地域の魅力度ランキングを上げるには?


新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

私どもの機関誌「センター月報」では、毎月、井門観光研究所の井門隆夫先生より、地域活性化や観光振興などに役立つヒントやアイデアをご紹介いただいております。

今月の「センター月報6月号」では、令和時代のプロモーション方法のヒントについてご紹介していただきました。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。

 

地域の魅力度ランキング

 

 

隣の不幸は蜜の味?

この春、人気コミックを実写化した『翔んで埼玉』という映画が巷の話題を集めていた。「埼玉県民は草でも食ってろ」が名セリフとなったように、埼玉をディスるストーリーなのだが、自虐的な笑いを誘う点が埼玉県でもウケていた。人生の半分を埼玉県で過ごす筆者も、かつて埼玉に住まいを移したのは、首都圏では珍しく広大な田んぼが残り、電線もないので凧揚げができるし、用水路脇や畦道にはヨモギやつくしをみつけることができる環境を求めてだったので、確かに「草でも食ってろ」は正解である。

2年前には、同じように『お前はまだグンマを知らない』がスクリーンを賑わしていたと記憶しているが、北関東はディスり合うのが好きな人種なのだ。

そういえば、毎年、ブランド総合研究所が実施する地域ブランド調査で「都道府県魅力度ランキング」が発表され、前年からのアップダウンに一喜一憂する人も少なくないが、例年最下位になるのが茨城県だ。茨城といえば、春のネモフィラ、夏のコキア、秋のコスモスが国営ひたち海浜公園の丘一面を埋め尽くす光景は世界的にも有名になったし、ROCK IN JAPANはフジロックと人気を二分する一大フェスとして全国から若者を集めている。さらに、偕楽園の見事な梅園や紅葉、笠間の栗をはじめとする農業王国の農産品、大洗の新鮮な地魚を知れば、ブランド最下位というのが信じられないくらいの観光資源に満ちている。おそらく県民や県庁の方々も同意見だろう。

しかし、埼玉、茨城、栃木、群馬と北関東4県はだいたい魅力度ワースト5の常連だ。北関東出身の学生の多くが、その理由を探ろうと卒論で調べたりしているが、なぜだろうか。筆者にはひとつ仮説がある。それは「商圏が狭い都道府県ほど、魅力度が低い」というものだ。

(中略)

さて、問題は、いかに地域の魅力度を上げるかだが、仮説にのっとれば「商圏を広げて、日本各地から集客できるようにすれば魅力度は上がる」ということになる。

域外からの集客に関しては、観光資源そのものの魅力もさることながら、宿泊とアクセスが重要なキーポイントになってくる。下位の茨城や徳島は宿泊施設数が少ない。そのため遠方客は少なくなる。また、アクセスに関してであるが、赤字で記した府県は「空港を持たない県」であり、自ずと遠方からの観光客が直接自県に到着するという機会が相対的に少なくなる府県である。そうした府県の域内需要が高く、ひいては魅力度ランキング下位になりがちなのは致し方ない。群馬県庁に空港設置の意思をヒアリングしても「採算が合わない」との回答だ。しかし、それは他の多くの地方自治体にもあてはまることではないだろうか。

特殊な事情としては、群馬、山梨、神奈川、長野東部の空の低空域は、米軍・横田基地の管制下にあり、訓練空域でもあるので民間航空機の離発着に許可が必要で、空港を設置しても民間航空機は便数が制限されることも想定でき、確かに採算が合わなくなるおそれが高い。そのため、そうした県にあっては、他の公共交通(鉄道・バス)や道路ネットワークの充実をもっと主張してもよいと思うのだが、北関東はおとなしい人が多い。特に関越自動車道の練馬インターの寸止まりは解消されるのだろうか。迂回する外環道の渋滞も年々悪化している。

また、新潟県に関しては、域外からの集客はできているので、いかに写真映えさせたり、ストーリーとして魅力を伝えていったりするかが重要になってくるが、この点はどの都道府県も同じ努力が必要なので、マーケティングの知恵比べといったところになろう。

しかし、なぜ商圏が狭いと魅力度が下がるのか。おそらくそれは「隣の不幸は蜜の味」と昔からいわれるように、あまりに近く、お互いがよく知る距離感にある同士は対抗意識が高まるため、ディスりたくなる心理が働くからだろう。

(中略)

日本だけではなく世界中でそういわれる例がある。

その他にも、温泉地内の旅館同士の仲が悪く、まとまらずにPRができず、総倒れになるような話もたまに耳にする。

もうそういう時代ではないはずなのだが、人間なので仕方ないのだろう。あとは、隣県ではなくもっと広い商圏からお客様にきていただくことにしよう。そうしたお客様は意外に自県ではそれほどPRしていない資源に注目してくれたりする。新潟県の皆様が、埼玉県にお越しの際は、埼玉のソウルフードのひとつ「塩あんびん」をぜひ召し上がってみて欲しい。砂糖の代わりに塩であんこを味付けた大福で、味噌汁やラーメンに入れたり、酒のアテにしたりと万能のおやつである…。ああ、きっとまた埼玉がディスられるネタを提供してしまったかもしれない。

 井門隆夫(2019)「観光イノベーションで地域を元気に 第26回」『センター月報』2019年6月号

感想

人口減少時代を迎えているため、近隣の商圏だけでなく、広域から集客していくことの大切さが以前よりも増していると思われます。井門先生がご指摘されたとおり、交通アクセスの問題もありますが、今やインターネットやSNSなど、様々な情報媒体を活用して、自分たちの地域や会社をアピールできるようになっています。積極的に情報を発信して、商圏を広げていくことがより一層、求められていくと思われます。