ICT技術を農業分野に活用して新たな価値を創出!

 

新潟経済社会リサーチセンターの佐藤です。今回はNTT東日本ならびにNTTグループによる、ICT技術を活用したスマート農業の取り組みをご紹介します。

 

農業 ICT

 

農業分野におけるICT技術の活用方法

2016年5 月、政府はGDP600兆円を目指す成長戦略として「日本再興戦略2016」をまとめ、IoT、ビッグデータ、人工知能、ロボットなどの新しい技術を活用して、労働力不足を克服するための生産性向上や新たな有望市場の創出などを目指すとしました。農業分野においても、生産性向上のためにICT技術を活用し、収量拡大やコスト削減を図ることやトラクターの自動走行システムを実用化することなどが目標に掲げられました。

農業分野におけるICT技術の具体的な活用方法や期待される効果などについて、東日本電信電話株式会社(以下「NTT東日本」)のビジネス&オフィス営業推進本部にお話をうかがいました。NTT東日本を含むNTTグループは、国内外16の研究所において2,500人の研究者を擁し、通信に関する基礎・先端技術や情報ネットワークの研究・開発を行っています。近年は農業、医療、交通、教育、観光などを戦略分野と捉え、これらの分野において通信技術を活用したイノベーションにより新しい価値を創出することに挑戦しています。

農業分野におけるICT技術の活用方法でまず挙げられるのは、畑作地や水田における気温、湿度、日照、さらに水温、水位などの環境データの測定、送信、記録を自動的に行うことです。NTT東日本が開発した「eセンシング for アグリ」システムでは、センサーと通信機能を備えた計測器を畑や施設園芸のビニールハウス内に設置して、環境データを定期的に測定し、農家の事務所などに置いたサーバーに送信します。データは光回線によりサーバーからインターネット上のクラウドに送られ、蓄積される仕組みです。

 

水田に設置した環境データ測定器

▲水田に設置した環境データ測定器 NTT東日本提供

 

クラウドに蓄積されたデータは、関係者の誰もが、タブレット端末やスマートフォンなどで時間や場所にかかわらず確認できます。ビニールハウスの温度が上昇しているので喚気が必要だ、気温が氷点下に下がりそうなので果樹園で火を焚こうなど、圃場を巡回していなくても状況を的確に把握し、必要な対応をタイムリーに行うことが可能となる点は大きな効果です。

現状、農家の耕作地が1 カ所にまとまっていることは稀であり、自己所有あるいは農作業を受託した農地が地域のあちこちに点在しているケースが一般的です。点在する農地を巡回して環境データを都度測定、記録するため、移動と測定で膨大な手間と時間がかかり、農家の大きな負担となっています。計測器を設置してデータを自動測定、自動発信することで、この負担を大幅に軽減することができるわけです。これにより生じた余力を農作業計画の策定や農作物の生育状況の点検に振り向けることができるのも大きなポイントです。

 

農家は自宅にいても圃場の環境を把握できる

▲農家は自宅にいても圃場の環境を把握できる

 

今後の期待されること

ICT技術の活用でさらに期待できるのは、蓄積したデータを分析して、データに基づいた農作業の実施が可能となることです。これまでは、様々な農作業を実施するタイミングですとか、肥料や農薬の散布量などはベテラン農家の経験と勘に頼るところが多かったのです。天候、気温、水温などの環境データ、農作物の生育状況、作業内容と実施日などを継続的に記録・点検することで、最適な作業時期や肥料や農薬の適切な散布量などを把握しようとするものです。気温の積算データなども自動的に作成されるため、農作物の生育状況の予測もたてやすくなります。作業スケジュールの作成、作業担当者の配置、肥料や農薬の手配など、無理、無駄がない計画を作成するのに役立ち、ひいては農作物の品質向上や収穫量アップにつながることが期待できます。

畑やビニールハウス内に設置する環境データの測定器には、小型のソーラーパネルが組み込まれており、電池が不要、メンテナンスも不要など、農家の負担とならないよう様々な工夫がされています。また、それぞれの測定器からサーバーへデータ送信するのでは通信費がかさむので、多くのデータを拠点に集め、そこから先は光回線で送信するなどの工夫も行われています。

さて、NTTグループでは、地図情報や気象データなどの農業分野以外のデータを農業に活用することにも積極的に取り組んでいます。グループでは、日本全国に広がる通信インフラ設備の維持・管理に必要な中山間地の地図データを保有しています。また、気象庁のビックデータを独自の手法で解析しており、これを地図情報と組み合わせることで、日本各地の農地の天気を、1 kmメッシュで30分毎、最大72時間、1 〜 3 カ月先まで予測することが可能となりました。

この気象予測システムは過去の気象データも取り込んでいますので、短期予測とともに中長期の予測や異常気象の早期把握・アラーム発信なども行うことができます。短期予測は日々の農作業の予定を立てる際に役立ち、異常気象を早期に把握することは気象災害や病害虫被害の予防・回避を的確に行うことを可能とします。また長期予測により、栽培品種の決定や作付時期、収穫時期の調整など年間の経営計画を策定することが容易になります。気象情報、市場価格などをふまえて栽培品種を決定することで、気象リスク低減、収益性向上など、非常に効率的な農業経営を行うことが可能となるわけです。

NTTグループがさらにその先に目指すことは、ICT利活用の効果を農業の生産現場に限ることなく、流通・販売まで含めたバリューチェーン全体に拡大することです。圃場における環境データや生育データの把握、気象データの活用などにより、高い精度で収穫予測を行うことが可能となりつつあります。農家が収穫予測を、流通・小売業者が需要予測をオープンにすることで生産量の調整、平準化が図られ、ひいては消費者も流通の安定、価格安定などの恩恵を受けることができます。業態を超えた連携、バリューチェーン全体への影響など、ICT利活用による様々な効果に大きな可能性を感じるところです。ICT技術を積極的に取り入れることで、生産現場から流通・小売分野に至るまで、日本の農業が大きく進化することを期待したいものです。

 

圃場

 

 

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『センター月報』2017年3月号の「潮流 県内最新トピック 第11回」を加除修正しました。