農業を活用した地域活性化その2~県内企業の事例紹介~

 

新潟経済社会リサーチセンターの尾島です。

本日は「農業を活用した地域活性化」の連載の第2回です。今回は企業による新たな農業の取り組み事例をご紹介したいと思います。具体的には、エンカレッジファーミング株式会社様と株式会社JR新潟ファーム様の取組内容と今後の展望をお伝えいたします。なお、前回の投稿は「農業を活用した地域活性化その1」をご覧下さい。

 

農業 ICT

 

新たな農業の取組事例その1

エンカレッジファーミング

~オランダ式植物工場を始めた経緯~

同社は、元々は野菜苗、花苗を生産するために設立されました。しかし、同市場の縮小が懸念されたことから、小粒でも栄養価の高いミニトマトの通年栽培が可能な植物工場を検討し、2017年12月より工場を稼動させました。

設備の面積は2ヘクタールで奥行き100m天井まで7mあります。全面硝子張りなので工場内に太陽光利用時の影ができにくく、構造材が少ないためコストを抑えた完全閉鎖型のオランダ式植物工場を採用しました。また、養液栽培による最適な水分量、窒素管理をはじめ、温度・湿度・日射など栽培に必要な全てのデータがコンピュータ管理されており、植物の持つ本来の力を120%以上引き出すことで品質と味の向上につなげています。

 

~ミニトマトに託す~

2ヘクタールの施設内で栽培する作目は全てミニトマトです。収穫の5割以上は全農や契約先の大手企業向けに関東に出荷しているほか、自社ブランドとして県内大手スーパーで販売しています。ミニトマトの苗は毎年植え替えが必要ですが、同社は、元々苗の販売を手掛けていたことから、種苗メーカーからの新品種情報をいち早く入手できる優位性を活かして常に優れた新しい苗を取り入れています。

 

~工場稼働1年目の現状と今後の課題~

年明け1月には想像以上の積雪に見舞われて苗の生育が遅れボイラー燃料費用が増えたとのことです。現在は順調ですが、今後は新潟の気象条件に合わせた苗の植え付けにより対応予定とのことです。また、夏の暑さ対策として地下水を利用してミスト装置による温度管理が行われています。

これまでの農業は勘と経験が大事だとされてきました。しかし、同社の施設では全てのデータがグラフ作成されて、過去との比較管理も容易にできます。データに基づいた管理を行なうことで、常に変化する外部環境の変化に対応し、農作物に最も良い環境で栽培されています。

 

箱詰めする作業場

▲箱詰めする作業場

 

~今後のH&B Gardenの展望~

1年目のためまだ手探りの部分もあるようですが、今後は無駄な作業工程をなくし、オランダ式植物工場設備の能力をフル活用することにより生産性を向上し、収穫量の倍増を目指しています。

同社は2018年1月に農業の生産規格認証であるJギャップを取得しています。申請時には、「健康(health)と美(beauty)を生み出す庭園」という意味を込めて『H&B Garden』という名称でこの施設名を登録しました。2020年のオリンピック開催時にはH&B Gardenのミニトマトを選手村に提供するという夢も実現したいとの意向をもたれています。

現在、同社のミニトマトは自社ブランド「H&Bプレミアム」の名称で県内大手スーパーでも販売されています。今後は、自社ブランド製品を県外に販売拡大したいとしています。

 

新たな農業の取組事例その2

JR新潟ファーム

~設立のきっかけ~

東日本旅客鉄道株式会社(以下 JR東日本)では、2009年に「地域再発見プロジェクト」をスタートし、地域と連携し、地元とともに知恵を絞る「共創」戦略に取り組むこととしました。同社の鉄道ネットワークの特性と首都圏での販路を持つメリットを活かして、地産商品を掘り起こすとともに、伝統文化など観光資源の紹介を通じて地域活性化を進め、交流人口の増加により本業の旅客輸送の増加も期待できます。2010年には青森でりんごを原料にした加工商品の製造・販売を行ない、2014年には十日町すこやかファクトリーで新潟産米粉を使用したアレルギー対応のケーキ製造を行なうなど実績を積んできました。

 

~地域再生に向けた活動の取り組み~

農業への参入については2015年に福島県いわき市でトマト栽培と加工品の製造を開始しています。

2016年1月には新潟市の農業特区において地元農家と共同で株式会社JR新潟ファームを設立し、同年春から酒米「五百万石」の生産を開始しました。またJR関連販売事業者、消費者と連携して地域連携プロジェクトを立ち上げ、「新潟の日本酒」を核に新潟県内の魅力ある観光資源を県内外へ発信する連携事業に取り組んでいます。

さらに、地元の生産者2社と日本酒のブランド「新潟しゅぽっぽ」を企画・販売しました。

 

~農業への参入効果について~

プロジェクト趣旨に賛同する事業者は徐々に増えており、翌年の2017年には同プロジェクトに参加する酒蔵は新潟市内から県内上中越エリアにまで拡大しています。

田植えや稲刈りイベントを実施し、レストランバスとの連携により地域周遊ツアーに参画し、日本酒仕込み体験と日本酒発表イベントを開催しました。プロジェクト参加メンバーとの連携により酒米生産から日本酒製造と完成までをひとつの観光交流事業にすることができました。

その結果、地域連携による交流人口の増加が図れたほか、新潟ブランドの首都圏での情報発信に効果がありました。

 

~プロジェクトの今後の展望~

日本酒「新潟しゅぽっぽ」は、JR新潟ファームの酒米を100%使い、精米歩合を58%に統一することにより県内4つの蔵元それぞれの味わいを飲み比べられるようになっています。地域連携プロジェクトのプロデュースする新潟ブランド製品は、新潟県内の主な駅内等で販売されるほか、首都圏における情報発信の役割も担っています。

日本酒をきっかけに地域を知り、駅からのまち歩きにつなげることを目指しています。体もこころもぽっぽと温まり、SLや酒蔵からたちのぼる蒸気をイメージする「新潟しゅぽっぽ」のプロジェクトを進めることで、今後も地域の魅力を発信する予定とのことです。

地元と知恵を絞った共創に取り組むことにより、さらに新潟の地域ブランド力を高め、交流人口の拡大を目指したいとしています。

 

蔵元と共同開発した清酒ブランド「新潟しゅっぽっぽ」の原料となる酒米の稲刈り前の記念撮影

▲蔵元と共同開発した清酒ブランド「新潟しゅっぽっぽ」の原料となる酒米の稲刈り前の記念撮影

 

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『センター月報』2018年8月号の「地方創生に向けた、地域の取り組み」を加除修正いたしました。