南魚沼市のCCRC構想 首都圏などの元気なシニアを迎えて地域活性化を図る(その2)

新潟経済社会リサーチセンターの佐藤です。今回は、南魚沼市が進めるCCRCについて、セミナーによるPRや移住者の受入体制作りなど、ソフト面の取り組みをご紹介します。

 

ccrc

 

当市と民間事業者が、協議を重ねながら施設の整備・運営計画作りを慎重に進める一方、首都圏のシニアなどへの移住PR、移住者の生活を支援する仕組み作り、大学や医療機関が市民や移住者へ提供するプログラムの打ち合わせなど、幅広いソフト事業は、一般社団法人南魚沼市まちづくり推進機構(以下「MMDO」(注))が担当しています。MMDOは地域再生法に定められた「地域再生推進法人」であり、当市ならびに当地域の企業7社が出資して17年4月に設立されました。スタッフ4名が常駐し、当市と協力して地域再生計画の事業推進に精力的に取り組んでいます。

(注)MMDO  Minamiuonuma-City Marketing & Development Organization

 

首都圏でのセミナーで南魚沼への移住をPR

移住についての首都圏シニアなどの関心度は気になるところです。当市はMMDOと連携して南魚沼を紹介するセミナー「田舎ライフ塾」を繰り返し開催しています。4回シリーズのセミナーで、首都圏の会場で南魚沼地域の自然、文化、食などを紹介した後、最終4回目は1泊2日で当市に滞在してもらい、お試し居住や各種施設などの見学を行なう企画です。

参加者は、ほとんどが東京、千葉、神奈川、埼玉の1都3県の在住者で、男女の割合は8:2、46~60歳が約7割となっています。首都圏会場のセミナーには大勢から参加いただき、最終回の当市での滞在・視察に参加する者も概ね10人前後だそうです。

 

田舎ライフ塾の様子(17年12月千代田区) MMDO提供

 

直近の田舎ライフ塾の当市での滞在・視察は、雪国の生活を実感してもらおうと18年2月に開催し、熱心な受講者9名が参加しました。数年前に首都圏から当市に移住した夫婦を訪ねて話を聞くなど、雪国の生活を体験する企画はたいへん評判が良く、移住後の生活、雪への対応、さらには空き家のリフォームにいくらかかったかなど、質問が尽きなかったとのことです。「毎年かなりの雪が降る。しかし街全体が十分なノウハウを持ち、備えもあるので生活が乱れることはない。数センチの積雪で大混乱となる首都圏のような心配はない。」との力強い説明に皆が頷いていたそうです。

MMDO担当者によると、田舎ライフ塾の最終回に当市に来てくれる参加者からは、移住への熱意が感じられるとのことです。ライフ塾終了後も継続して連絡を取っているので、新たな企画により当市を再訪してもらい、移住意欲を高めるような働きかけを続けていきたいとしています。

観光での数日間の滞在とは異なり、新しい街に馴染めるか、冬の暮らしは大丈夫か、さらには首都圏の自宅をどうするかなど、居を移す決断は簡単にはいきません。移住見込者を増やすには、ライフ塾修了者に移住への意欲を高めるように働きかけて行く工夫や、ライフ塾を継続して開催し、地方での生活に興味を持つ方を新たに開拓して行くなど、時間をかけた取り組みが必要だと思われます。

 

田舎ライフ塾見学会の様子  MMDO提供

 

田舎ライフ塾見学会の様子  MMDO提供

 

移住者の受入体制の検討も進む

当市とMMDOは移住見込者の開拓に努める傍ら、将来のCCRCの運営体制について、どのようにすれば移住者が快適な日常生活を送れるか、どのような組織がその役割を担うかなどについての検討も進めています。例えば、移住者からの相談受付などは市内の12地区に設けられている連絡協議会を活用してはどうか、また、移住者が地域内を移動する足については、JR浦佐駅と市内の大学を往復する学バスにCCRC施設にも寄ってもらえないかなど、様々なアイデアを練っています。関係者との協議も必要ですが、既存の組織などを活用してコストを抑えながら、しかし移住者のニーズにしっかりと応える仕組みを構築したいとしています。

個人の考え方や趣向が多様化していることもあり、移住希望者はゆっくりとしたペースで増加していくものと思われます。運営体制の構築などは、まず既存の組織や仕組みを活用し、必要に応じて徐々に拡充する方針は無理がないと感じます。

全国の自治体が人口増加に向けた取り組みを行なうなかにあっては、特徴ある取り組みが期待されるところです。この点において、美しい自然や豊かな食に加え、大学や病院などの充実した地域資産やアクセスの良さなど、様々な好条件を活かして首都圏などのシニアに移住をPRする当市の取り組みは、大いに独創性があります。地域の大学や医療機関、さらに市民団体も巻き込んだ活動により、移住者を増やし、地域活性化につなげようとする当市の取り組みが、大きな成果につながることを期待したいものです。

 

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センター月報2018年7月号に掲載した記事を加除修正いたしました。