機能性食品で子育て世代の支援


新潟経済社会リサーチセンターの尾島です。今回は機能性食品の製造を通じて、子育て世代を支援している県内企業をご紹介したいと思います。

 

地方叢生の視点

県内における機能性食品の取り組み

機能性食品の認証基準が緩和されたことから、 全国的にも新製品の開発が進んでいます。本県では、一般的な健康補助食品よりも腎臓機能低下の方向けの低タンパク米飯、嚥下が難しい方への介護用食品、乳酸菌など健康管理食や整腸作用に効果がある製品が多くなっています。また、大災害時に火や水が不要な緊急食品の開発など、食品製造業のウエイトの高い本県の特徴が活かされています。

全国的には、アレルギー疾患のある子どもが増加しています。食物アレルギーは、乳幼児の発症率が高く、成長とともに改善するのが一般的ですが、文部科学省が2013年に実施した「学校生活における健康管理に関する調査」によると、全国の小・中・高等学校等における食物アレルギー有症者の割合は4.5%で、6年前に実施した調査時(2.6%)より1.9ポイント上昇しています。

原因食物によるアレルギー反応は、じんましんなどの皮膚症状が多いのですが、アナフィラキシーのように、腹痛や嘔吐などの消化器症状、呼吸困難などを引き起こし、重篤な場合には命に関わることから学校給食の現場では大きな問題となっていました。

食物アレルギーの原因食物は、2016年の消費者庁「食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書」によれば、鶏卵(35.0%)、牛乳(22.3%)、小麦(12.5%)が上位を占めており、症状があるお子さんの家庭では、深刻な問題となっています。

食物アレルキーの原因物質

食物アレルギー対応製品の取り組み

続いて、食物アレルギー対応製品を製造している県内企業に対して、インタビューした結果をご紹介したいと思います。

山崎醸造株式会社【業務内容:食料品製造業、主な製品:味噌・醬油、同調味料(小千谷市)】

〜食物アレルギー対応製品の開発〜

山崎醸造(株)は、1940年に設立した味噌・醬油等の製造業者であり、隣接する高の井酒造(株)は関係会社です。

同社が食物アレルギー対応の製品開発に着目したのは2007年でした。当時、生活環境の変化やストレスが原因とされる子どもの食物アレルギーが増加し、特に小・中学校では学校給食の現場で大きな問題となっていました。しかし、同社の製品は大豆と小麦が主原料なので、対応は難しいと考えていました。

こうしたなか、名古屋大学を中心としたアレルギー研究の先進地である名古屋の展示会で、食物アレルギーに対する認識を大きく変えることになりました。アレルギーがある子どもを持つ親御さんたちから、症状によっては子どもの命に関わること、さらに、当時は学校給食で対応できないため、有症者が別メニューになることで、いじめにつながることが懸念されていました。

さらに2012年に東京の調布市で小学5年生の女児が給食に出されたチヂミの小麦が引き起こしたアナフィラキシーショックで亡くなる痛ましい事故が発生しました。同社は、自社でできることはないかという意を強くした結果、食物アレルギー対応への本格的な取り組みを開始しました。

〜「大豆を使わないおみそ調味料」の開発〜

醬油は小麦と大豆を炒ったり蒸したりして、それに麹菌を植えて麹をつくり、塩水を入れて仕込んだものを搾って製品にします。一方味噌はまず米麹を作り、それに大豆と塩を加えて仕込みます。原材料としては、味噌は米麹と大豆、醬油は小麦と大豆が主原料です。食物アレルギーの原因食物の上位である小麦を使うのは醬油なので本来は醬油の代替製品の開発を優先していましたが、同社では味噌を製造していたため、米麹を使った醬油の開発に取り組みました。

スタートの段階ではなかなか思った通りの結果は得られませんでしたが、仕込んだ原料を搾った後のものが味噌に近い食感となったことから、味噌の開発に切り替えました。米麹を使って試行錯誤を繰り返した結果、2011年に新製品「味噌風味調味料」が完成しました。数百kgの試作品で試験販売を実施した後、初めて製造ラインに乗せ2011年の暮れには約2トンの製品を生産しました。

〜「大豆・小麦を使わないしょうゆ」の開発〜

一方、当初の開発目的としていた大豆・小麦を使用しない「醬油風味調味料」では、使用した原料に色の成分となるタンパク質が少ないため、醬油らしい色をつけることができませんでした。醬油には醬油らしい色のイメージがあるため、食材の熟成発酵による着色は重要です。米だけでは、醬油独特の色が出せず開発は進みませんでした。しかし、2014年にたまたま酒かすを使うことで色を濃くする製造方法を突き止め、開発を進めることができました。

2016年からは内閣府の地方創生推進交付金の支援を受け、新潟県食品研究センターと新潟薬科大学との共同研究により、急速に開発を進めることができました。

民間では実施が限られた実験や分析データによって製品成分の客観的な検証を行なえたほか、専門家の指導を受けながら製品は完成しました。また、共同研究の成果として製法の特許を現在出願中です。販売は、味噌・醬油風味調味料ともに、既存の販売ルートとは異なるネット通販や自社サイトでの販売がメインですが、新潟・長岡のぽんしゅ館で販売しているほか、首都圏の大手スーパーからも発注があるなど常設店舗での販売に期待が持てるようになりました。

こうした同社の取り組みは、既存製品の開発にも好影響を与えており、昨年の全国醬油品評会では、同社の醬油2製品が2年連続でW受賞しました。

大豆を使わない商品等

〜今後の取り組み〜

同社は、常に新しいものに挑戦する社風があり、機能性食品のほかにも、新潟の甘エビやのどぐろなど新潟県を代表する食材を利用したみそ汁の素を2015年に発売し、累計10万本を出荷しています。

今回の食物アレルギー対応の製品では、市場も狭いことから商売になるというよりも、食物アレルギーで困っている人達に喜ばれる製品を届けることで社会に役立ちたいという思いから着手しました。そうした開発を許容できる同社の先進的な社風から生まれた製品といえます。

今後は、必要とする家庭に安定的に価格を抑えた製品を届けるためにも量産が求められます。そのためには、現在の生産能力と同時にさらなる生産効率の向上を進めることでお客様からさらに喜んでいただくための努力を続けたいとしています。

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『センター月報』2019年9月号の「地方叢生に向けた、地域の取り組み」を加除修正いたしました。