2017年 旅のトレンド予測

 

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

本日から仕事始めの方も多いと思われます。今年も幸多き年となりますよう心よりお祈り申し上げます。

さて、私どもの機関誌「センター月報」では、年初に「旅のトレンド予測」を毎年、お届けしておりますので、本日はその原稿の一部をご紹介します。なお、執筆は毎月、連載をお願いしている井門観光研究所の井門隆夫先生です。

 

2017年旅行のトレンド予測

 

2017年 旅トレンド予測

井門先生が予測する旅のトレンドは、次のとおりです。

 

2017年・旅のヒット予測をしてみたい。そのラインナップは、これまでの「どこへ行く?」という地域ありきの旅から、「そこへ行く。それはどこ?」といった目的ありきの旅への変化を予期するものであり、これまでの地域プロモーションのあり方を大きく覆すものばかりだ。

(中略)

第3位 旅館のチェーン化

これまでの10年間で2万軒が廃業した旅館業。残る4万軒もこのままのペースだと20年で消滅することになる。消滅といわずとも、何もしなければ、20年後には2千軒くらいになっていると筆者はみる。旅館はレッドリストに載った「絶滅危惧種」といっても過言ではない。

唯一残るのは、「馴染み客」を持った旅館だ。旅行会社が連れてくる(そこへ行く、ではなく、どこへ行く?と地域を探してたまたま泊まった)客の多くは二度と来ない。「その地域には行ったから、次は別の地域へ」と考える客は、なかなか戻ってこない。人口が増えているときはそれでもよかった。

(中略)

これまでの半世紀、旅館を支えてきた団塊の世代が縮小し、旅館はこれまで経験のない、新たな若い世代を相手にしていくことに少々戸惑うことになる。

ただ、心配はいらない。一見客で生きてきた旅館でも、大手商社あたりが運営を受託し、チェーン化していくからだ。大手商社はマーケティングや若い世代の顧客管理を一手に引き受け、営業責任も負う。旅館オーナーも徐々に不動産所有者兼運営委託者としての位置づけとなり、賃料等を安定収入として受けて生きていくことができる。そして、うまくインバウンドとはまれば、旅館も復活する可能性も生まれていく。今年はその胎動を感じる年になるかもしれない。

 

第2位 民宿承継ゲストハウス

昨年、第1位とした「ゲストハウス」。今年は都市だけではなく、地方での開業が加速しそうだ。そのなかには、民宿を承継して開業する宿も増えてくる。

鳥取県岩美温泉で2年前に開業した「旅人の宿NOTE」は、海水浴客を相手にした季節営業の民宿だった空き家を、町の地域おこし協力隊員だった小林晶さんが借り受け、開業した宿。近隣に住む民宿の所有者に賃料を支払い、スペイン料理を出す宿として元気に営業している。客の多くは人気深夜アニメ「Free !」のファンだ。岩美町を舞台にしたアニメファンが何度も足を運ぶ宿になった。

後継者のいない民宿はこのようにリース物件として生き残る道があり、そうした宿が今後増えるのではないかと予想している。

(中略)

第1位 瑞みず風かぜ・四季島

これまで述べてきた多くは「それは空想だろう」とか「今年ではなく何年も後の話だ」と思う方々が多いのでは、と推察するからというわけではないが、第1位は極めて現実的かつ確実な予想だ。

JR九州の豪華列車「ななつ星」が一世を風靡したが、今年はJR西日本の「トワイライトエクスプレス瑞風」(6月運行開始)と、JR東日本の「トレインスイート四季島」(5月運行開始)が登場する。

(中略)

新潟県でも様々な観光列車が走っている。個人的には、景色を観ながら日本酒やジャズを楽しめる「越乃Shu*Kura」は特に好きだ。いよいよ、鉄道も「手段」としてではなく、「それに乗る」ための「目的」になってきた。

旅は「どこへ行く?」から「そこに行く」に変わろうとしている。もう「当地に来てもらうためのプロモーション」は要らなくなってきた。それよりも「そこに行くためのコンテンツ開発」で差がつく時代になる。2017年、あなたの地域は「そこに行きたい」と思ってもらうために、どんな「あったらいいな」を開発できるだろうか。その地域にある観光資源の押し売りをしてはいけない。その資源には現地で気づいてもらえればいい。それよりも、生活者の願いや悩みを解決してあげるための、「全く新しい仕組みや施設」を作ることが地域に求められている。

 

井門隆夫(2016)「地域観光事業のススメ方第82回」『センター月報』2017年1月号

 

感想

私なりの解釈としては、「当地にはこんな素晴らしい景観や施設がある」といったアプローチではなく、「一人旅でお悩みならば、当地ではこんな工夫をしています」「赤ちゃん連れの旅行でお困りならば、当地ではこうした提案を揃えています」といったアプローチに軸足を移そうという井門先生の助言ととらえました。

前者のアプローチに慣れていると後者のアプローチに取り組むことは難しいかもしれませんが、「生活者の願いや悩みを解決してあげる」ような情報発信に今年は私自身も努めていきたいと思っています。

なお、井門先生が示された第4~5位につきましては、当センターの「センター月報」をお手にとっていただければ幸いです。