。これらを参考に精力的に編集作業を進めてました。
選定した2カ所の歴史や特徴などの解説を日本語で作成する作業は順調に進んだのですが、英語版の作成はなかなかたいへんでした。「英語の先生の隣に貼りついて」1週間かかったそうです。

苦心して作り上げた英語の原稿を滑らかに読めるよう練習を繰り返し、動画に合わせて録音を実施しました。8月下旬、ついにYTへの作品アップロード完了!軽快なカントリーミュージックのBGMも効果的で、軽やかな雰囲気に仕上がっています!

 

▲少し緊張— 録音風景

 

9月上旬の発表大会までの期間が短く、YTにアップロードした動画の視聴状況や視聴者の意見などをチェックすることはできなかったのですが、自ら動画を視聴してみたところ、改善すべき点がいくつかみつかりました。現地へのアクセス方法の明示も必要だ、英語の解説が棒読みで感動が伝わらないなどの点が改善点として挙げられました。

既に次の作品制作に向け、妙高山周辺の2カ所の観光スポットの動画を撮影済みです。生徒たちは、最初の作品で挙げられた課題をふまえ、次回は観光客向けに丁寧な説明を行なうとともに躍動感あふれる作品を作りたいと大いに張り切っています。

生徒たちがYTにアップロードした作品はまだ2本ですが、有名スポットとともに「ガイドブックには載っていない穴場情報」なども集め、時間をかけて同校商業クラブ作のYT動画を増やしていきたいとのことです。指導にあたる服部先生も、生徒たちの力作を活かすため、同校商業クラブで制作した作品を地域の観光PRなどに活用できないか、観光協会などに相談してみたいとしています。
当地を訪問して観光情報を検索すると、同校商業クラブのYT作品が穴場情報を提供してくれる―このような仕掛けにより、上越エリアの来訪者に当地の観光を存分に楽しんでいただきたいものです。

 

▲商業クラブのYouTube自信作!ぜひ視聴ください。

▲「高田商業高校 筒石駅」、「同 弁天岩」で検索できます

 

地域の食材を使った商品を活用して安心安全な食への理解を広げる三条商業高校商業クラブの取り組み、紙媒体ではなくSNSを活用して外国人観光客などへ地域の魅力をPRしようとする高田商業高校商業クラブの取り組み、どちらも地域の社会、経済と密接に絡むものです。両校の商業クラブの活動が、行政や協力企業なども巻き込みながらより大きな動きとなって地域の活性化につながっていくものと期待します。

 

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『センター月報』2018年1月号の「潮流 県内最新トピック第17回」を加除修正いたしました。