【初心者向け】地域経済分析システム(RESAS)を使ったインバウンドデータの分析手法

 

こんにちは。新潟経済社会リサーチセンターの江口です。

さて、「RESAS:リーサス」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。地域経済を分析するために、産業構造や人口動態、人の流れなどに関する官民のビッグデータを集約し、可視化するシステムのことです。内閣官房(まち・ひと・しごと創生本部事務局)が2015年4月から提供を開始しています。

その後、2015年9月と12月に機能が拡充され、より使いやすくなったようです。機能拡充については、恥ずかしながら私も知りませんでした。

そこで、今回は追加された統計データを使って、新潟県のインバウンド(訪日外国人旅行)の現状について分析を試みてみました。具体的には「外国人滞在分析」を試験的に活用してみましたので、その結果をご紹介したいと思います。

 

RESAS・トップページ

▲内閣府『RESAS』のトップページ

 

外国人滞在分析

まずは「外国人滞在分析」を使って調べた結果を、順を追って説明していきます。

 

1.出典データについて

利用するデータは行政機関によるデータではなく、民間のデータを活用しています。見慣れないデータなので、どのように集められ、どういった特徴があるのかを確認したいと思います。

出典は、NTTドコモ・ドコモ・インサイトマーケティング「モバイル空間統計®」となっています。このデータを使うことで、指定した年・月・時間帯(昼間=14時台、夜間=14時台)における1時間あたりの外国人平均滞在者数を地域別に把握できるようになっています。

つまり、対象地域に1時間いた外国人訪問者を1人とカウントし、30分いた人を1/2人として推計しているようです。なお、データの収集については、携帯電話ネットワークの仕組みを利用しており、年間約250万人分のデー タと、実際の入国データ(法務省の「出入国管理統計年報」)を加味しながら地域ごとの人口を拡大推計しているようです。

特徴としては、細かな地域ごと、そして時間ごとのデータが把握できるため、従来の行政機関が収集したデータと組み合わせて使うことで、現状把握の精度がより高まると思われます。

ただし、①携帯電話の仕組みを活用した推計値であるため、数値そのものの意味よりも、他地域と比べた傾向や時系列でみた推移を知るために使った方が良さそうです。また、②少人数しか訪れない地域については、精度が低くなる可能性がやや懸念されます。さらに③「RESAS」で使用できるデータは2014年9月~2015年2月に限られている点にも注意が必要かもしれません。

 

2.平均滞在者数の推移

それでは、分析を進めていきましょう。

新潟県のほか、隣接する長野県、群馬県と比較しながら、平均滞在者数の推移を調べてみました。期間は2014年9月~2015年の2月までの昼間(14時台)のデータです。

つまり、月ごとの昼間(14時台)1時間あたりの外国人平均滞在者数を比べてみたのが、下の図です。言い換えれば、その月の昼間に、毎日、どのくらいの外国人訪問者が滞在しているのかを明らかにしたものです。

 

地域別平均滞在者数の推移

 

新潟県はピンク色となっており、群馬県と同じような推移をたどっています。2014年9月~12月の秋季については、毎日(14時台)の平均で500~700人台の滞在者数です。その後、2014年12月~2015年2月の冬季になると、1,100人~1,200人台に上昇しています。雪を見に来た外国人訪問者やスキーを楽しみに来た人が多かったのでしょう。

これに対して、長野県の滞在者数は新潟県や群馬県を大きく上回っています。秋季で1,300人~1,700人台、冬季では2,700人~4,000人台まで上昇しています。秋季で新潟県の約2倍、冬期で新潟県の約3倍の滞在人数となっています。

 

3.新潟県の国籍別平均滞在者数

続いて、新潟県の平均滞在者数を国籍別にみると、秋季では中国、台湾の訪問者が多くなっています。一方、冬季では特に台湾とオースラリアの滞在者が大幅に伸びています。このうち、最も滞在者数の多かった2月に限定すると、台湾の訪問者だけで281人となっています。

国籍別の外国人滞在者数については、都道府県別に月ごとで把握することができにくかったので、ひじょうに助かるデータとなっています。

 

国籍別平均滞在者数の推移(新潟)

 

同様に長野県をみると、秋季では中国の滞在者が最も多く、200人以上で推移しています。一方、冬季ではオースラリアの滞在者の増加が際立っており、1月には2,000人に達しています。妙高市を中心に新潟県内でもオーストラリアからのスキーヤーは増加していますが、白馬村をはじめとした長野県の滞在者数はひじょうに高い水準となっています(比較しやすいように新潟県と同じ国籍で分析しています)。

 

国籍別平均滞在者数の推移(長野)

 

4.市町村単位での平均滞在者数

最後に、市町村別の平均滞在者数を確認してみます。新潟県の平均滞在者数が最も多い2月のデータを使ってみます。

すると、新潟県では一番多い市区町村は湯沢町となっており、501人です。次いで妙高市の200人となっています。

これに対して長野県をみると、白馬村が1,253人と極めて多い人数となっています。その他にも、軽井沢町が578人、野沢温泉村が376人、山ノ内町が319人、長野市が252人、松本市が188人と広範囲に滞在していることが確認できます。

さらに、より広域でみると、金沢市が401人、高山市が426人、宇都宮市が357人、日光市が184人などとなっています。

なお、下の図はマウスオーバーさせて湯沢町のデータのみ表示したものです。

 

外国人滞在・市区町村別・2015年2月

 

 まとめ

訪日外国人旅行者は新潟県内でも増加しているのですが、他県と比べると、まだまだ規模の小さいことが再確認できました。

追加された機能については、観光分野に限っても、今回ご紹介した「外国人滞在分析」のほかに「外国人メッシュ分析」「外国人消費分析」「外国人消費花火分析」などがあり、盛り沢山です。

「RESAS」については、実際に使ってみると、参考になる点や気を付けなければならない点なども理解できましたので、こうした点を含め、他の追加された機能の分析結果と一緒に、日を改めて何度かの連載を通じてご紹介していきたいと思っています。

 


 

資料:

内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局「地域経済分析システム(RESAS)について<ver.19>」(平成27年9月)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/
sousei/resas/pdf/h27-09-11-nousui.pdf

内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局「地域経済分析システム(RESAS) 第Ⅱ期2次リリースについて」(平成27年12月)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/
sousei/resas/pdf/verup2-setsumei.pdf

経済産業省「地域経済分析システム 基本操作マニュアル」(2015年12月18日第3版)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/
sousei/resas/pdf/manual.pdf