首都圏などから元気なシニアを迎え入れて地域の活性化を図る!南魚沼市のCCRC構想

 

新潟経済社会リサーチセンターの佐藤です。

本日は、新潟県内で進められているCCRC構想についてご紹介したいと思います。

 

南魚沼市のCCRC構想

南魚沼市において、首都圏などから元気なシニアを迎え入れて地域活性化を図る試みが進められています。

移住するシニアは魚沼地方の豊かな食や自然を満喫しながら、市内の大学で自己啓発に励んだり、地域の医療機関が提供するプログラムにより健康維持に努めるなどセカンドライフを楽しむ。一方でシニアを受け入れる南魚沼市は、定住人口を増加させて地域経済を活性化させるとともに新たな雇用創出を目指すものです。

首都圏などの元気なシニアを地方に迎える考えは、シンクタンク大手である株式会社三菱総合研究所のプラチナ社会研究センターが、米国のCCRC(注)の事例を研究して全国の市町村に紹介しているものです。

(注)CCRC(Continuing Care Retirement Community): 健康時から介護時まで移転することなく安心して暮らし続けることができるシニアコミュニティ

米国には既に2千件のCCRCが存在し、地方大学がその敷地内にCCRCを造った事例などもあります。居住者は豊かな自然に囲まれながら大学の講義を聴講し、ゴルフを楽しみ、さらにはコミュニティが継続的に企画するイベントに参加して、充実したセカンドライフを楽しんでいるとのことです。

三菱総合研究所 松田智生主席研究員によると、日本型CCRCを検討する場合に大事なことは、施設の外観や設備などのハード面ばかりではなく、「私は今こんな素敵な場所で地域の子供と○○している」など、シニアが年賀状に書きたくなるストーリーを示すことだとしています。

単なるシニア住宅ではなく、社会参加、生涯学習、健康支援などを組み込んだライフスタイルを提供する点が特徴的だと感じます

南魚沼市は、新たな産業と雇用の創出が期待できるCCRCについて検討を行い、平成26年9月議会において市長がこの構想実現に取り組むことを正式に表明しました。

その後、当市総務部が事務局となり地域の大学、企業、市民団体などを交えて数回の勉強会が開催されました。平成27年には勉強会のメンバーを中心として、産学官連携による「南魚沼版CCRC推進協議会」(以下「協議会」)が設立され、次の点を骨子として実現に向けた検討が進められています。

  • 上越新幹線浦佐駅を中心に、周辺の大学、医療機関、交通拠点が連携するエリア型コミュニティとする。
  • 200戸400人の元気なシニアの移住を目指す。
  • 移住者向けに新設住宅の整備を行う。
  • 冬季の積雪を考慮し、居住施設には一定の生活サービス機能を持たせる。

 

協議会の様子

▲H28.3.22開催の協議会の様子

 

CCRCは行政の取り組みだけで実現できるものではありません。大学、医療機関、市民団体などの地域機関や組織が、それぞれの特徴を生かしながら積極的に係わることで魅力あるコミュニティが形成されるます。南魚沼市においては協議会参加メンバーが中心となり、以下のような移住者向けプログラムが検討されています。

  • 国際大学において講義を聴講して自己研鑽に努める。また留学生やその家族との交流を通じて国際親善や異文化への理解を深める。
  • 北里大学保健衛生専門学院などの医療系教育機関や地域医療機関が提供するプログラムに参加し、健康増進や介護予防に努める。
  • 市民グループやコミュニティの運営組織が企画する地域の歴史探訪や自然探索などのイベントに参加し、地域を理解する。市民との交流により移住者が地域にスムーズに溶け込むことも期待できる。

不慣れな土地に移住するシニアにとって、参加を歓迎してくれる沢山のメニューが用意されていることは心強いと思われます。移住シニアは「来週はどんなことをして楽しもうか」と期待しながらコミュニティのスケジュールをチェックするので、魅力あるメニューを継続的に提供することはCCRC運営ポイントの1つとななります。魅力的なメニューの検討やメニューを継続して提供する仕組み作りなどについて、協議会メンバーを中心とする取り組みに期待したいです。

ところで、大学や市民グループなどが提供する多彩なメニューは楽しみではありますが、まず気になるのは移住者の居住形態や冬季の雪対策など移住者の生活支援についてです

南魚沼市によると、居住施設及び交流の拠点となる施設については、市有地を含む2万平米の土地を想定して、第1期50戸の住宅を建築する案で検討を進めているとのことです。この住宅建築候補地から1km以内には、商業施設のほか上越新幹線浦佐駅、魚沼基幹病院などの主要施設も集積しています。マイカーを保有しない移住者も予想されるため、主要施設まで徒歩で行けることは大きなメリットです。移住者が特定地域に居住することで除雪などの冬季の生活支援もスムーズに行えると思われます。

さらに、移住者の日常生活における様々な相談に応えるため、「移住定住コンシェルジュ」を配置することが検討されています。日常生活のどのような困りごともコンシェルジュに相談すれば然るべき対応者を紹介する仕組みを作り、移住者に安心を与えたいとしています。

 

住宅建築候補地では…

住宅建築候補地を見学してみました。上越新幹線浦佐駅から徒歩20分、広大な敷地に立つと街中の窮屈さは全く感じられませんでした。近隣に高層建物がないため空が広い!魚沼の山々が間近に迫り爽快な気分です。

緑地を贅沢に取り、戸建て住宅を分散させて林間の雰囲気を出すのでしょうか。どのような設計図が描かれるのか楽しみです

本年1~3月に「お試し居住」が実施され、首都圏や新潟県内などから10組11名が当市を訪れました。各自の都合の良い日程で国際大学の留学生向けの家族寮や市内のホテルに数日間宿泊し、大学や介護・リハビリ施設とともに観光施設などを見学しながら冬季の生活を体験してもらうものです。

お試し居住に参加した方々は、当地での起業、留学生家族への日本語支援など、総じて積極的に地域と係わろうとしている様子だったとのことです。

参加者の多くは今後も情報交換しながら移住を検討するとしていますが、自然環境や食の豊かさに好印象を持ち、すでに移住した人もいるほか、さっそく居住物件探しを始めた積極派も存在するそうです。

CCRCの建設予定地が決まり完成予想図を目の当たりにするなど、計画が具体的になるに従い移住を決心される方も増えるのではないかと期待したいです。

 

▲住宅建設候補地の近隣から浦佐駅方面を臨む(H28.3.22筆者撮影)

▲住宅建設候補地の近隣から浦佐駅方面を臨む(H28.3.22筆者撮影)

 

ビジネスが芽生える可能性も!

さて、首都圏などから気力も消費意欲も旺盛なシニアの移住が増えれば、移住者の方々を対象とする新しいビジネスチャンスも生まれます。移住者向けビジネスの検討は、当市が主催する協議会から切り離し、当市から委託を受けた日経BP社による「南魚沼CCRCビジネス研究会」(以下「研究会」)で検討が行われています。

研究会に参加する企業は、移住シニア向けの新しい商品やサービスのマーケティングについて、南魚沼市、大学、その他の地域資源を活用しながら当地において実証実験を行うことが可能です。行政をはじめとする関係機関がCCRC計画や地域情報を提供してくれるので、企業は効果的な実証実験を行うことができます。

首都圏企業と当市の大学、企業、農業経営者など様々な連携が行われることで、地域の自然や農作物、あるいは健康などをテーマとするこれまでにないビジネスが芽生える可能性があります。新たなビジネス、新たな雇用が生まれることを期待したいと思います。この点はCCRC構想の重要なポイントです。

今後南魚沼市は改正地域再生法における「生涯活躍のまち」づくりに向け、CCRCを中心とする地域再生計画を策定するそうです。以下のような主要項目が順次決定され、平成31年のCCRC実現に向けて一歩ずつ前進していく予定です。

  • 地域再生計画を推進する法人の設立
  • 民間に連携を求める事業の特定、ならびに連携事業者の選定
  • 移住者を継続して探し、募集する仕組み
  • 情報発信の仕組み
  • 大学、医療・介護、産業界それぞれとの連携

多くの市町村が人口減少とそれに伴う地域の経済力の低下に悩んでいるなか、CCRC構想によりこの課題に挑戦する南魚沼市の取り組みに注目したいです。

 

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『センター月報』2016年6月号の「潮流 県内最新トピックス 第3回」を加除修正いたしました。