農業を活用した地域活性化その1~田園型政令市新潟の地域活性化~

 

新潟経済社会リサーチセンターの尾島です。

本日から2回に分けて農業を活用した新潟県内での地域活性化事例などをご紹介したいと思います。

 

農業 ICT

 

農業を活用した地方創生

新潟県の農業は、農家数、農業所得が減少基調で推移しています。本県の自営の専業農家の平均年齢は66歳を超えており、農業後継者の確保が課題となっています。このため、担い手農家による規模拡大により効率的な営農を推進し、企業の農業参入への環境を整備することにより、農地所有適格化法人の設立も増加しています。

こうしたなか、各地域では地域活性化に向けて農業と地域ブランド化により地域の特産品を開発し、販売を手掛ける6次産業化や農家が商業、工業と連携することで農産品の付加価値を高めて販売する農商工連携の取り組みが各地でみられるようになっています。

 

新潟 農業 統計

 

また就農条件の改善により、若者の就農が推進され、今春には農業経営を専門に学ぶための新潟食料農業大学も開設されました。さらには、ICTを活用して営農する仕組みも実用化に向けた導入が進んでおり、農業分野は食の先端産業になりうる可能性があります。

アメリカは離脱しましたが、TPP11協定の批准国による同協定の発効後はよりいっそう攻めの農業が求められると思われます。米の生産額では全国トップの新潟県において、農業を活用した地域活性化の取り組みが期待されます。

 

田園型政令市新潟の地域活性化

次に、政令指定都市移行後11年目を迎え田園型政令市を目指す新潟市の取り組み事例をご紹介します。

 

いくとぴあ食花

 

~日本で初の田園型政令指定都市にいがた~

新潟市は郊外に田園地帯が広がり、食料自給率は6割を超えて政令市中トップです。こうした田園型の特徴に着目し、食と花に象徴される農業を活かした都市づくりを掲げています。また、産業面ではニューフードバレー構想の下、農業と食品産業の振興、食育教育などを積極的に推進しています。2014年に国家戦略特別区域の指定を受けてからは、農業関連では、企業の農業参入や農家レストラン開業など2018年度までに11事項の分野で22の事業がスタートし、農地所有適格化法人の役員要件の緩和を利用した企業による9つの農業法人が設立されました。

なお2016年4月には農地法が改正され、農地所有適格化法人(今回のシリーズでは、以下農業法人)の役員要件等が見直されたことにより、全国で企業による農業法人への参入が容易に取り組めることとなりました

 

~いくとぴあ食花で市民と食・花~

新潟市は田園型政令市を実現し、同市が誇る食と花をメインテーマとして子どもから大人まで、体験と交流ができる拠点のひとつとして鳥屋野潟のほとりに「いくとぴあ食花」(「食育・花育センター」「動物ふれあいセンター」「こども創造センター」「食と花の交流センター」)を開設しました。市民が食と花と触れ合い、子どもの創作活動や体験活動の機会を提供しています。運営は、いくとぴあ食花運営グループへ委託することにより民間の創意工夫が活かされています。2017年には4施設で約145万人の来場者数があり、市内外からの来訪が続いています。

 

~農業体験と農業支援の拠点アグリパーク~

また、2014年に農業の体験と子ども達の農業に関する学習の場としてアグリパークが開園しました。こちらは、市民が農業に触れ、学ぶ場を提供する日本初の公立教育ファームです。

体験ほ場、石窯を使ったピザ作りやアイス作りなどができる体験ハウス、直売所のほか、農家の加工技術の向上や農産物の商品化を支援する食品加工支援センターがあります。さらには、隣接した農業活性化研究センターにおいて、農作物の栽培実験による研究が進められています。

新潟市では、学習指導要領にアグリパークの利用が位置づけられています。2017年には日帰りでの市内小学校の利用は86校で118回に及び、うち、17校が宿泊施設を利用しています。農業の体験と実際の子ども達の学習を結びつける農業体験学習により、子ども達の農業や食に対する理解を深めています。

 

アグリパークでの、農業体験学習

▲アグリパークでの、農業体験学習

 

~農業に触れ愛郷心を育成~

新潟市は、広い耕作地帯が広がっていて農業が盛んだといいながら、実際には土に触ったことがない子ども達が多いのが実情でした。そこで体験ほ場で土や農作物に触りながら理科の学習をするなど、アグリパークには座学だけでは得られない生きた形での学力習得を可能にしています。

また、特に小学校での利用が多いことから、子どものころから新潟のことを知るという意味で深い体験ができることにより愛郷心が育まれることに対する期待も高くなっています。

 

~新潟から世界に向けて情報発信~

現在、新潟市では交流面において「食文化創造都市」を目指しており、ガストロノミーツーリズムの取り組みに代表される食文化と観光を結び付けること、新潟独自に育まれてきた芸妓文化や、みなとまちとしての食文化などをしっかり見直すことにより、交流人口の拡大につなげるための取り組みを実施しています。

さらに、2019年には開港150周年を迎えることから、かつて北前船で大阪や松前藩(北海道)と海路を通じて交流した歴史、あるいは舟運を利用して長岡や会津(福島県)との交流拠点であった歴史や文化を市民に対して普及・啓発を図っています。

新潟市では来年、第5回目となるG20農業大臣会合の開催を予定しています。新潟から世界に向けて農業や食文化を情報発信できる機会とし、今後も農業を活用した産業の活性化に向けた取り組みを実施する予定です。

 

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『センター月報』2018年8月号の「地方創生に向けた、地域の取り組み」を加除修正いたしました。