オーストラリアからの インバウンド誘致



新潟経済社会リサーチセンターの尾島です。本日は、オーストラリアのスキー客を誘致している妙高の取り組みをご紹介いたします。

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インバウンドと地方創生

観光庁「観光白書」によれば、近年の世界経済 の回復やアジア諸国の経済発展による所得の向上 により、特に台湾・中国などアジアを中心とした インバウンドが増加し、H29年には2,869万人 と5年間で訪日外国人旅行者数は3.4倍に増え、 H30年には3千万人を超えています。

またH29年の訪日外国人の旅行消費額は4兆 4,162億円とH24年比で4.1倍に増加しており、 観光を日本の成長戦略の柱、地方創生の切り札と 位置付ける政府によるビザの戦略的な緩和や免税 店の設置などもあって、経済的な効果への期待が高まっています。

新潟県においても民間団体や行政による様々な 誘客施策により外国からの観光客数が増加しています。県の調査では、H18年度の外国人宿泊数(約7万人)は、東日本大震災の影響でH23年度に減少しましたが、その後は持ち直し、H28年度には 19万3,000人とH18年度比で約2.8倍にまで増加しています。国籍別では、中国(香港含む)、台湾に次ぎオーストラリアからの宿泊数が多く、本県インバウンドの特徴となっています。

観光庁「宿泊旅行統計調査」のH29年に県内で観光を主な目的とした外国人の延べ宿泊者数は 21万6,000人で、前年比36.5%も増えており、インバウンドの経済効果が期待されています。今後は、地域資源や特産品はもちろん、景観や文化・
歴史など地域の特徴や強みを再確認し、ターゲットを明確にした観光誘致の戦略が求められています。

外国人宿泊者数の推移

 

  

オーストラリアからのスキー客誘致

次に、10年以上前からオーストラリアのスキー 客誘致を行ってきた妙高の取り組みを紹介いたします。

一般社団法人 妙高ツーリズムマネジメント
業務内容:DMO(観光地域づくり組織)(妙高市)

まずは、妙高市の取り組みを早津之彦氏にうかがいました。

~地域資源で妙高の観光地域づくり~

妙高市では国の地方創生政策に基づき、H28 年より2年間の検討を経て観光戦略プランが策定 されました。H30年4月には、観光による地域経営のかじ取り役を担うべく観光地域づくり組織 (DMO)を設立し、現在は食・温泉・山岳観光の 三つの部会により実施事業の検討を進めています。

妙高には7つの温泉があって、5つの泉質と、 温泉も3色あるなど、温泉自体が多彩で魅力に富んでいます。地元では温泉ソムリエによる正しい温泉の入り方を指南するなど、妙高地域の温泉を目玉にした観光誘致に積極的に取り組んでいます。

また、H27年には新潟県(糸魚川市・妙高市)と長野県側の計3市2町1村にまたがる妙高山麓が「妙高戸隠連山国立公園」の指定を受けたことから、山岳観光や、地元農産物を活用した食の提供などを観光施策の三本柱に位置づけています。

妙高市のインバウンド

~オーストラリアからのインバウンド誘致~

妙高地域は、長野県の白馬・志賀高原とともに雪質の良いパウダースノーに恵まれており、オーストラリアから夏休みを利用したスキー目的の冬 期宿泊数が増加しています。東京からのアクセスの良さと長野オリンピックの知名度から信州地域にまず外国人が増え、その後の地道な誘客活動を続けたことによって、妙高の知名度を高めることができました。

~インバウンド誘致の効果と地域の変化~

誘致活動を始めたH22年当初は50人程度の来日客しかありませんでした。現在はシーズン中のオーストラリア人で約4,000人、延べ宿泊数では約26,000泊に増加しており、外国人の来日客数では約6,100人、35,000泊まで増加しました。

オーストラリア人は、日本人やアジアの観光客と異なり、滞在期間は数週間から2カ月にも及びます。滞在中は朝食付での宿泊が多く、夕食は温泉街の飲食店を利用するのが一般的です。

雪が降るとスキー場でパウダースノーを楽しみ、晴れた日には高田雁木通りの街歩きや商業施設でのショッピング、善光寺巡りなど周辺観光を楽しむのが一般的なスタイルです。みつけた耳よりな情報や景観はブログやインスタグラムなどSNSにより口コミ情報として発信され、その情報を頼りにして、年々来日客数が増えています。

近年は、誘客を実施していない英国や北欧からの来日が増えており、宿泊施設経営者や、旅行代理店業を始める外国人も生まれています。

株式会社Japan Snow Access
代表取締役 清水史郎
業務内容:ランドオペレーター(妙高市)

オーストラリアからの誘客に直接携わった清水史郎氏に、インバウンド誘致の経緯をうかがいました。

~インバウンドにおけるSNSの威力~

元々はやはり雪質のよい北海道ニセコ町が、 オーストラリアからの冬期スキー客の誘客を進め当地に先行していました。妙高地域では、観光庁からの勧めもあって、長野と妙高で連合を作り国の支援も受けて誘致セールスを実施しました。H18年当初の来日客は少なかったですが、口コミにより徐々に浸透しました。主な来日客層は30代から50代の富裕層がターゲットです。当初はテレビ等のメディアプロモーションや雑誌媒体を情報発信手段としていましたが、スマートフォンが普及してSNSでの口コミ情報により海外からのスキー客が急増しました。

~妙高の魅力を満喫してもらう~

欧米・オーストラリア人はパウダースノーにこだわります。また、妙高山山麓のスキー場は斜面が同一方向に立地開発されているため、スキー場間の移動もスムーズにできるほか、羽田・成田空港を利用すれば北陸新幹線と在来線・タクシーを利用して妙高までのアクセスが容易です。現在、清水氏は外国人の予約を専門としたランドオペレーターとして活躍していますが、日本の宿泊施設は他の先進国に比べ、高品質だが低価格なので、日本ブームを引き起こす契機になっていると分析されています。

スキー選手としての海外経験

~観光振興で地域活性化~

各宿泊施設では、夕方には外食を楽しむ滞在客を互いに受け入れて得意料理を提供するサービスなどの工夫もあって、外国人宿泊客数の増加による経済効果もみられ、地域活性化にも寄与しています。一方で夏場には、他地域との差別化が難しく、通年観光が今後の課題です。また、外国人客や外国人事業者の増加に伴って、言葉の違いから様々な相談も増え、旅行代理店業務以外の調整にも一役買っています。現在は妙高市が外国人向けのエチケット冊子を発行するなど、地域資源を活用した観光振興による地域活性化への期待が高まっています。

赤倉温泉